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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
13章素晴らしき世界
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13-3

 思った以上に、森の中ってのは探索しづらい。草木を両手でかき分けて進むほどじゃないが、それなりに茂る枝葉は、集中力を阻害する。何せ、他の人が動くたびに視界の隅で不自然に揺れるのだ。不意打ちされないように周囲に気を配っていればいるほど、その動きに反応してしまう。

 そもそも、慎重に索敵しようにも、味方の葉擦れの音が獣の息遣いも、物音すらかき消してしまうんだから話にならない。できることと言ったら、いつ不意打ちされても良い心構えをしておくことくらいじゃないかな。

 なんと言うか、冒険者って大変だな。

 そんな状況ではあるが、今はまだキャンプ地が木々の間に見える程度の距離しか森に入っていない。慎重に進めている?違う。目移りするんだ。あまりに色々とあるから。


「素材の宝庫ですね。ほら、ここにも魔力草が」

「でも、群生していないから時間かかる割には成果は少ないよね。手に入れた素材のうち、使えそうなのはこれくらいだもの」

「【鑑定】持ちが複数いてこれですから、奥へ探索するのが正解かもしれませんね」

「どんなものにも使い道はあるんだろうが、今使えない物も結構あるよな。採るのも視るのも有用そうなものだけにするか。時間ももったいない」

「「「……さんせー」」」


 森は素材の宝庫だ。ただ、思ったよりも、使える素材が少ない。それならば先を急ごうと、乾かすと薪になるって説明がついている細枝を目の前に掲げながら言ったら、皆が賛成してくれた。たぶん、飽きてきてたんだろうな。どこを見ても似た風景だし。

 それにしても、本当に使い道がない。足元の草なんか、毒はないから食べられなくもないが、別に美味しくもない野草だ。使い道はゼロじゃないが、調べるのももったいないくらい価値がない。……もっと【鑑定】のレベルと知識が上がったら使いようがあるのかもしれんが、そんな先のことは今はどうでも良い。

 こんな浅い所じゃレアものなんてそうそうない。それは皆の共通認識でもあったので、採取は後回しにして、探索に意識を切り替えることにした。

 動きやすいように、枝葉をかき分けるだけでなく、必要に応じて切ったり折ったり。時々止まって耳を澄まし、視線を巡らせる。もちろん、左右だけでなく、上下にも。蛇が怖いのだよ。蛇が。

 狩りじゃないから、枝を掃うのは仲間が動きやすくなるだけじゃなく、帰り道を見失わないためにも必須。この痕跡をたどればキャンプ地にたどり着ける。もちろん、木の幹にもきちんと印を忘れない。これだけしても迷いそうなのに、すいすいと先行して索敵などをする斥候職ってのは、改めてすごいと感じる。

 藪の先を調べていたサンズが音もなく木々の隙間から近寄ってくる。思わず声を上げそうになったが、胸元に挙げた両手がこちらを押しとどめる形で動いているのに気付いた。

 リムリラに耳打ちをすれば、すぐさま全員集合とゆっくりの2つのサインが。集まり次第、小声で伝えられた。


「前方、敵。複数。詳細不明」

「……見えなかったの?」

「【索敵】に反応があっただけ。音もなし。昆虫としては数が少ないから、たぶん、蛇」

「蜂とかカマキリ、蝶なんかも、少数での出現はデフォでしょ」

「トレントとかの植物系もあり得るわね」

「良いわ。行ってみましょう。前衛に私とサンズ、ミルはソフィーとアマの護衛をお願い。ギーストは後方警戒」

「魔法の準備は?」

「……数が少ないならそこまで緊急性はないと思うわ。ただ、いつでも唱え始められるように準備をお願い。イザって時用のアイテムも。

 森での戦闘も初なら敵も初遭遇。用心し過ぎってことはないわ」

「じゃあ、得意魔法の「それはダメ。火事になるもの」……はーい」

「昆虫系ならウィンドコートをお願いね」

「戦闘を見越して、固まらずに少し間を開けて行きましょう」

「まだ、こっちには気づいてないと思う。動き始めたら手を上げて警告する」

「貴女が頼りよ。よろしく」


 やっぱり、リムリラがリーダーなんだな。ただ、戦闘中とか中後衛をまとめるのは回復役のアマか。イザって時を考えるとミルかソフィーの方が良いと思うんだがな。

 簡単な方針が決まると、そろそろと皆が前方へと進んでいく。俺には前からのアタックはないと割り切り、後方や横からの襲撃を警戒する。まあ、キョロキョロしてもしょうがないし、そっちに意識を割くって程度だけど。

 正直、ソロ用のスキル構成だから、こんな状況だとやれることがない。他の遠距離攻撃も考えた方が良いかな?ウォータブレットだけじゃどうにもならない。まあ、近距離もダメなんだけど。

 時々立ち止まって、サンズが気配を確認している。レベルの関係でまだまだ正確な位置や数が判らないみたいだけど、こういった障害物がある場所での探索にはめちゃくちゃ役に立つな、【索敵】は。

 数度目の確認の後、ハンドサインでその場に待機となった。目の前のひときわ大きな木の向こうにいるようだ。茂った枝の隙間から覗くと、一匹のカマキリが。動く気配がない。その視線の先を追うと……蝶が花にとまっている。

 ……俺の目がおかしくなったのか?倍率がおかしい。


「大きくない?」

「やっぱり?大き目の犬サイズだよね、カマキリ」

「蝶々も手のひらより大きいでしょ。それに、花も」

「……だよね?たぶん、あの3体がモンスターね。サンズ、気配は合ってる?」

「距離的には」

「“鑑定”すると気づかれるからねぇ……同士討ちが始まったら行く?」

「【鑑定】持ちは、ギースト、私、ソフィーのちょうど三人ね。カマキリが動いたら合図するから、ソフィーは蝶々、ギーストは花の鑑定をお願い。私はカマキリを見るわ。

 ……そうね、モンスター名を叫んでくれれば良いわ」

「最初はカマキリ狙い。サンズとアマは蝶々、ギーストは花への牽制」

「了解。じゃあ、狙いやすい場所に動くか」 

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