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「で、本題なんだが。俺たちと一緒にイベントに参加しないか?」
「ギーストはもう参加しましたか?私たちも何度か参加したんですが、参加人数によって出現する敵の数などが変化するのですよ」
「得られるドロップだけじゃなくて、採取できる物も少し増えるみたいで、戦闘系だけじゃなくて生産系のスキルレベル上げにも活用できるの」
「俺らはレベル上げがメインだが、向こうで過ごす時間が長いだろ?あんまり、臨時パーティー組んでってのはなぁ」
「ほら、チュパも新しく加わったんで、下手なプレイヤーを混ぜてトラブルになってもあれだし」
「女性ってだけで絡んでくる馬鹿もいるからな。理由はわかったよ」
「良いのか?ギーストのことだからソロで何度も入ってるのかとも思ったんだけど、ほら、効率悪いだろ?」
「他のチームに声をかけてもらって、一回入ったよ。確かに、レベル上げに良いよな」
「ソロだと採取系のスキルが高くないと、結局戦ってドロップ狙わないと素材が足らなくなるだろ?だから、暇そうなら誘おうかなっと。時間はこれから。報酬は、俺らが持ち込む素材」
「いやいや、そんなのなくても参加するって。特に予定ないし」
「……その状況でか?」
お前は何を言ってるんだ?
そんな四人の表情が面白い。でも、特に変な状況か?周りを見渡しても、いつもと変わらない。ごくごく普通の作業場所なんだが。
俺の顔を見つめていた四人の表情が、呆れからあきらめに変わり、苦笑いへと変化した。
「どう見ても、これから参加するためにアイテム作成しているようにしか見えない。それか依頼だね」
「それも、フルメンバーでの参加ね。アイテム数が多いから」
「ゴブリン対策で洞窟狙いですか?状態異常系のアイテムも多いですね」
「それだけの素材を加工するのにどんだけかかんだよ」
「……ああ、これ?販売用のやつも入ってるから。数はまとめて作ればすぐだし、素材だって使うの俺だけじゃないから。さすがに今全部は使わないよ。
じゃ、準備するからちょっと待ってて」
「それなら良いんだが。
悪いな、急な話で」
「俺にも利益があるから。スキルも本体もレベル上げておいて損はないって最近思ってさ」
「……カンストが好きなんだっけ?スキル進化が30とか40だけど、まだ上げられるみたいだからなぁ。それを考えたら今回のイベントは極力参加したいか」
その通り。錬金は進化が40なのか、まだ無理だけど、鑑定は35から進化先の【中級鑑定】が表示されてる。でも、すでに40どころか45まで上げられたんだから、こうなったらカンストまで行きますよ?……でも、できれば50が上限であってほしいかな。チマチマと100まで上げるのは大変だから。
まあ、だからお声掛けいただいたのは、大変光栄でございますよ。前回のでだいぶ、レベルも技術もスキルも上昇したからね。今度は積極的に森に入って【採取】のレベル上げをしたいんだよね。本当は、簡易炉を持って行って色々やりたいんだけど、よさげなのが手に入らなかったから今回は見送り。【錬金】【薬剤】辺りは新しいレシピでもなければ大幅なレベルアップは望めないだろうけど、【水魔術】とか他の生産系なら十二分に大幅レベルアップの余地がある。夜番の時に工夫すれば【夜目】だって……くひひっ。楽しみすぎる。クロを通して『名無し』のメンツにも声をかけたし、イベント中に後1回はパーティー組んで参加できるな。
時間が余れば、こっちで素材買い込んで向こうに行っても良いし。いやぁ今回は本当に、生産職のためのイベントだよな。
「俺の生産のレベル上げも兼ねてるから、素材と道具を持ち込んで作るってのと、あまり戦闘の役に立たないことを納得してくれるなら、いくらでも協力するさ。むしろ協力させてくれ。こんな美味い話は今後ないだろうし。
さてと。俺の準備は終わったよ」
「え?今話している間にか?」
「まあ、装備はいつものだし、必要なのは各スキル用の生産道具といくつかの移動式加工台セット、必要そうな素材だけでしょ?キャンプ道具も食料品も持ったから、準備万全!」
「割り切ってんなぁ」
「戦闘を切り捨てると、準備に迷わなくて良いですね」
「戦えないわけじゃないんだろ?」
「まあ、【水魔術】は生産でも使うし、【短剣】と【回避】は持ってるよ。あ、【投擲】も」
「生産職でそこまで持っていれば十分でしょうね。普通はあっても3つですよ」
「スキル枠圧迫するからなぁ。やっと外す方法が出てきたけど、まだまだ難しい」
「基本的な技術を学べる場所があると便利なのですが」
「プレイヤーも増えたから、そういった支援系のクランもそろそろ出てくるだろ。それよりも、準備できたなら行こうぜ!」
「その前に、一度ギルドに寄ってギーストに渡す素材を買っていきましょう。あ、こっちはテツエンのお土産です」
「これはこれはご親切に。ありがたく頂戴します。……って良いのか?どう見ても高そうだが」
「まあ、最初に向こうに行くときに餞別一杯貰ったからな。それに、テツエンのそばで見つけたモンスターからのレアドロップなんだけど、運よくそこそこの数手に入ったんだよ」
「単に売り払っても良いけれど、素材だからなんらかに活用してもらえた方がとも思えてね」
「ま、面白いものが作れたら教えてくれや」
「ありがとう。それじゃあ、行こうか」
貰ったお土産を机の後ろの棚に丁寧にしまって、改めて出発することにした。
イベント内では何か新しいことあるかな?ミル・クレープ達とはまた違った冒険になりそうだな。楽しみだ。