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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
13章素晴らしき世界
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13-4

 茂みから飛び出す際の擦過音に、カマキリは機敏に反応した。いや、カマキリだけじゃない。蝶々もふわりと浮き、花ですら葉と花頭を音のした方へと向ける。

 それまでの野生の狩るか狩られるかなんて雰囲気はまったくなく、自然と協力しているように見えるのは何故だ?音はどうやって聞いてるんだ?納得いかん。なんて馬鹿なことを考えながらも、体だけは打ち合わせの通り動かす。牽制のためにも、ある程度近づかないと。


「ビックマンティス」

「しびれ蝶」

「眠り花だ。気をつけろ」


 カマキリがわずかに体躯を沈め、勢いをつけるために鎌を後ろに下げた。その瞬間を過たず、3人が“鑑定”を発動。ミルを狙っていたカマキリ――ビックマンティスは、斜めから来たその刺激に思わずピクリと反応し、機先を制する機会を失った。

 ミルの攻撃は、気負いの現れか少しばかり大振りで、硬直が解けたビックマンティスに躱される。逆に反撃されるところを、リムリラの追撃が打ち消した。二人に向き合ったビックマンティスの身体に、サンズが放った矢が後ろから刺さる。

 しびれ蝶に最初の一射が避けられ、飛んでいる蝶を狙う難しさから獲物を変えたサンズの一撃。放つ時だけビックマンティスに向けるが、小刻みに位置を変えながらしびれ蝶へ弓を構えて牽制しているのが戦い慣れていることを示している。

 いやはや。プレーヤーとしては見習うべきとこばかりだ。


「ファイヤーボール」

「ウォータブレット」


 自分の魔法はきちんと当たった。攻撃魔法なんて久々だ。まあ、ほとんど動かない植物相手だ。いくら経験が浅くても、ここで外す方が困る。ダメージはほとんどなさそうだが、牽制が目的だし、まあ、狙い通り。

 ソフィーの魔法でビックマンティスはが燃え上がっている。タイミングといい、威力といい、申し分ない。ビックマンティスが倒れたところを確認して、リムリラとミルがこっちへと駆け寄ってくる。まあ、しびれ蝶相手に接近戦はちょっとな。そっちはソフィーが手助けだ。蝶だからよく燃えるんじゃないか?


「お待たせ!」

「大丈夫ですか?」

「名前から言って花粉に眠り効果があるんだろうけど、攻撃を受けた時にも気を付けて。ダメージ判定時の可能性も捨てがたい」

「じゃあ、一気……にっ」


 下段に構えたリムリラの姿がブレる。一瞬でしびれ蝶の手前で伸びあがっていた。残像が見えるエフェクト付きでの一撃に、眠り花が宙に浮く。根っこから引きちぎれてませんかね?地面につく前に、ミルの斧が横薙ぎに粉砕した。

 ……おーばーきる。


「いっちょあがり♪

 あ、そっちは」

「ウォータブレット」

「あ、濡れると落ちるんだ……」


 しびれ蝶にウォータブレットが命中すると、水浸しになってボトンと落ちた。思わずソフィーも詠唱を中断してぽかんとしている。念のためリムリラがとどめに剣を刺し入れた。


「不意を付けたから結構簡単だったね」

「みんな調子大丈夫?鱗粉とか花粉とか吸ってない?」

「速攻倒したし、そんなに飛んでないよね」

「こんなところでガッツリやばいモンスターはないでしょ。常識的に考えて。

 あ、もしかしたら、水で濡らしたから飛ばなかったのかも。ほら、雨の日とか花粉少ないじゃん」

「……その可能性はあるね。蝶々は濡れたら落ちたし。

 次遭遇したら検証してみようよ」

「寄ってくる敵もいなそうだし。サンズ、ドロップがいっぱいになる前に誰かに渡してね」

「りょーかい」


 水魔術しか使えないのが逆に良かったってこと?倒しやすいのは良いけど、結構ピンポイントで狙わないと効果が少なそうだな。水でそうなら、蝶々は火がかすったら燃え上がりそうだな。風魔術の“エアーカーテン”でも防げそうだし。

 単純にダメージ量や見た目だけじゃなくて、副次効果が異なるなら、どの魔術を使い込むかってのは悩ましい選択になりそうだな。俺みたいな一択やクロみたいな全選択じゃなく、2、3の分野を使いこなす魔法使いが普通かも。

 そうか!そうなると、戦い方も変わってきそうだから、組むときによく聞いておかないと。

 ちょうど、戦いも終わって、追加もなさそうだし確認するか。


「ソフィーは魔法使いってことだけど、使うのは火魔術?威力高いよね。

 俺は水だけで、レベルもそんなに高くないから牽制くらいでしか使わないけど」

「いやいや。さっきはお手柄でした。蝶々が水に濡れて落ちたり、花粉が飛ばなかったり、水って思ったよりも使い勝手が良いのかもしれませんね。高火力でせん滅が基本だったんですけど、ドロップの質も落ちるし、ちょっと使い方見直さないとかなぁ。

 あ、私は魔法ぶっぱがやりたかったので、メインが火でサブが風。今の目標は合成ファイヤーストームです!」

「……先制攻撃で倒しきるならそれもありだね。反動と生き残りの反撃が怖いけど、パーティーなら問題ないだろうけど一対一だと連戦は厳しいかな」

「そうなんですよねぇ。でも、みんなの都合がつかないときはスキルを鍛えればいいだけですし、ソロで戦いませんからそっちは特に困ってないですよ。将来的には自衛くらいできないとあれでしょうけど。

 最近、火魔術の細かい工夫ができるようになったので、今度はサブを鍛えようと思ってます“癒しの風”なんてのもあって風も伸ばせば使えるみたいですし。まあ、当分先の話ですけど」

「ますますMP管理が厳しそうだな」

「装備もアクセもMP増加かMP回復上昇系で固めてます。早くセット装備を手に入れたいですね」

「装備って重要だよね。俺もそれは実感している。今もスキルを補助する追加効果で固めているし。

 セット装備の追加効果は魔法使い系ならわかったようなもんだしね。テツエンだっけ?商業都市に進めば売ってそうだね」

「当面は、買い集める資金作りがメインでしょうかね」

「攻略も資金貯めもバランス良くやってる君たちなら問題ないと思うよ。

 ところで……火力は?」

「正義!」


 キラキラした笑顔で即答された。大人しそうな見かけによらず、なかなかに危ない娘かもしれない。ストレスが溜まっているのかねぇ。

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