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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
13章素晴らしき世界
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13-5

 その後も、順調に森の探索は進んだ。最初の集団戦が嘘のように、出会ったモンスターは全部単体。どれも危なげなく倒せた。弱点攻めればほぼ完封だし。ちなみに、ビックマンティスの弱点は風。大きさの割に軽いので、ちょっとの威力でもバランスを崩す。攻撃力が高い分、防御力は紙である。


「初心者も多いイベントの前半に、理不尽な強力キャラなんて配置しないでしょ。弱点あって当たり前」

「正面切って戦っても、パーティー組んでいれば問題ないレベル」

「ソロがきついのは否定できませんね」

「近接のみのパーティーでも厳しいかもね。戦闘中の状態異常ほど怖いものはないもの」

「団体推奨のイベントには、団体で参加しましょうってことですよ、師匠」


 来た道を引き返す前の休憩時間。ソロでの参加は厳しそうだと言った俺に返ってきたみんなの答えだ。攻略組や分析組なんかは、開発者の意図まで考えての状況判断を様々な場面で息をするように簡単にしているんだろうか。それとも、これが普通なのか?まあ、自分には中々にハードルが高いな。

 さて。ここからは帰り道。すでに掃討したルートだから側面やバックアタックに気を付けるべき場面だ。そのため、隊列が変更。ミル・クレープが最後尾につき、リムリラは中央。先行するサンズのほかは中央と後衛の配列となり、ちょっとずんぐりとした形のチーム編成だ。

 万が一があったら困るので、回復薬と魔力回復薬を全員に渡し、ドロップアイテムの整理なんかもしておく。袋に小分けにしてできるだけまんべんなく持てば、何があっても問題にならないだろう。

 さて。まだちょっと時間があるな。せっかくだからイベント薬草なんかを使ってしまうか。


「……師匠、休みましょうよ」

「ん?十分休んでるぞ。HPMP問題なし。

 ただ、消費したアイテムは補充したくてな」

「そうじゃなくて、ゆっくり座って体力回復です。緊張を緩めないと思わぬミスをしますよ。適度な脱力が全力を出す基本です。

 それに、そんなに簡単に回復するなんて」

「あー、そもそもみんなが強いからHPは減ってない。MPは元が多いから自然回復で充分賄えてるんだ。逆に使わないともったいなくて。だから、気にせずおしゃべりでもしててくれ」

「あ、でもそんなに時間ないですよ」

「10細刻もあれば十分だよ」


 キットを広げながらミルにそう返す。おっと、ミル・クレープだな。みんながミルって呼ぶからうつっちゃった。

 えーっとこれまでで追加配布が回復薬10の魔力回復薬20か。まずは、魔力回復薬を作るか。地面はそこまで平らじゃないから、いつもよりちょっと丁寧に作ろう。いつもは5つ同時だけど、今回は3つ。それと空いた薬瓶と魔力草があれば準備万端。

 千切って、潰して、水入れて、煮込んで、冷ましての繰り返し。慣れた上に同時並行の数がいつもより少ないから、葉脈やゴミを丁寧に取ったバージョンやより細かくしたバージョンを試すだけの余裕もある。

 さて、これで20「すごい!」


 声に驚いて正面を見ると、何故か全員集まっていた。思わず、ビクッと下がってしまう。……えーっと、ミル・クレープさん。他はまだしも、貴女は何度も見ているでしょう?


「流れるような動きでしたね。無駄がない」

「作業も丁寧」

「作っているところなんて初めて見ましたよ」

「そうか?生産系のスキル持っているなら、生産ギルドの作業所なんかで他のプレイヤーの作業なんていくらでも見られるだろ?」

「最初はわかりませんけど、今は他のプレイヤーの作っているところは見えませんよ?ぼやけエフェクトがかかるので。外で作業している人は少ないですね。簡単な作業ならまだしも、複雑なのは。

 そもそもスキルで作成だと中間作業は基本ありませんよ。手作業を配信する人とかいるので私は見たことありますけど」

「そんな配信もあったね。私は生産系スキル持ってないから見たことないわ。

 そもそも、ミルはお世話になって一緒の作業スペースなんだから見てるでしょ」

「いやぁ。自分が作業しているとじっくり見るなんてしないよね。じっくり見たのは最初振りかも。

 師匠。かなりレベルが上がってません?」

「……スキルレベルもそうだけど、器用力とかのステータスもアップしてるからなぁ。装備もだし。

 比べるとかなり違うかも」

「戦闘技能だと、同じ敵と戦えば成長が簡単にわかるんですけどね。……作業時間とか質の向上とかですかね?ちょっとわかりづらいですよね」



 外で生産活動する人は少数派か……よく考えれば当然か。室内の方が良いものできるし、持ち運べる機材の準備も面倒だ。遠征先でちょちょっとってことはあるだろうけど、大抵はスキルで素材から製品直結と。まあ、時間かかるし。

 思いついて、【錬金】で作ってみる。薬草から回復薬。生肉から焼肉。……なんで器や皿ができるんだろう。しかも、使うと消える。

 俺のスキル構成をちょっと知ってるミル・クレープは別にして、他の4名は驚いた表情。どうだ。【錬金】はすごいだろ?

 ちょっとおずおずとリムリラが問いかけてきた。


「えーっと。スキル構成って聞いても大丈夫ですか?【薬剤】と【料理】がありますよね?さっきの見てると完全に生産系メインっぽいんですけど、後衛の護衛って問題ないですか?」

「あ、そっちか。

 大丈夫。俺の生産系スキルは【錬金】だから。専門スキルほどの品質じゃないけど、レシピがあれば大抵のは作れるんだ。【料理】も【薬剤】もスキルとしては持ってないぞ。【薬剤】は技術でならあるけど」

「じゃあ、さっきは」

「そこで作っていたのは技術。これとこっちは“簡易錬金”だな。

 ……食べるか?勢いで作ったけど、捨てるのもあれだから」

「「「「「いただきます」」」」」


 美味しそうに食べてくれているのはとても嬉しいが、さっきの反応はちょっと考えてしまう。【錬金】ってまだまだ理解されていないんだろうか。レシピがあればそれなりの物が作れるんで、すごい便利なんだけど。

 レシピだって、依頼の報酬や図書館で入手する以外にも、自作を何回か繰り返して安定的な生産ができるようになればレシピになるし、運が良ければ、一発でレシピ化だってする。冒険者にとって、夢のようなスキルだと思うんだけど。

 ……少しずつ【錬金】のPRもしていこうかな。

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