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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
13章素晴らしき世界
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13-1

活動報告で次回作に関するアンケートをしています。

連載はまだ先ですが、ご協力よろしくお願いします。

 心機一転。いつもよりちょっと早く眠ったからか、朝は心地よい目覚めになった。う~ん。予定を少し繰り上げて良かったな。

 ダイブしてからちょっとだけ時間が作れたので、アイテムの補充と一部改良ができたのは望外の喜び。まあ、補充は野菜やらを減らして、持って行く食材を肉多めにしたり、“鑑定”でMP消費が激しいから魔力回復薬を余分に持ったくらいなんだが。改良だって、蓋を用意したり、木匙の形をもっと使いやすくしたり、テントの布を少し柔らかくしたりってくらいだ。そんなに時間がなかったし。

 直前になってワタワタと慌てても仕方がない。そんな気持ちでゆっくりとお茶をしていたら、塀の外から華やかな声が聞こえてきた。

 門扉から入ってきたのは、見慣れたミル・クレープを筆頭に5人。前に一度見たけれど、正直あまり印象にはない。双子がいたなぁくらいだ。

 改めて見ると、まあ、今どきの子供たちなんだろう。垢ぬけている……ってゲームだから外見弄れるけどね。だから、俺からすると、髪の長さで判断できるくらいかな。

 ポニーテールなのが弟子のミル・クレープ。長い髪を緩くまとめているのがリムリラ。装備は小盾戦士。ショートボブの双子は、レンジャーと神官。レンジャーがサンズで神官がアマ。俺には、装備でしか見分けがつきませぬ。ショートカットのソフィーは魔法使い。ローブと杖で、そこはかとなくキャラの雰囲気を出している。

 たぶん、個性……的?なチームである。


「「「「「よろしくお願いします(師匠)」」」」」

「お、ぉう。元気だな。

 こちらこそよろしく。で、お互い敬語は無しで頼む。俺も砕けた口調にするから」

「えー、でも」

「こっちは一緒の冒険をお願いしている立場だからな。そっちに敬語でしゃべられると座りが悪い。でも、俺が丁寧な口調ってのもあれだろ?ってことで、ミルもそうしてくれ」

「はーい」


 挨拶が終わるや否や、敷地に入ると見える家のサイズや畑兼前庭に驚いたかと思えば、隅にポツンと建つ武骨な作業小屋を興味深そうに眺めている。きょろきょろと周りを見ているけど、そこまで珍しいものはないと思うんだが。

 あ、そうそう。システム的に、個人所有の場合は、所有者以外には具体的な家の様子などは敷地内に入らないとわかならいようになっているんだ。今後、公開設定とかできるんじゃないかな?ほら。飾り立てて自慢したいってプレイヤーはたくさんいるだろうし。まあ、俺は面倒なのでやる予定はない。

 どちらかと言えば、自慢したいのはこっちの作業小屋である。見てお楽しみの中ではなく、実は外だ。色々と苦労した跡がある――主に家のみんなが。俺も、隙間時間でちょこっと手を出した。

 小屋周りにできている小さな畑には、やっと根付いた薬草と魔力草。隅や日陰には価値が少々劣る麻痺草や睡眠草が植えられている。大半は家の者が使うんだが、貴重な自家製素材だ。元のコストがゼロなので、色んなことに気軽に挑戦できるので重宝している。雑草は抜かれたものが山になっていて、俺が気が付けば肥料に“錬金”している。

 最近のトレンドは、干し草化である。日当たりの良い壁面には、干すためのロープや立てかける網板が設置され、今も複数の薬草が乾燥中である。まだまだ始めたばかりなので、効率の良い干し方は研究中。日干し、陰干しの他にも、抜いてすぐとか、良く洗うどころか一度熱湯をくぐらせたり、軽く揉んでみたりと思いつく限りの方法を試している。何度か試しているけど、薬草は陰干し、魔力草は日干しが品質劣化しにくいようだ。より効果が高くなる干し方があると良いんだけど。

 残念ながら、彼女らは作業小屋にはあまり興味がなさそうだ。……冷静に見ると、むさい山小屋だもんな。


「さて。それじゃパーティー申請しますね」

「ほい。承認したよ。

 あ、そうだ。ミル・クレープには言ってあったけど、持ち込みアイテムの調整はどうする?魔力薬や回復薬なんかは在庫たくさんあるよ。他の補助薬も」

「じゃあお言葉に甘えて」

「私は魔力薬を多めに」

「補助薬中心でお願いします。今後の試しも兼ねているので」

「攻撃効果がある薬ってあります?」

「じゃあ、こっちが魔力薬で、こっちが回復薬。補助薬は麻痺、混乱、笑い、睡眠。こっちはその対抗薬。で、これが光玉だな」

「薬のオールスターですね。この街で販売している全種類あるんじゃないですか?」

「師匠。これ全部効果高いやつじゃないですか。ほんとに良いんですか?」

「良いも何も、森の探索するんだろ?危険もあれば、素材も手に入る。

 かと言って、正直俺は戦いには大して役に立たん。君らが俺の生命線なんだから、ここで出し惜しみしてどうするんだよ。それに、自家製なんで、素材があれば作れる範囲だし」


 生産職の面目躍如だ。手間代を考えなければ、かかっている費用は素材代だけ。たかが知れている。

 せっかくなので、薬系だけでなく、調理器具やテント、枕や毛皮布団なども一緒にお披露目。枕は、ついさっきセバンスからの要望も反映して改良された逸品だ。こいつは自慢できる。長めの毛があるウルフ皮を外に使い、革の切れ端を三分の一入れてある。適度な硬さでやんわりと頭を支えてくれる。

 ……しかし、残念ながら。皆の興味はテントに集中してしまった。全員が一緒に入れるサイズじゃないので、俺用の小型のと、3人が余裕で入れるテントが2つ。やろうと思えば、全員でテント生活可能。交代で寝るにしても、荷物を置く場所がほしいじゃないか。ほら、予備にもなるし。


「ちょっと武骨ですね。ここ、削っていいですか?」

「あ、ならこっちは少し柔らかくしたい」

「ここは、たたむ折り目を残して、硬くしたいね」

「……できるなら構わないけど。あまり時間ないぞ。

 あ、それと、それ以上柔らかくとか、硬くする方法は悪いけど知らないんだ」

「あ、手持ちにあります。ほら、これが革用の柔軟剤と硬化剤です。レシピ要ります?」


 なんと、双子は【皮革】だけを取っていて、第2陣ながら高品質の物を作ると有名なんだとか。二人で協力すれば2倍速で試せるんでと笑っている。俺と違って分野を限っているから、第1陣に近い成果を上げているらしい。

 防具の大半は双子の作品で、弓や杖はミル・クレープ。そう考えると、冒険効率がかなり良いチームじゃないかな。サンズがコストがネックな弓を使っていられるのも、仲間がいてこそか。なんか、そういうのも良いな。

 おぉ。ちょっと目を離したすきに、ミル・クレープがテントの柱を少し調整してくれた。全体的に少し丸みを帯びてツルっとした質感になってる。ほんの少しだけど細くなっているから、軽いな。それなりの長さがあるから、微妙な差でもわかるんだな。

 テントの革も手触りが良くなっていたり、薄いけど硬くなっていたりと、微妙な差異だけど改善著しい。すごいな。

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