13-19
「ったく。キリがねぇ」
「“ブレス”
数の少なさと、“ブレス”が罠にも効果があったことで何とかなってるけれど、このままじゃジリ貧です」
「ほい。魔力回復薬(中)。
素材があればいくらでも作るんだけど、さすがにねぇ。他はどう?」
「あ、魔力回復薬をいくつかください。ソフィーに持って行きます。
どこも似た状況ですね。リムリラのところは通常のゴブリンの他にナイトゴブリンがちらほら。数はこっちの倍は来てます。が、罠と柵のおかげでなんとか持ってますけど」
「なら、そっち行くかい?」
「私がいてもそんなに役に立たないので。“ブレス”はまたかけに行きますけど。
ソフィーのところは、ミルの出番も増えましたね。他に比べると数は少ないんですが、抜けられた時の被害が大きいので。
サンズは、まあどうなっているのかわからないですけど、行くたびに矢を放つ間隔が早くなってるので、どんどん近づいて来てるんでしょうね」
そろそろ、用意しておいた石もなくなる。すでに、体感だと夜明けが近いはずなんだけど、まあ実際はどうなんだかってところだ。思ったよりもゾンビの数が少ないので、見えているやつを始末して一度手助けに回った方が良いかも。
アマに聞いてみると、ブレス罠の効果が一番高く、柵に“ブレス”するだけで侵入が阻めるこっちが一番余裕があるみたいだ。遠距離の攻撃力の差で、次点がソフィー。あまり出番のないミルは、リムリラの手伝いに行ったり、戻ってきて石を投げたりと頑張っているとか。
「アマ。今来ているやつを倒したら、一回他の援護に行こうと思う。ここが一番余裕があるし、森から柵にたどり着くまでにも時間がかかるだろ?
“ウォータボール”“ウォータボール”」
「良い案ですね。じゃあ、改めて奥の罠にかけときますね。念のために柵にも。
“ブレス”“ブレス”」
「ササっと行ってくるか。時間は貴重だからね」
ゴブリンの群れと戦っているリムリラには、余裕があるけれど手が離せる状況ではなかった。着いてすぐ、アマが剣に“ブレス”をかけた。その横で、俺は“ウォータボール”を連発し、少しの空白を作り出すことに成功する。
「あっちは大丈夫なの?」
「見えるところにいるゾンビは倒して、柵とか罠に“ブレス”かけてきたから、それなりに余裕はあるよ。ずっとは無理だけど。はい回復薬」
「あ、ありがと。
こっちは、柵を作っておいて良かったよ。一匹一匹は問題ないけど、こう数が来ると手数が足らなくて」
「回復薬を飲む余裕もなかったんだね」
「普通のゴブリンは問題ないんだけど、ナイトゴブリンがいやらしくて。夜戦特化なのか肌の色が暗めで見づらいのよ」
「ナイトってそっち!?騎士じゃないんだ」
「そっちはゴブリンナイト。ゴブリン系ではウォーリアーの先だからこんなところで出てきたら即全滅よ。昼間だってそんなのはいなかったでしょ?夜になって敵が強くなるのはお約束だけど、桁違いにはならないわよ」
「まあ、そうじゃないと文句が出るからね。じゃ、他も視てくる。頑張って」
「手がすくなら時々回ってきてくれると助かるわ。特に、他の状況を教えてもらえるとね。
いざとなったら、ギーストのところが一番良いかもね。柵に“ブレス”すれば、後ろを気にしなくて済むし」
一番敵の数が多いリムリラのところは、数が多いだけで俺達の手助けは微妙だった。でも、わずかとはいえHPも減っていたし、気を抜くことができる時間を確保できたのは良かったと思う。
精神的・肉体的疲労が原因のミスにより全滅なんてのはよくある話だから。
石はそれほど残っていなかったけど、もう使っている暇はないだろうとのことなので、俺のインベントリへと収納した。他のところで使うだろうし。
じゃあ次はソフィーとミル・クレープか。
「助かったー。MPがそろそろやばかったの」
「近寄らせると危ないから、どうしても遠距離から撃ちまくってたものね」
「さすがに、これだけ距離があると当たりづらいわ」
「自分には、思ったよりも石投げの素質があるみたい」
「ミルの石はバカスカ当たるわよね。ただ、ダメージとしては少ないのがねぇ」
「なによ、良いじゃない。怯んでる隙に魔術も当てられるようになったでしょ?
でも、もう残りが少ないから節約しないと」
「イベント終わったら、ミルには【投擲】の技術が生えてるかもね。あ、石はここに配置しましょうよ。追加で“ブレス”しますし」
「はいよ。
ここは、問題は少な……くはなさそうだな。なんだあの数」
「ほら、火の光に虫って集まるじゃない?だから、ミルにお願いして薪を投げてもらって、キャンプファイヤーを作ったの。そしたら、集まる集まる。自爆してくれるから楽だけど、火が弱まるとこっちにも結構流れてくるからちょっち失敗。
そっちに【火魔術】で火力を追加しつつ、火を気にしない魔物を倒している状況ね」
「そろそろ薪もなくなりそうなので。最後にはまとめて燃やせればって思うんですけどね」
「【水魔術】の俺じゃ協力できそうもないな。あっちにある机でも解体するか?」
「気休めレベルですけど、やらないよりはマシですね」
食事のために使っていた机を解体し、わずかとはいえ薪を作った。うーん。本当にないよりはマシな程度だな。遠距離攻撃をしないといけないのが厳しい。近づかれたとき用の抗○○薬もあることはあるけど万能じゃないし、回復するという一手のコストが重い。どうしても後手に回ってしまう。
ミルは石を温存し、ゴブリン討伐の手伝いをメインにするとのこと。時々戻ってきて薪を投げ入れては向こうに行くってサイクル。ちょっと無駄が多い気もするけれど、ただ待っているよりも彼女の攻撃力を活用できるからな。
「いざとなったら、アンデッド側に集まってくれ。柵に“ブレス”が有効ってわかったから、そこなら後ろを気にせず戦える」
「「はーい」」
「じゃ、サンズのところへ行こうか」