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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
13章素晴らしき世界
203/236

13-13

「草原のウルフ系は音で寄ってこないけど、遠吠えだと寄ってくるのよね」

「でも、ウサギとかは音がすると逃げ出しやすいよ」

「街近くの森だとどうだったかな?鳥系はやっぱり見つけづらいよね。あれは音がすると飛んでいくわね」

「そう言われると……斥候系くらいしか見つけられない魔物がいたと思う。ほら、隠れイタチ。みんなは見たことないでしょ?」

「あれって噂だけじゃないんだ。いいなぁサンズ。見たことあるんだ」

「見つけづらいってだけで、ドロップもたかが知れているから。わざわざ狩らないわ」

「……今後のことを考えて、森の歩き方とかも知らないとダメかもね。ゴブリンとかオークとかは、どう考えても音を聞いて集まってくるでしょ」

「先制攻撃できないまでも、奇襲を防げるだけでも十分に学ぶ価値があると思う。イベントが終わったら、いえ、このイベントを使ってサンズに教えてもらいましょ」

「良い案!お願いね」

「貴女ほどにはできなくても、少しでも効果があれば儲けもの。技術が生えるかもしれないし」

「わかった」


 さっきの戦闘音でも特に敵はやってこなかったので、ある程度の休憩はできた。あれだけ音を出したのに変じゃないかって話が出たが、どうなのかな?確かにゴブリンの時は音で集まってきたけど、今考えると昆虫とかはあまり関係なかったかも。

 それにしても、森の歩き方か。山とか砂漠とか、それぞれ注意することがあるんだろうな。あ、また一つ旅に出ない理由ができてしまった。

 野生動物は危険に敏感だから、音を出していると熊も逃げていくって聞いたことがあるな。それが理由かもな。


「動物系と魔物系の違いかもな」

「え?何が?」

「ほら、寄ってくるモンスと寄ってこないのの違い。ウサギとかウルフとかの動物由来は寄ってこなくて、ゴブリンとかは寄ってくる」

「うーん、そうねぇ……良い視点かも。それに、強さもあるかも。熊なんて寄ってくるんじゃない?」

「そう言えば、最初のうちはウサギも攻めかかってきたわね。ま、その辺りの総合的な判断なのかもね」

「行動パターンに個別の性格まで入ってたりして」


 夢のある話だ。そこまでの性能があるプログラムなんて今の技術でできるのかな?AIだってまだ人間味に欠けるって言われるのに。そう思うけど、こんなゲームをいつの間にか開発できるんだから、大丈夫なのかもな。

 雑談はこの辺りで終わりにして、出発することになった。川沿いを進む案と、森の中を進む案が出たけれど、森の中はこれまでも散々歩いてきた。かといって、ここは開けているけど、上も下も木が茂っていて逆に歩きづらそうだ。


「川からあまり離れないように、森の中を行きましょ」

「ここでかなり時間を使っちゃったわよね。奥まで行き過ぎると帰れないんじゃない?」

「メニューにある時計で判断しましょ。出てきたのが6刻で今は9刻、13刻には帰り始めるってことで」

「そうね。面倒そうなことになったらその前に撤退も考えないとね」

「ああ、ゴブリン祭りみたくなりそうなら帰りましょ。まだテントの裏側にも行ってないんだから」

「えー私そっち行きたくないな。噂が本当なら」

「噂?そう言えば、アンデッドが出る方向があるって聞いたわね。疲れている時に戦いたい相手じゃないわね」

「ダンジョンにいたスケルトンとゾンビは、正直、戦って面白くもないし、利益もないし」

「でも、私の“ブレス”が効くのは嬉しいんだけど。今、私役立たずじゃん?ギーストの豊富なアイテムがあるから」

「回復は重要よ。アイテムは数に限りがあるからアマの存在は何よりも助かってるわ。

 でもそうね、貴女のスキルレベルアップの重要なチャンスよね。最終日にそっち行きましょうか。今晩は魔力回復薬を中心に作ってもらうことにすれば、時間まで戦い続けられるんじゃない?」

「じゃ、こっちの森は13刻まで色々調べながら進みましょ。採取は珍しいものと魔力草限定にして」

「森での戦い方に慣れないとね。逃げたりしないアンデッドと戦うなら、良い位置を取れないと押し込まれかねないもの」


 あらまあ。みなさん戦闘民族ですな。帰りの時間について話していたのに、いつの間にか戦いの話だ。まあ、ゲーム的にもシチュエーション的にも間違っていないんだろうけど。

 結論が出たので、ちょっと森の方に入ってから、川の流れが聞こえる位置で川上の方へと向かうことにした。川下だと、キャンプ地へ戻る方向だからね。

 森に入ると、散発的に森犬が群れで襲い掛かってきた。下草の陰から襲われたり、木の後ろから足に向かって跳びかかられたり。そうして足元ばかりに気を配っていると、今度は頭上から草蛇が絡みつこうと襲い掛かってきた。ミルが巻き付かれてダメージを受けてパニくったけど、一匹だけだから大丈夫だった。瞬く間にリムリラが剣を突き刺し、サンズがナイフを入れ、アマがミルを回復させた。

 ……うん。味方からの攻撃の方が怖いと思われ。首元狙って剣が振るわれるのは、心臓に悪いわ。俺じゃなくてよかったとしか思えん。

 そんな感じで2刻も進むと、こっちの方向性が見えてきた。こいつは面倒な場所だ。


「こっちはサンズが頼りね」

「斥候役が果たせない」

「敵を見つけまくったでしょ?それで十分よ。

 それにしても、トレントにカメレオン。ロックストーンとか尺取虫も居たわね。擬態系のマップかしら」

「リーフバタフライと、ロックスパイダーも擬態だったよね。でも、森犬とか草蛇もいたじゃん」

「隠れる系の特技を持った敵がでるマップ、かなぁ。まあ、レンジャーや盗賊タイプが特に活躍できるマップよね。

 そう考えると、ほら。ゴブリンのところは通常戦闘だから戦士や魔術師、虫は状態異常だから生産系、こっちは斥候系で、裏手が神官系。バランスが作り込まれてるよね」

「たぶん、みんな一度は全方向試して、自分たちに一番合った方面の攻略を進めるんじゃないかな?うちらなら……こっち?」

「アマのレベルアップは今後のために必須だからアンデッドにも行くけど、一番戦いやすいのはこっちかもね。ギースト込みで考えるなら虫も可」

「「だがゴブリン。てめーはダメだ!」」


 何かの決め台詞なのか、アマとサンズの双子が輪唱して笑っている。

 楽しそうで何よりです。

 ま、戻ったら裏手のアンデッドを体験して、明日はこっちの森で訓練することになった。夜は次回以降のお楽しみ。一度にあれこれ求めても、成功しないしね。

 これ以上奥にはいかず、時間まで、周辺で狩りをして過ごしましたとさ。

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