12-6 何をしようか
新しいレシピのあてはある。図書館だ。すでに、クロが書き写したレシピ集を作っているから、レシピが図書館に存在していることは確か。たぶんだが、いくつもの本に分かれているんだろう。自分なりにまとめて、自作のレシピ集を作成することは、長期的な目標だな。
今まで作った初心者回復薬などのレシピであれば、すでにいくつか書きだせるはず。それを集めてオリジナルのレシピ集を作るなら、どう作るかも考えないと。各分野毎でも良いけれど、絶対に分厚くなるな。難しさや、商品分類でも良いかも。こういう時、羊皮紙で良かったと思う。今の状況ならいくら紙が作成できてもルーズリーフレベルの質とはいかない。纏めなおしたりページを入れ替えたりするなら、丈夫な羊皮紙が好ましい。厚さはネックだが、レシピ集の全体像ができるころには紙が生産されているだろうから、清書すればいい。ま、その辺りは最終目標だ。当面は、作れるレシピを増やして、書き留めることだな。長いこと作ってなければ忘れちゃいそうだし。
まいったな。やりたいことばかり増えていく。
「まずは、図書館とギルドで【言語】と【絵】のレベルアップを兼ねて、レシピ探しかな。ただ、その後の予定もあるから、精々今週いっぱい。
隙間時間で、【錬金】と【薬剤】のレベル上げと、レシピ書き。あ、【錬金】はレシピ書けるのかな?他の生産系レシピになるんじゃないか?」
今後の予定を考えているうちに、【錬金】のレシピについての疑問がわいてきた。【錬金】上げてるプレイヤーがほとんどいないために、情報屋でも情報は持ってなかったし、あの場でステータス確認するのもなんか嫌だったので確認してなかった。
【錬金】では……レシピ書けそうにないな。選択肢が出ないや。かなり作っている初心者回復薬(小)でこれなんだから。星4つで無理なんだからダメなんだろう。【錬金】特有のならできるのかもしれないけれど、そんなのは当分先だし。
「ダイブしても【言語】のレベルが上がらないってのがセックに行く目安かなぁ。そうすれば、ギルドに有った本も問題なく読めるだろうし。回復薬を成功させたいから……念のため、薬草類は多めに用意して行こう。それと、【牧畜】のレベルも上げておきたいな。これからもあそこの家には通うだろうから、お土産でも準備しようかな。迷惑かけるし」
あの親父さんは酒好きだろうか。それとも、甘い物の方が良いのだろうか。ただ、これくらいの年代設定だと、甘い物って超高級品のはず。手に入らないだろうな。サトウキビやサトウダイコンの入手も……作り方は何となく分かっても、本物見たことないからなぁ。やっぱ、酒かなぁ。
作り方なんて知らないから、購入だな。生産ギルドで買う物リストに……あ、セバンスに聞いた方が早そうだ。よし。メモっとこう。
「作れるものを増やして、たくさん作って、売った利益を素材に変えてまた作る。生産ってのは終わりのない経済活動だなぁ。生活かかってたらこんなこと言ってられないだろうけれど、やっぱり楽しいや」
「会心作ができた時が一番ですよ」
「おぉなんだ居たのか。
たしかに、良いやつができた時は嬉しいよな」
「なんだじゃないですよ。可愛い弟子がやっと戻ってきたのに。
次作るときは、絶対にこれ以上の物を作るぞー!って思えるから楽しいんですよ。昔の自分は超えたくなりますよね?」
若いなぁ……でもわかるなぁ。その思いに突き動かされて時計の組み立てを日課にしていた頃を思い出す。以前は思い出すことも嫌だった、自らの挫折の記憶。あまり気にならなくなったのは、年を取ったからか、思い出に変わったからか。まあ、このゲームを含め、今に満足しているからかもしれないな。
自称弟子の手元を見ると、木材以外の素材がたくさんあった。ちょっと気になったので聞いてみる。
「なあ、その素材って」
「あ、これですか?せっかくなので私も他のことをやってみようと思いまして」
「【裁縫】と【皮革】……【細工】辺りもかな?」
「さすがですねぇ。その通りです」
「いや、わかりやすいだろ。積んであるのは毛皮ばかりだし、何よりも周りの道具が」
「あー!これじゃクイズにならないですね失敗しました。
【木工】がメインなので、それを補強できそうな技術をと思いまして。一番【細工】を上げたいんですが、材料の関係もあって……」
「木に細工するのが目的かぁ。でも、他のも良いと思うぞ。木製品と皮、布系は親和性高いから、ある程度一人でできると作れる範囲が広がるだろ?
それに、どれもレベル上げれば器用力が上がるから」
「でも、技術だと器用力の値ってそんなに影響ないと思いません?スキル外して違いを確認したんです。でも……」
「少しくらいじゃ変わらないかもな。でも、実際に数値が高いとミスが減るし、良いのができる。いや、できやすくなる。いい加減に作るとやっぱりダメだし。
たぶん、他のステータスもそんな感じなんじゃないかな?スキル上昇に伴って結構上がるから、影響は少なめになってるんだろう。
……そういえば、さっき、スキルを外すって」
「あ、気づきました!?
聞いてくださいよ。そうなんです。私たちが見つけたんですよ、スキルの外し方。
おかげで、結構な収入になったんです」
すごくうれしそうだ。よし。せっかくだ。手を止めて、彼女の話をじっくり聞こう。
時には、そんな師弟間交流も良いだろう。