2-8 クエスト終了
ここのところ、昼休み中は須佐見との情報交換。
あいつのプレイスタイルは盾役の重戦士。
……を目指している。まだ金がないから大盾と長剣で戦っているようだ。1,000Gって、装備を調えるには足らないよな。
具体的な戦い方は、敵の攻撃を盾で受け、怯んだところを剣で切る。パーティーを組んでいるときは無理に攻撃をせず、仲間が攻撃できるように受け流したりする戦い方とのこと。
須佐見の配慮で会話に出てくるのは一般的な情報だけだけど、俺の知らなかったことが多い。戦いの動きだってターン制ゲームやってばかりじゃわからないだろ?
楽しみを失うほどの事前情報は嫌いだけど、最低限の情報収集くらいはした方が良いのかな。よく言われるからわかってはいるんだけど、やっぱめんどいなぁ。
それはそれとして、スキルは5の倍数になるときにSPが貰えることの裏付けができたし、レベルが上がるとボーナスポイントが貰えて、初期設定の時のようにステータスに割り振れることもわかった。
レベルが上がっていくと、色々な特化型が出てくるだろうな。楽しみだ。
でも、初心者回復薬や初心者魔力薬の効果が、レベル5から順に減少するとは思わなかった。レベル5で5%、6は10%、7が20%、8が30で9は40%、レベル10で50%ダウン。初心者の名前の通り、レベル10以上は初心者じゃないので効果が半減するらしい。
初心者の名前は飾りじゃないってことか。
そうなると、次の街に行く頃にはレベル15くらいか?プレイヤースキルが高ければ8か9でも行けるかもな。
……そういえば、アーキン様やトルークさんとの話し合いの時に薬効については言われた気がしなくもない。俺自身は使わないからなぁ。
まだまだプレーヤー間の差は少なく、レベルも10に届いているプレーヤーは一握り。
これは、ヒラリ草原の敵が少ないから。ダンジョンもそこまでまだ大きくないので、レベル上げには苦労しているらしい。
まだまだフィールドボスのハイウルフリーダーと戦えるレベルじゃないみたい。
ちなみにβでのフィールドボスはハイウルフなので、一回り強くなっているらしい。取り巻きも強くなっているから、初挑戦パーティーはβの感覚で攻めて簡単に全滅したとのこと。
そいつを倒せば初めて次の町、農業都市セックに行けるってあたりはβと同じだと推測されている。
まだ開始1週間も経っていない。それで次の街に行かれたら会社が困るだろ。 もっとじっくり楽しんでもらいたいに違いない。
じゃあ、プレーヤーは何をしているかって言うと、トップ集団は草原の奥でウルフの群れの討伐。
街の周りでは1匹で徘徊する獣も、草原の奥に行けば群れるようになる。危険はグンと上がるが、そこそこのパーティーならなんとか戦える。
そうやってパーティーでの集団戦に慣れようって腹だ。要は、経験値獲得と対ボス訓練をしているらしい。
中堅はダンジョン。中には獣だけじゃなくてモンスター系もたまに出るらしいが、数はそこまでじゃない。
モンスターはソロだと厳しいだろうけどパーティーなら問題ない。経験値も、単体としては悪くない数字だ。
ただ、戦闘頻度を考えると草原の奥で連戦する方が経験になるから上級者はあまり来ないらしい。
ダンジョンに潜るパーティーが日に日に増えているおかげで、町にドロップアイテムなどの流通が増えている。
初心者は近場でウサギやコッコ狩り。時たま落とすドロップアイテムもそこそこの金額になるそうで、最初の頃は取り合いだったようだ。
第2陣が参加するときにはまた混みそうだな。
生産系を狙っているプレーヤーもなんらかの攻撃スキルを獲得してレベル上げに邁進している。まだこの街じゃ生産道具がまともに手に入らないので、とりあえず生活費と経験値稼ぎが必要なわけだ。
あー俺は脇道派だね。そもそも街からでてないし。
いい加減にでないとな。
金曜の夜は早めに帰ってこれたので、日付が変わるまで6時間ダイブ。土日のイベントは10時からだから、目覚ましかけとけば大丈夫。
ダイブしてすぐに作業にとりかかる。
朝と同じく8刻で(微)300(小)200(中)100(大)115を作成。
これでクエストクリアまで後8刻。
長かったような短かったような。
手伝いのクエストは色々あるんだろうけど、家を建てるはめになる奴はいないよな。終わりが近くなると良い経験だったと思えるようになるのは何故だろうか。
遅い昼休憩をしているとお店に1台の馬車が。
「ただいま。
話には聞いていたけど、本当すごいことになってますね」
馬車から降りたのは、まだ20代前半にしか見えない青年だった。
雰囲気がポム店長に少し似ている。
そのまま奥へとやってきた。
「あ、ギースト様ですね」
こちらに気づいた途端、にこやかな笑顔になった。うん。商人だ。
「はじめましてポポロさん。離れにお邪魔しています、ギーストです。様付は勘弁してください」
「いえいえ。おかげで当店が飛躍できるのですから。
まあ、お嫌でしたら止めますが」
「私としては、色々とポム店長にお世話になっている身ですから」
「おかえりポポロ。疲れているところ悪いけど、荷物を倉庫に片付けるのは衛兵さんに任せて、早速作り方を覚えて。手が足らないの」
今はここでしか売ってないから、作れば作るだけ売れる状態。ついでに、土日のイベントに向けて買いあさり始めた奴もいる。さっきまで余裕があったのに、急に忙しくなった。
「色々と聞きたいこともあるけど、まずはそうしようか。
休憩中に申し訳ありませんが、ご教授いただけますか?」
言葉の途中でポポロさんは俺に顔を向けて、丁寧に頭を下げてきた。
「もちろんですとも。
丁度時間ですから、お気になさらず」
俺が原因で迷惑をかけてるんだから。
さすがに疲れていたのか、作業は4刻のみ。(微)(小)を20回ずつ作った後は、ひたすら(大)に挑戦してもらった。
俺?ひたすら(中)を作りましたよ。(大)のために必要だからね。
ポポロさんは残念ながら情報確定には至らなかったが、数灯後にはなんとかなるだろう。
そうだ!明曜は他の店から(中)を買い集めてもらおう。利益は減るけど作成速度が大幅にあがるし、他の店にも利益を渡さないと。それなら明曜には大丈夫だ。
残った6刻はひたすら作成。(大)200個になりました。
これでクエストクリアかな?
では、俺もログアウトしてすぐに寝よう。
クエストはほぼ終了です。