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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
13章素晴らしき世界
198/236

13-8

「おりゃー!」

「下がって。ギースト、壁」

「「ゴブブゥ」」

「フン」

「ごぶぅ」

「……」

「じゃまです!」


 少し呼吸が乱れたリムリラを孤立させるのを避け、広場から森へ下げる。それに合わせてゴブリンが突っ込めないように、盾で押し返した。小柄なゴブリンは軽いので、俺の力でも数匹なら吹き飛ばせる。それにしても、乱戦でリムリラに余裕がないときには、回復役のアマが指令役になるんだな。指示も的確だし。マジすげぇ女子高生どもだ。

 吹き飛んだ奴に後続がぶつかることで、広場の端に少しばかり生まれる空白。すかさず、サンズが矢を飛ばす。駆けだそうとしたゴブリンから順に倒れていく。一瞬の間。貴重な休憩時間。そこで呼吸を整える。

 端に居たので吹き飛ばしの被害をほとんど受けなかったゴブリンが、横から低く迫るも、アマのメイスで返り討ちにあって……あ、吹き飛んだ。堂に入ったゴルフスイングですな。


「“ファイヤーボール”」

「でます!」

「おうよ!」


 広場の奥に着弾した火の玉のおかげで、盾への圧力が減る。その一瞬で、呼吸を整えたリムリラが前に出た。瞬く間に誰もいない空間を作り出す。

 弱いゴブリン相手だからできる一撃必殺。と、素早い動きにより作られたキルゾーン。援護すべく、次々と薬瓶を集団の奥へと投げつける。毒や眠り薬などの薬物だけじゃなく、採れたてのしびれ蝶の鱗粉まで、デバフになるものは何でもだ。


「ゴブラァ」

「ゴバァ」

「何言ってるかわかんねぇよ!。大人しく死んどけ。大盤振る舞いだぁ」

「森からの追加、減少」

「さあ、先が見えたよ!行きます!」


 攻撃力はあっても振りが大きい斧戦士はこんな乱戦は不利だ。そうとうなプレイヤースキルがなきゃチクチクと被ダメが増えていく。リムリラよりもミルの戻りが多く、少々効率が悪い。俺も落ち着いてきたし、ひと声かけて後ろから回復薬を投げつけるか。【投擲】取ったから外さんだろ。さっきから遠投でもほとんど狙い通りの場所に行くし。

 総回復量を犠牲にしても、討伐効率が上がる方が結果的に良い。

 まあ、それに、そろそろ投げるデバフ系がなくなりそうだし。


「ミル!回復薬投げるぞ!」

「りょ!」

「ほりゃ!

 ソフィー。手持ちの魔力回復薬の在庫は?」

「“ファイヤーボール”。3つ」

「じゃあ、その袋。持ってて。20個入り。

 “ウォータブレッド”」

「助かる。“ファイヤーボール”」


 手持ちのアイテムは大半使いそうだが、問題なく倒せそうだ。





「つっかれたぁ。死ぬかと思った」

「おつかれ~。数多かったよね」

「回復薬は後1。補充できる?」

「私は魔力回復薬が終わった」

「在庫調整しよ。10個以上持っている人は出して」

「ここ置くぞ。みんなで分けてくれ。俺の分はあるから大丈夫。

 その間にドロップ回収するぞ。持ってるのはここの袋に入れておいてくれ。纏めりゃインベントリが空くだろ。

 ……あっちのは、まあ、俺がやるか」

「あ、手伝います。私、アイテム使ってないので」

「悪いな、アマ。じゃあ、この袋に入れてくれ。俺は左から拾っていくよ。

 追加が来る可能性もあるから気を付けてな」

「はい。あ、袋もういくつか良いですか?私は奥から行きます。近場は一休み組に集めてもらいましょう」

「じゃあ、俺も奥からにするか。……それにしても壮観だな」

「です……ね」


 森の中にぽっかりと空いた広場。キャンプ地からすると半分くらいのサイズでしかないが、休憩所には丁度良い。本来なら、他の場所と同じく、土が見えないほどにやわらかな草地になっているんだろうが……今は見渡す限りの白、白、白。

 ため息一つ吐いてから気を取り直し、奥へと足を進めた。ちゃりちゃりと足元から鳴るのは、ゴブリンの牙を踏む音。数を数えたら軽く100を超えているだろう。よくまあ倒せたもんだ。


「継戦能力は高いな。危機的状況にはならなかったし」

「まあ、回復アイテムが大量にありましたから。ほぼ使い切りましたし。連携については、付き合い長いですし」

「何より、リムリラとサンズの作戦が良かった。先に音で周囲のゴブリンを集めたおかげで、横からの襲撃はほとんどなかったし」

「この数に囲まれてたら負けでしたね」

「そうか?ほとんど一撃必殺だったから大丈夫じゃないか?」

「う~ん。イベント用なのか、ちょっと弱かった気がします。それに」

「それに?」

「一撃で何とかなるのはリムリラとミルだけなので、私たちは集団に囲まれたらお終いです」

「数は力、ってことか」

「ですね。あ、私はこっち側を回収しますね」

「了解。俺はこっちだな。……腰が痛くなりそうだ」

「あ、パーティーで倒した敵のドロップですから、近く行って拾いたいって思えばインベントリに入りますよ」

「……それなら、インベントリに入っている袋にも入れられそうだ。拾うのも範囲で……おっ。できるできる。自分の持ってる素材と同じ扱いなんだな」

「そうなんですよ。採取はできないですけど、便利ですよ。これ。暗い洞窟でもドロップを拾えますから」


 使い勝手がよさそうな小ネタをどうもありがとう。まあ、暗い洞窟でドロップを拾う、そんな場面俺には無いだろうけど。そう思いつつも、そんなに無駄話をしている余裕もなし。アマとは別々の方向に牙拾い。

 白い牙が目立っていたが、地面からそれがなくなれば、あとに残るは踏み荒らされた大地。薬草なんかもあったんだろうか。こんな場所には無いだろうけど、戦う時に周りの状況も考えないと、倒しました、採取失敗しましたなんてこともあるかも。

 大量デバフで戦う方針を決めたばかりだけど、採取って面では失敗したかな?どうしても戦闘時間が長くなるから、大地にあるものは得られそうにない。

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