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日が昇ったら活動の時間。熾火を活用して簡単な朝食。スープを沸かしている間に、ちょっとしたサラダも提供できるようにする。え?料理名?新鮮野草の山盛りサラダ――自然の味を堪能しよう――です。ま、食べられる野草ってだけ。
コッコの肉と野草の炒め物に、葉物野草のサラダ、芋と肉のスープが今朝の食事。昨晩作った物の温めなおしだ。インベントリのおかげで虫に入られることもなく保存できたのは、純粋にうれしい。実際のキャンプだと外に出しておけないし。
昼は簡単に食べられるピタパン的なのをすでに作ってある。どのタイミングで食べられるかわからないし、それなりにカロリー消費するはずだから数は多め。……カロリーって言うか、体力消費か?戦闘を繰り返した時とボーっとしていた時だと食べられる量が違うってことだし。
「いやぁ本当に助かります。家で料理くらいはしますけど、ゲーム内でまでやりたくないですし」
「キャンプだとバーベキューくらいしかやったことないし」
「火を熾すのが大変ですよ。現実と違ってやりやすいとはいえ、一苦労です」
「付けるだけなら、俺ができるけど」
「余分なMPは消費しない方が良いからな」
「「「「ありがたくいただきます」」」」
「……どうぞ、どうぞ。俺は【料理】も持ってるけど、パパって作るときは【錬金】なんだよね。ちょっと質が落ちたり、生産量が減ったりするけど、レシピさえあれば大抵のものが作れるから便利だよ。お勧めスキルさ!」
そこまで感謝されることかな?あ、スキルでも技術でも【料理】を持ってないと補正がないから大変なんだな。
よし!ここが【錬金】の汎用性をアピールするチャンスとばかりに売り込むも、反応は鈍い。
まあ、元はクズスキル扱いだったし仕方ないか。それに、未だ自力習得の方法がわかってないから、スキル枠を必ず1つ占用しちゃうし。
「便利なんだけどなぁ……」
「まあ、これから始める人には良いんだろうけど、俺らは野営とか慣れてるからなぁ。確かに便利になるけど、そこまで必要かってのがある」
「色んなレシピを集めるのは楽しそうですけど、レベル上げにかかるコストがちょっと」
「手を広げすぎるとどれも中途半端になりそうで」
「ふひょ~」
「プレースタイルが決まる前なら良いんだけど、今更変えるのはって人が多いんじゃないか?スキルの入れ替えだって簡単じゃないからな」
「……ところで、チュパのプレースタイルって?グリフが斥候と剣士、ユニックが盾と回復、サラムが魔法と剣士ってのは知ってるけど」
「んぐっ。私ですか?サポート型ですよ?
【付与魔術】に【支援魔術】がメインです。自分にかければソロでも行けるかなって……持続時間が短すぎて最初はつらかったですけど」
「今じゃ、10細刻は持つから助かってるさ。MP管理が面倒だけど、戦闘がだいぶ楽になった」
支援系かぁ。たしかに効果は高いけど、やっぱり自分がメインになりたいって人が多いからあまり見かけないタイプのプレースタイルだな。【付与魔術】は進化すれば生産物に属性添付とかもできるかも。もしそうなら生産者と相性がいいスキルだな。今後の検討課題に入れておこう。
チュパは第三陣だっけ?それにしては成長が早いと思ったけど、ソロだろうとパーティーを組もうと、ただひたすらにバフをかけるプレーをしながら、立ち回りだとかMP管理だとかをひたすらに突き詰めていって、第一陣と遜色なく……とはいかないまでも、ある程度の強さを得られたんだな。苦労話を聞いていると、まあ、リアルでも気配り目配りができるタイプの人間だとわかった。会話も行動もフォローが上手いし、それぞれのバフの切れ目が生じないように、調整してリキャストしてる。これが、リアルチートか!!
索敵をしてるグリフには聴覚強化、装備が重いユニックには筋力強化、歩くのが遅いサラムには敏捷力強化をかけつつ、体力のない俺と自分自身に複数の強化をかけることで全体の速度を調整してくれている。襲い掛かってくるゴブリンの数が少ないのもあって、前回の半分ほどの時間であの広場に到着した。
「ギーストはここまで来たことあるか?」
「……そこで大きな音を出すと、四方八方からゴブリンが襲来するんだろ?経験済みだよ」
「かなり倒しましたから、今回はそんなに来ませんけどね」
「洞窟守ってっからな。ほとんどがあっちにいるさ。さっさと行こうぜ」
「うっぷ。
はーい。じゃあ、まとめてバフかけるよ。“ヘイスト”“ストレングス”“シールド”」
「サンキュ!
MPやばいだろ?ギースト守っててくれ。さ、行くぞ!」
「おう」「はい」
魔力回復薬を服用して、全員に基本的なバフの重ね掛けをしてくれたチュパ。通常よりもMPを使うことで同時に複数人に効果を及ぼすスキルアーツ“エンハンス”だ。使い方によっては、攻撃魔法の弾数を増やしたり、強化度を上げたりと大活躍するスキルアーツで、進化させないと習得できないと聞いたことがある。
使いまくってんだなぁ。しかも、単純に使うだけじゃなくて、色々な呪文を色んな場面で使ってきたからこその、そのレベルなんだろうし。このゲーム、同じことし続けても得られる経験値が少なくなる仕様だし。
戦闘中にのんきにしてるな?……したくもなるよね、これ見たら。