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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
13章素晴らしき世界
210/236

13-20

「こちらは大丈夫」

「……ごめん。大丈夫なのかどうなのかもわからん」

「何か手伝える?」

「矢に“ブレス”お願い」


 うーん。さっきの二方向と比べて、ここはわかりづらい。柵の向こうを直接見ても、微妙。なんか石らしいものがあるけど、たぶんあれは岩系の魔物で、あの盛り上がっているのも魔物?見覚えがない植物は、それ自体が魔物なのか、それとも偽装なのか判断が付かないな。ここだけ違うゲームになってない?

 サンズは、“ブレス”がかかった矢を持ち、おもむろに引き絞ると柵の少し向こう側へと解き放った。地面に刺さった瞬間、太めのロープがのたうつ。

 あれは蛇か!

 次々に矢を放つが、どれも近場を狙っている。それなのに、当たるまでそこに敵がいるとはみじんも感じない。いや、気づかんだろこれ?日中でもこのレベルで隠れてたらわからんぞ。攻撃食らって初めてわかる感じか?


「よくわかるな。よく見てもわからないぞ」

「少し前と比べると違いがあるからわかる。ずっと見てるとわからない。間違い探しと同じ」

「相変わらずサンズは変わってるわね。そんなのでわかるわけないでしょ。

 ずっと見てれば、動くんだからわかるじゃない。草むらにいたって、不自然な揺れでわかるでしょ」

「……どっちもどっちだろ」


 通常の人間にはわからんぞ。なんつーか、変わった双子だよな。

 まあ、でも、次々に当てていくんだから敵の位置をきちんと把握してるんだよな。かなり近づかれてはいるけれど、寄ってくる動きは遅いみたいだから、まあまだなんとかなるのかな?


「もっと筋力を上げておけばよかった。ダメージソースが足らない」

「あ、だから近くまで引き付けてるの?最初と比べて何してるのかと思ってたわ」

「矢は有限。まだ数はあるけど、節約する」

「距離が近い方が威力が上がるからそうしてんの?すごいな、色々と」


 自分と敵の能力差を正確に見極めて、かつ、必ず発見できる自信がなければそんなことできないぞ。失敗したらって考えちまう。

 でもまあ、このやり方だと、協力のしようがない。大人しく受け持ち場所へ戻ろうか。そう考えていると、何やらサンズが欲しいものがあるみたいだ。


「ゴブリンの牙とか要らないアイテム欲しい」

「あ、私持ってるよ。あげるあげる。

 で、なんに使うの?」

「隠れる系の魔物。鳴子で動きが止まった。木の枝踏んでも止まる。戦闘中はどんなにうるさくても止まらない。

 もしかしたら、移動中に自分が音を出すと驚くのかも」

「そういう弱点があるのかもしれないね。わかった。どうせ後でドロップアイテム回収に柵の周りをまわるんだ。拾う数が増えたって構わないさ。それに、大して価値もない。使ってくれ」

「ほとんどを玉砂利代わりに撒いた後だから数は少ないけどね」

「大丈夫。近くで動きが止まれば良いだけだから」

「遠くに撒く手段もないしね。じゃ、ここ置くね。

 あ、そうだ。どこかに集まるとしたらアンデッドのとこね。“ブレス”柵が思いのほか効果的なの」

「了解」


 ロールプレイなのか性格なのか、静かに話すサンズと大人しそうでも芯の入ったアマのコンビは、さすが双子と言いたくなるようなテンポの良い会話で情報交換を瞬く間に終わらせた。

 こうなると、本当にやることがない。

 帰るか。

 熱烈歓迎してくれるアンデッドが俺を待っている。……俺のところも、違うゲームになってない?まあ、数が多くないから良いけどさ。



「で、やっぱりこうなってるか。微妙だなぁ」

「遠距離攻撃のダメージソースがもう【水魔術】一択ですか?」

「石の残りもあとわずか。近くに来てくれれば直接攻撃で倒すんだけど」

「……大丈夫ですか?」

「……正直、やだ」


 どこぞのゾンビ映画よろしく、うめき声を上げながら、四肢の欠損なぞ知らんとばかりにこちらへと這い寄る腐肉が台地の三割ほどを占めている。“ブレス”のかかった罠によって生じたダメージを自覚できずに動くからこうなる。さらに言えば、穴は越えられないから堀にもいるし、そこを乗り越えて“ブレス”柵にぶつかるまでが一連の流れだ。でも、柵は武器じゃないからダメージなんて極々わずか。積み重なっているのと大差ない。

 このまま行けばそのうち越えられちまう。

 思いのほか、見て回るのに時間を取られたんだな。そう思う反面、あれだけ外していてもこっちは大丈夫で、苦労している方面もあったんだから行って正解だったなとも思う。まあ、そんなこと考えてる間に処分処分。

 剣を抜き、柵のこちら側から、慎重に向こう側をのぞき込む。振り回される腕を大きく避けながら、チクチクと攻撃を繰り返す。突然横から腕が伸びてくることもあるので、油断はできない。

 こちらのダメージは、俺の鼻。まあ、倒しても倒しても他の奴から臭うので、とっくの昔に馬鹿になってるけど。

 石でどうにかなるもんじゃないから、アマには改めて罠と柵、それに俺の剣に“ブレス”してもらう。“ターンアンデッド”とまではいかなくても、ダメージ性のある魔術が使えれば良いんだろうけど、まだまだレベルが足らなかったみたい。

 でも、今回これだけスキルを行使したらいくつかアップするんじゃないかな?1回目よりも2回目、3回目。通常のレベルもスキルや技術のレベルもアップするだろうから、どんどん攻略が進むはず。楽しみだなぁ。

 ……はい。現実逃避です。うめき声に満ちた場所で単純作業してるんだから、それくらい大目に見てよ。ああ、早く朝が来ないかな。

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