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「それにしても、お前の戦い方は相変わらずなってないな!」
「そりゃ、生産職だからな。でもほら、投げるのは上手くなったぜ」
「……まだまだレベルが低いな。ゴブリン程度にゃ効くかもしれんが、もっと上げとかないとイザって時に困るぞ」
「イザって時ねぇ」
「最初の草原はチュートリアルに近いからほとんどないが、他の場所だと普通に戦闘中に違うモンスターが襲ってくるからさ。
とっさの一発が重要になるんだぜ」
「そういうもんかね」
「遊撃になる斥候職がパーティーに求められるのもそう言った理由よ。物陰に隠れて近寄ってくるモンスターだって見逃さないから」
「ミラは索敵範囲も広いし精度が高いので助かってるである。弓矢の腕前だけはあれであるが」
「クロが呪文唱えている間に倒してしまいますからね」
「最近、俺とリリーの出番が少なくてなぁ。今回のイベントはありがたいな。
よしっ。休憩するか」
そんな話をのんびりしているけれど、すでに彼らは一仕事してきた後だった。俺が持ち込んだ素材類を加工している間に、斧を振り回すジンは広場を二回りも広くしたし、ミラは隠れたりする系、ジーンが特殊攻撃系、シロはアンデッド、クロはゴブリン方面へと遠征していた。
山ほどのドロップアイテムを、ジンが伐った丸太で作った小屋――丸太で壁から屋根まで作ったまさに丸太小屋――の中に種類別に置いてもらっている。ほとんどの物が骨やら牙やら錆びた武具類やらで保存性もあるから、まじで適当に置いてあるだけだが。
ほかの、すぐに使うべき素材類は作業中の俺の周りに置いてくれた。ありがとう。
で、木材の加工をしていたジンがせっかくだからと、MP枯渇した俺を白兵戦で鍛えてくれることになった。その評価が、先ほどの「なってない」だ。
まあ、反論しようのない事実だし?でも、俺戦闘職じゃないし?そもそも街からでないし?投げるアイテム工夫すれば対処できるし?……うん。気にしてます。だから、MPが枯渇するたびに魔力回復薬を1本飲んで、回復効果が切れるまでの時間で稽古をつけてもらう流れになったんだし。
「ふぅ。ありがとうございましたっだ!くそぅ。一発くらい当たれよ」
「おいおい。低レベル後衛職の直接攻撃を食らうようだと、前衛なんてやってられんぞ。もう少し底を上げないと無理だな」
「広範囲攻撃ができると対処できるようになるのである」
「クロ。普通の人にそれを求めても難しいよ」
「ソロで楽しむなら、十分にレベルを上げて、自分のレベルやスキルに相応しい所で活躍することが一番ですよ。時々、野良パーティーを組んで新しい所へ行っても気分転換になりますね」
「生産職の戦闘ソロはきついよ。パーティー前提なら、今みたいにある程度戦えるようになってれば十分でしょ」
「……結構早くみんな戻ってきたけど」
自分の戦闘評価が低かったので、ちょっと話題を変えたかった。いや、わかってる。わかってるんだよ、生産メインだし、そもそもプレイヤースキルと言われるモノが低いのは『幻獣旅団』どころかミル・クレープ達を見ていてもわかる。まあ、頑張っていこうとは思うが……。
それにしても、本当にみんな帰ってくるのが早かった。夕方には帰ってきてテントとかの準備をみんなでするって決めてたから生産活動の準備しかしなかったのに、持ち込んだ素材の一割ほどを使ったくらいでぽつらぽつらと戻ってきたのだから。
皆が戻ってくるまでの短時間にジンは問答無用で伐っては積み上げ素材倉庫を作り、続いて素材倉庫の倍以上の範囲に壁らしきものを作り上げた。作られた素材倉庫には順次戻ってきたメンバーが素材を入れては出かけ、数回往復する。
……もしかしたら……。
「まあ、半分ほど浄化してきましたよ。荷物が一杯になったので何度か戻ってきましたが」
「我も同じだな。ゴブリンは数が多いから連射や広範囲の訓練に最適である」
「【索敵】と【弓】は相性が良くてね。素材もそれなりに採取すると結構インベントリ一杯になりやすいんだよね。攻略は三割?」
「……半分」
「ジーンはマジで平衡感覚つーか空間把握どうなってるんだ?木々の間を縦横無尽に跳び回るってのはまねできないな。あの速度じゃ、敵も反応できる奴はそうそういないだろ。
あ、広場はもう少し広くしようと思ってっから、後でみんな手伝ってくれ」
「……バケモンぞろいだな」
「ん?そうであるか?」
「私などは相性が良い方面ですから」
「わたしもー」
『名無し』の規格外さが良くわかる。一人で一方面を軽く半分クリアしてくるなんて。トップグループの『幻獣旅団』ですら、集団で一方面だった。いくら彼らが余裕を持って探索したとはいえ、それは『名無し』も同じ。まあ、同じことができる奴ってのがどれだけいるやら。
あ、少なくとも、現在のランキング上位には何人かいるんだよな。……人間の可能性に未来を感じてしまうな。
こいつらが今回のランキングに入ってないのは、ポイントを稼ぐために調整することが面倒だってだけ。襲撃が最初の晩ならって笑ってた。つーか、技術で取った【夜目】を鍛えるのに、迎撃戦じゃなくて夜間模擬戦にしてるのは君らだけだと思うよ。いくら敵が弱いからって、そんな無茶なことをしてるのは、ねぇ。
呼吸を整えている間に、ササっと飯の用意がされていた。竈はクロが魔術でちょちょいと作ったし、鍋釜用意している間に他の人が下ごしらえしてたし、まあなんていうか、アウトドア慣れしてるな。俺の出る幕なし。
【錬金】の経験値を積みたかったけど、まあ良いか。楽できたし。
夕食はBBQ。行儀が悪いけど、何か作ってMP消費してから食べましょ。自然回復がもったいない。