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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
13章素晴らしき世界
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13-10

 すっかり日も落ち、月明かりの中、赤々と踊る焚火を見つめていると、辺りに誰もいない気がしてくる。

 まあ、二人組で夜番をしているので、目の前にいるんだが。

 とは言え、夜中である。皆は静かに眠っているため、大きな声を出すわけにもいかない。眠らないように、交代で鳴子のチェックに行くくらいだ。


「中番は厳しいですね。寝足りないので、ちょっとボーっとします」

「あと一刻もすれば交代だよ。また見回りでも行く?」

「う~ん。我慢します。じっくり星でも眺めてますよ」

「それ、寝るフラグ」


 最初だからか、特に森の動物たちが寄ってくる気配も、魔物がくる気配もしない。襲撃があるとしたら、次の夜だろう。イベントは2泊だから。

 夜番なんて、普通のゲームならそうそうないだろう。でもこのゲームでは他の街に旅するなら、夜の対応は必須。敵も強くなるし、見つけづらく、戦いづらくなる。眠くもなるし……って、旅の途中でタイムリミットが来たり、ダイブアウトしたらどうなるのかな?一人ならまだしも、チームになってたりすればかなり問題があると思うんだけど。

 まあ、その辺りの確認は、他のプレイヤーにお任せして、自分はまったりと遊ぶけど。


「キャンプ気分だと、最後まで生き残れないかもしれませんね」

「今日の数を考えるとなぁ。あれを越えて奥まで探索できるやつがどれだけいるやら」

「もしかしたら、今後もこのマップを使いまわすんじゃないですか?要素を追加していって」

「それはあるかもな。初心者向けから徐々に難しくなっていくし、行く方向によって敵の種類も違う。訓練には丁度良いから」

「死んだ時のデスペナルティも軽いみたいですよ。失うアイテムは基本こっちで手に入ったアイテムみたいですし、装備も全壊じゃなくて、最悪でも修理可能ってことですし」

「ますます、初心者を初級者にするイベントだね」


 町の外では、死ぬ危険がある野営は、デスペナが怖いので二の足を踏む。その経験を積ませてくれるイベント、それも、デスペナに補正がかかるなら、誰でも試してみるだろう。そう考えると、やっぱり初心者をレベルアップさせるためのイベントなんだな。あのゴブリン祭りも何某かの意味があるんだろう。

 でも、そんなことはどうでも良い。そんなことよりも、今頭上に広がる満天の星空。この、世界を楽しむ方が重要だ。そう思える空を、飽きずに見ていた。


「奇麗な星空ですよね。あ、そうそう。現実とは違う星空みたいですよ。しかも、現実と同じく、季節によって変わるっぽいです」

「……誰かが勝手に星座作りそうだな。それにしても、そんなことまで調べられてるんだ。暇な奴もいるんだな」

「師匠だって変わりませんよ。セバンスさんに聞きましたよ、牧場経営に乗り出そうなんて趣味人ですね。美味しい牛乳のためですか?」

「違うわっ!……でもまあ、確かに、牛乳で薬作ったらどうなるかとは考えたが」

「リアルで昔の薬の作り方を調べました?今、流行ってるそうですよ。昔ながらシリーズ。ゲーム内でできるようになった人がリアルでやってみたり、リアルで作ってからゲーム内で試したり。動画になってますよ。

 あと、スクショとお題系が今の人気です」

「動画とスクショはわかるけど、お題系って?」

「よくある、この画像で笑える台詞を考えるとかシチュエーションを考えるってお題があって、上手に作れた人が優勝です。逆に、お題に合った画像を出し合うこともありますね」

「昔からあったやつだな。みんな好きだねぇ。

 それにしても、よかったなぁ」

「何がです?笑いですか?」

「いや。最初はみんな攻略にしか興味がなくってさ。街の雰囲気すらどこか殺伐としてたんだ。今は、最初の街らしく、ほんわかしてる気がするよ」

「……そんな街なら私も肩身が狭かったでしょうね。メインが木工ですもん」

「楽しむのが一番だと思うんだよな。せっかくだもの」


 吸い込まれそうな星空を見ながらそう思う。先へ先へと目指す気持ちもわからないでもないけど、やっぱりゲームは楽しみたい。ノルマがあったり、やりたくないことをやらされたり、なんて現実だけで十分だろうに。なんで、そんな状況へと進むのかな、みんな。せっかくのリアルさなんだから、リアルでできないことをすれば良いのに。だから、ユーザーが増え、遊びの幅が広がったのをとてもうれしく思う。いつものように、つらつらとそんな思考を巡らせていたら、テントの中から起き上がった気配がした。

 どうでも良い事を考えていると、時間が経つのは早いよね。


「ふわぁあ。やっと交代ですか」

「なんで眠いのかな?システム的影響?」

「その辺りは不明ですね。痛み軽減などもあるので、眠気パラメーターとかもありそうですけど」

「……まあ、現状はそうだってことだけ覚えておけば十分か」

「ですね。じゃ、師匠。またあした」

「おう。ちゃんと寝ろよ。

 お二人さん。後は頼んだ」

「お願いねー」

「はいはい。まだイベントは続くから十分に体を休めてね」


 申し訳程度に着ていた皮鎧をインベントリへと片付け、寝る体勢に。

 うーん。簡単でも布団を作っておいてよかった。……でも、もっと改良しよう。そう思いながら夢へと旅立った。

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