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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
12章 持つべきものは友?
189/236

12-14 あくまで下見

 小鳥のさえずりとともに目を覚ます。薄暗い……ああ、テントの中か。

 寝ぼけた頭を一度振って覚醒させ、身の回りの物をインベントリへと収納し、逆に装備を着ける。これだけで朝の準備は終了。身軽なら、野営も良いな。

 ちょっと重い入り口の革を持ち上げ、テントの外へ。ざっと見まわしても、鳴子の罠にも、竈にも変わったところはなさそうだ。あっ。

 何かをついばんでいた一羽の小鳥が飛び立つのが見えた。食材のカスでもあったのかな。


「うーん。良い天気だ。あ、天気と言えば雨の可能性をすっかり忘れていたな。このテント、耐水性も調べておいた方が良いかな?戻ったらセバンスにお願いするか。オフの間にチェックしてもらおう。

 朝ごはんはスープにパンで良いとして、昼間は採取とモノづくりをやってみますか」


 持ち込んだ薬草とこっちで採った薬草でどんな違いがあるのか、そもそもどんな物が採取できるのか、敵は……ソロだし、自信がないので、森の浅い所だけにしようか。

 手始めに、竈に使った石から順に“鑑定”を。そして、少しずつ周りにあるものへと広げていく。


 イベント石(中) : 片手に収まる大きさの石

 イベント薬草 : 回復薬の原料になる草

 イベント樫の木 : 樫の木


 ……イベントって頭についているだけじゃね?

 手抜きと言えば手抜きだが、わかりやすさは抜群だ。もちろん、持ち込んだアイテムは説明は同じだけど名前にイベントが付いていない。

 これなら、気兼ねなく生産活動ができる。……の前に、ちょっと気になることがあるので、検証も兼ねて色々やっておこうか。主に採取だけど。



「ふぅ。ちょっと腰に来るな。思いのほか色んな物が採れるから、ついつい張り切っちゃうな。

 これなんて、チップにして乾燥させれば燻製も作れそうだな。食事も豪華になりそうだし」


 なんとなくこわばった気がする腰を伸ばし、一息つく。もちろん、警戒は怠っていないつもりだ。まあ、浅い位置ならほとんど動物にすら襲われることはない設定なんだろう。なにせ、足跡みたいな痕跡すら見当たらないし。

 それにしても、さすがは森。植生が豊かだ。手に入ったのは、薬草や魔力草のような見慣れたものだけじゃなかった。ヨモギやドクダミなどの食べられる野草、山芋や行者ニンニクなどの山の恵み、木の実や果実など、実に様々だった。山野草には詳しくないが、たぶん、季節を無視したラインナップなんだろうな。

 木の種類も、楓や桜、椎の木や樫の木とおなじみの聞いたことがあるものばかりだった。なんと言うか、イベント用にランダムで配置してます感が強い。でも、奥の方に行ったら完全オリジナルの物が出てくるんだろうなとは思う。……なにせ、木の梢越しに、桁違いに大きな木が見えてますので。さすがに、世界樹じゃなかろうが。

 それにしても“鑑定”は大活躍です。もちろん、見た大半は所謂雑草や雑木。でも、時には毒ありが混じる。漢鑑定じゃ、いくら命があっても足りゃあしない。でもおいらは怪しげなキノコ類だって、積極的に採れますよっと♪


「もうちょっと山に詳しければよかったんだけど、俺の知識じゃ現実に即しているのかわからないなぁ。

 でもまあ、イノシシどころかウサギすらいないなんて。こりゃ、相当奥に行かないと肉類は手に入らなそうだな。次は、川でも探すか」


 今回持ち込んだ肉は残り僅か。バーベキューに気分が盛り上がりすぎた所為です。野草とキノコの鍋を作る予定だが、がっつりと肉を入れたかったのでせっかくの嬉しさも半減だ。収穫が多くて喜んだ分、こんな些細なことがガッカリ度を極端に上げている。

 せめて鳥ぐらいはとも思うが、飛び道具がない俺には無理な話。次回も、持ち込みか……他のプレイヤーなら大丈夫なのかもね。そっちに期待しようか。

 テントに戻るまで気を抜かずにって気を付けていたけれど、特に何事もなく戻ってこれた。マジで、スタート地点付近はセーフポイントなのかも。まあ、3にち目は違うのかもしれないけれど、それは後のお楽しみ。

 まずは料理用の下ごしらえとして、鍋に“クリエイトウォータ”で水をため、軽く洗った食材を入れる。お昼はシンプルに美味しそうな物だけを使おう。キノコからはエノキとシメジ。青菜は薬草と魔力草。他には山芋に行者ニンニク、持ち込んだ肉の残り。残りは網で天日干し。まだ生産活動開始まで時間がかかるから、せっかくなので、残った薬草や魔力草も干してから使おうか。

 お鍋を火にかけて、煮えるまでに間に生産の準備。とは言っても、薬剤作成キットを出して使いやすい位置を考えたり、木材や加工道具を準備したり。う~ん。やっぱり、作業小屋とは勝手が違う。だいぶ、効率が落ちそうだ。


「煮っえたっかなぁ~」


 コトコトって音と匂いで俺の胃を攻めるので、下準備を手早く終えて竈へと駆け寄ってしまった。

 木匙でかき混ぜるとふわっとキノコと肉の香りが。調味料は、ベーコンもどきに付いた塩のみだが、素材を生かした料理っぽく、おいしそうだ。ああ、木の蓋があっても良いな。その方が早く煮えそうだし、蓋を開けた時のワクワク感がたまらない。

 大き目な木匙を使って、こちらも木の器に盛り、実食。……くぅ~美味い。なんだろう、気づかなかったけど森の中が寒かったのかな?芯から温まる感がすごい。

 純粋な味は、野性味あふれるが、キノコからの出汁がすべてを包み込んでる。醤油が欲しい。味噌でもいい。

 うん。まずは大豆を探そう。


 一通り、こちらで採取した素材を使って生産活動をしてみたところ、通常となんら変わりはないことが判明。ちょっと拍子抜けだけど、まあ、当然の結果。これなら、もう一泊する必要性はなさそうだ。

 ソロで戦闘はしたくないので、予定を繰り上げてここらで戻りますかね。

 次のダイブは、純粋に楽しめそうだな。

今回はここまで。

13章も書き進めていますので、気長にお待ちください。

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