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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
でっきるっかなでっきるっかな
21/236

2-7 作業所

 金曜の朝は木曜と同じく8刻ダイブ。

 ステータスを見たらSPが4になっていたので、これで【魔力操作】を取った。消費魔力をレベル/5%削減、威力もレベル/5%向上する。

 ま、低レベルのときはほとんど効果が見えないけど、俺としては精神力が上昇することの方が価値がある。

 【火魔術】でも良いんだけど、後回しとさせてもらう。今は使わないからね。

お風呂が出来上がる頃には、次のスキルスロットも開放できるだろう。

 これで残りSPは2。ちなみに、【錬金】【魔力増加】が共に5に、【水魔術】が10になったのがSP急増の理由。うーん順調に成長しているって実感するな。本人レベルは1だけど。

 MPがわずかとはいえ増えているので、“簡易錬金”や“クリエイトウォータ”が使いやすい。【生産者の指】も目に見えた効果はでていないけど、数刻続けて作っていると前よりも多めにできる気がするし。

 技能様様だね。


 まずはMPの限りに“簡易錬金”。(大)が1つできた。

 作りながらMP回復待ちしても良いんだけど、まだ明るいのでお店に行くと、丁度お客さんが帰るところだった。


「お、ギースト。作業しながらで良いから聞いてくれ」

「どうしたんです?追加の依頼ですか?」


 トルークさんに声をかけられたので、MP回復を待ちながらお店の掃除をすることにした。

 最近、忙しくて掃除がおろそかだったからね。


「いや、そうではない。お主の屋敷は更地にしたままで、まだ作業が始まっていないんだが、作業所が完成したのでな。

 必要な備品も設置したので、いつでも移れるぞ」


 そう言われて、掃除をする手が止まる。


「早いですね」


 すっかり忘れてました。


「向こうの素材倉庫も広めに取ってるから、一度見てくると良い」


 離れに置きっ放しにしてある鉱石や折れた剣、バットの牙等の使い道のない素材なんかは置いてきても良いかな。品質的にはまだ持ちそうだけど、早めにレシピがほしいな。


「お言葉に甘えて、これから行ってきますよ」

「そうか、なら案内しよう。これはなくすなよ」


 そういって3つの鍵を手渡してくれた。


「多いですね」

「門と作業所と素材倉庫、それぞれに鍵がしてある」


 トルークさんはそう言うと、顔を寄せて声を落とした。


「錬金台やら道具は、一級品とまではいかんがそれなりに値がはる。お主の持つ素材とて、まとめて売れば一家が慎ましやかに一節は過ごせるぞ」


 あーそうか。装備や消耗品に金がかかる冒険者にとっては端金でも、そんな物が必要ない町民にしてみれば大金だよな。

 今は衛兵さんの出入りが多いから大丈夫だけど、家ができたら泥棒対策も考えないとかな。


「うーん。俺は結構家にいないと思うんですよ。どうしたら良いですかね?」


 困ったときのトルークさん。


「そうさな。屋敷を管理するメイドと護衛を雇うのが一般的だな。人が多くなれば、それを管理する執事も必要となる」


 それは、貴族の一般じゃないでしょうか。

 そう言うと、トルークさんは肩をすくめた。


「お主もたいして変わらんよ。あれだけの屋敷を持つ者がどれだけおるか」


 ちなみに、家仕事をするのがメイドであり、男でも女でもそう呼ぶとのこと。 人数一桁ならメイド長で十分管理できるが、人数が多くなると専門の管理人(執事)を決めるのが一般的とのこと。

 ここは小さな町なので領主のアーキン様を筆頭に大きな屋敷を構える人は20名もいないらしい。その半数は無人族。残りは亜人族と獣人族で、妖人族はいない。ほとんどが国貴族(国王より爵位を賜った貴族)で、騎士爵レベルだと小さな屋敷で暮らすことが多いそうだ。あとは大商人くらい。

 その種族構成はそのままここで生活している種族比率と同じ。残念ながら妖人族はこのあたりには少ないらしい。

 祝福の冒険者では無人族の方が少ないくらいだけどね。



「必要なら、商人組合や冒険者ギルドで募集をするといい。

 メイドや執事は商人組合、護衛は冒険者ギルドや商人組合で募集すると集まりやすいな。まあ、どんな人がほしいかで変わってくるがな」


 荷物運びを手伝ってくれながらトルークさんは色々教えてくれた。


「信用できる人を雇いたいなら伝手をたどるのがお薦めだが、お主には難しいだろ?」

「そ、そうですね」


 荷物を沢山運びながらもトルークさんの声は軽やかだ。ひぃひぃ言ってる俺とは違う。重いのはインベントリに入れてあるから、嵩張って持ちにくいだけのはずなのに、結構大変。


「……ただ、まあ、護衛であれば伝手がないわけではない」


 真面目なトルークさんは自分の仕事を利用しているようで心苦しいのか、聞こえるかどうかと言う声の小ささでつぶやいた。


「うーん。

 雇うのであれば、護衛は8人、メイドは2、3人ほしいですね。給料は護衛は連20銀貨、メイドは10銀貨。リーダー役は銀貨2枚プラスします」

「……多いな」

「そうですか?まあ、その分いい人が応募してくれるんじゃないですか?」

「給料では、いや、そっちも多いか。

 家持ちなら一家四人で銀貨10枚もあれば生きていけるぞ。

 相場は護衛14銀貨、メイド8銀貨だ。住み込みなら護衛ですら10枚、メイドなら4枚もいらんぞ」


 娯楽がない分生活費が少ないのか、現実よりもかなり安いな。

 住み込み系は、働いている間にお金を貯め、結婚と同時に家を買うことが多い。ちなみに、小さな家ならアークの街中でも金貨5枚から。ま、5枚だとすごいみすぼらしい家しか無いけどね。


「人数も、お主の屋敷なら4人くらいだ」

「屋敷を空けることが多いですからね。4組3交代できっちり守って貰わないと。

 ……高価な備品もありますし」


 ぼそっと付け加えた台詞を聞いて納得してくれた。

 設備と合わせれば、たたき売っても10節は暮らせる屋敷だよ。これでも少ないくらいじゃないの?


 屋敷の門はごつい南京錠。分厚く重めの門は木製だった。

 建物が撤去された正面奥はかなり広く感じる。門を入ってすぐの広場には色々と建材が積まれており、作業所はその影に隠れていた。

 ぱっと見、俺のアパートよりも広くね?

 作業所も素材倉庫も似た大きさの南京錠で、こちらの扉もかなり堅そうだ。


「頑丈そうですね」

「当たり前だ」


 作業所の扉は大きな外開きで、荷物の搬入出も簡単そうだ。中には真新しい作業台(錬金台)や流しがある。

 ちなみに、この世界には水道がなく、流しには水を出す魔法具が設置されている。魔石も安くないので、井戸水も広く使われているけど。

 あれ?素材倉庫は?


 扉を閉めると閂をかけ、トルークさんは慎重にあたりの気配を伺った。

 近くに誰もいないことを確認したのか、一つ頷くと懐から魔道具を取り出して明るくした。

 光の魔道具だ。

 トルークさんは光を床に置くと、左奥の壁にある棚近くの床をおもむろにめくり上げた。

 隠し階段ですか。ギミックに凝ってるね。


「地下ですか」

「見て驚け。地下全面が素材倉庫だから広いし、天井も厚めにしてあるから足音も変わらんぞ」


 確かに。注意して聞いても、音に違いは感じられない。

 音の確認をしている間に、トルークさんはさっさと降りて行ってしまった。


 慌てて隠し階段を降りると、鍵の付いた扉が開いている。ここは内開きだ。

 広さは作業所と同じくらい。ただし、全面が石で囲われているので威圧感がある。


「どうだ、すごいだろ」


 自慢げなトルークさんに言葉を返しつつ、インベントリから素材を取り出しては片付けていく。

 正面奥は鉱石や折れた剣等の金属類。右手奥は牙や骨などの保存性の高い素材。

 扉に近い右手前は同じ素材でもそこそこ持つスライムゼリーなど。

 左手側は毒草や毒キノコなどの1連持たない系。左手側からぐるっと灯持ちしない順に分けて置くことにした。

 中央の開いたスペースは木材だ。

 それぞれの中でも、壁に向かって右手側の方が先に駄目になる素材を置いておく。

 まだ空きが多いから、今のところはこんなもんで良いだろう。


「そっちのキノコはいくつか上に置いた方が良い。カモフラージュになる」


 万が一を考えるとその方が良いか。

 片付けも早々に素材倉庫から作業所へと上がる。本当はじっくりと堪能したいけど、これからはいつでもできるしな。


「屋敷が完成するまでこちらに泊まり込むなら、ベッドも用意するぞ」


 それは気づかなかった。そうだよな、ポポロさんが帰ってきたら離れからも出なきゃだし。


「お言葉に甘えます」



 ポム薬剤店に帰りながらもトルークさんと色々相談した。

 護衛は心当たりに声をかけてくれるそうだ。兵士を辞めるつもりの知人がいるらしい。

 金額は低めでもって言われたけど、元衛兵ならそれなりに対人訓練もしている。

 俺との訓練も込みでってことで、そのままの値段にしてもらった。

 冒険者ギルドとはまた違った訓練ができそうだ。

 メイドは商人組合へ。料理も掃除も洗濯もお願いするし、将来的には生産物の販売も手伝ってもらう予定。

 技術獲得のため時には家内作業も教えてもらうつもりだから、こっちもお値段そのまま。

 最初は通いで、屋敷が完成し次第住み込み雇いだ。

 部屋は二人で2階の1室を、リーダーには一人で1室を使わせる。

 それでも6部屋空いてるから今のところ十分だ。


 お店に帰ると、ポム店長が作業の手を止めて話しかけてきた。


「あ、ギーストさん。そろそろ商品の追加をお願いできる?

 ここのところ良くはけるのよ。何かあるのかしら?」


 小首をかしげるポム店長を見て思い出した。

 須佐見がそんな事を言っていたし、公式ページでもあったよな。正式サービス開始記念イベントだっけ。


「ああ、祝福の冒険者達のからみだと思います。そんな噂を聞きました」

「いつの間に。そんな噂は初めて聞いたわ」


 店長のつぶやきは聞こえないふり。NPCは知らないのか?

 いや、ここのところ作ってばっかりで他のことはしてないからでしょ。


「じゃあ、急いで商品を作りますね」


 そそくさと離れへ戻る。最近サボっていたから頑張るか。

 8刻で出来たのは(微)300(小)200(中)100(大)115。

 さて、仕事仕事(現実)。

生産系は素材にお金を費やしますよね。

まだ次のフィールドが解放されていないので、主人公は使い道があまりありませんね。

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