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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
13章素晴らしき世界
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13-9

 暗くなる前にキャンプ地に戻らないといけない。せっかく周囲のゴブリンをせん滅したけれど、探索の継続はやめた方が良いだろう。またもやまっすぐに来た道を戻る。

 来るときになで斬りにしたし、今さっきまでわざと集めていただけあって、帰り道は平穏すぎるほど平穏だった。ただ、やっぱり他の動物などの痕跡はないみたいだ。こうなると、そもそもこっちはゴブリンエリアなのか、それとも、やつらの餌になったのか……後半かもしれん。カマキリたちも、俺らを認識するまでは狩る狩られるの間柄だったみたいだし。

 それにしてもひどい戦いだった。おかげで、帰りの話題もそれ一色。


「あの数は、ソロなら絶対に無理よね。いくら音で近隣から集めたからと言っても多すぎよ」

「あ、でも、戦闘音に気をつけろってことじゃない?この先」

「そこまで考えられたイベントかなぁ?単純に、参加人数によって配置されるモンスター数が増えただけじゃないの?」

「でも、ほら。今回、色々と違ったタイプのモンスターが出るって話でしょ?単純な戦い方もそうだけど、もっと広い範囲での技術向上を促してるのかもよ」

「アイテムがポイント換算されるから助かる。普通なら、インベントリの肥やしにしかならんぞ」

「討伐証明が主な使い道って言われるくらいですから。鉄とかと混ぜるとゴブリンキラーができるんでしたっけ?その後の使い道が限定されますが」

「それ、ありかも。槍の穂先や矢じりにしたら、売れるんじゃないか?ゴブリンならどこにでもいるし、悩んでいる村なんてたくさんあるんじゃないか?」

「それが欲しい所は、買うお金がなさそうですけどね。だから村が襲われるわけで。

 ゴブリン襲撃イベントを見越したプレイヤーに纏め売りできるくらいじゃないですか?手間の割には儲からないかと」

「……スキル上げを兼ねて作りまくって、村に配り歩くってのが最も有効な使い道かもな」

「武器とかって作りすぎるとギルドでも買い取ってくれないみたいですし、大変ですよね」

「でも、消耗品なんか期限があるからもっと厳しいんでしょ?どうしてるんですか?」

「いや。回復薬なんかはプレイヤーから需要がめちゃくちゃあるからな。作る端から売れてくよ、法外な値段にしなけりゃ。利益は少なくてもね。

 まあ、正直、作るのは好きだけど、商売とかには興味がなくて。ゲーム内で行き詰まったりしなければ、正直どうでも良いって思ってる」


 どうやってゴブリンの牙を消費しようかと考えている時に急に話を振られたけど、まあ、なんとか答えられた。ついつい本音を言っちゃったけど。

 単純作業でも、作ったものが積み重なるのであれば問題なく楽しめる。作った数によって星の数が変わるなんて、コレクター心をくすぐる設定もあるし。でも、利益がどうの、相場がどうのってのは、あまり考えたくない。そんなのは、現実世界だけで十二分だ。ゲーム内くらい、単純に楽しみたい。


「でも、安売りしすぎると、変な奴に絡まれますよ。転売ヤーとか、勘違い君とか」

「まあ、作れる量には限りがあるし、際限なく安売りしたいわけでも、どうしても売りたいわけでもなし。そんなこと見知らぬプレイヤーから言われたら出入り禁止にするさ。

 ま、そもそも販売所を部下にお願いしてるんだけどな。街の治安も良いし、できる部下がいて助かってる。ある程度成功すると、上を目指さない限り結構なヌルゲーになるのは現実と同じかもな」

「……はあ」


 まあ、はあ以外に答えようがないよな。さて、そろそろキャンプ地だ。準備の時はもちろん、帰り道、きちんと薪を拾っているので、煮炊きには問題ない。意気揚々と行こうと思ったら、サンズに止められた。念のため、問題ないか確認するとのこと。

 気が緩むタイミングできちんと斥候としての役割を果たせる彼女はすごいな。俺だったら、つい自分で設置した鳴子に引っかかりそうだけど。


「問題なし。あっちから入りましょ」

「わーい」


 上手に鳴子を避けられるとは思えないので、開けてある入り口から戻る。設置してあるテントを見ると、なんか、帰ってきたって感じるな。

 夕食はバーベキューの予定だが、準備の前に一仕事。装備を外して動きやすい服装にする。もちろん、【料理】補正が付く布の服系である。インベントリを使った早着替えは、生産系プレイヤーの必須技能です。


「あ、ラフな格好だ」

「わざわざ持ってきたんですか?」

「鎧と違ってかさばらないし、【料理】付き。効率も味もブーストがかかるから、枠を消費するだけの価値があるよ。

 みんなは他の作業お願い」

「おっと、この戦利品の山を整理すれば良いですか?」

「あ、使えるなら使って。ちょっとは減らしたい」

「ゴブリンの牙……矢じりにできるか試してみますね。ほとんどは数を揃えて袋に入れておきます」

「どうせポイントになっちゃうんだから、入るだけ入れておけば良いんじゃない?持つ人も決めておきましょ」

「と言うか、手伝いましょうか?」

「ありがたいんだけど、調理器具が俺の分しかないから。

 あ、バーベキュー用の串に食材刺してもらえる?それか、炭起こし」

「スープの火の番もしますよ。大鍋でも、混ぜるだけですから」

「頼んだ」


 人数がいるので、切るそばから串に刺さっていく。俺の作業が追い付かないわ。ミルが木工作業してくれてて助かるくらい。手持ち無沙汰ってのはあれだし。

 スープも良い感じだし、厚めの鉄板にも熱が回ってきた。試しに脂身を乗せると、焼ける音と良い匂いがはじける。


「「「「おぉー良い感じ!」」」」


 皆の気持ちが一つになった瞬間である。

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