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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
12章 持つべきものは友?
179/236

12-4 試してみた

「ここか」


 一言で表すなら、寂れた酒場。ところどころ薄汚れていて歴史……と言うよりも古さを感じさせる。まあ、ぼろい建物だな。

 出入りするのは、完全装備の見目麗しい若者達が集団で。それも、この辺りには珍しく、様々な種族や性別が入り乱れている。

 傍から見ると、めちゃくちゃ変な状況だよな。比較的安全な街中で――周辺のモンスターだって弱い――今にも戦いに行きますって格好は正直ありえない。現実なら、即お巡りさん呼ばれる案件だ。

 種族や性別なんかは言わずもがな。体格に合ってない装備を選んでいるのもちらほらいるからなおさら。建物の怪しさ以上に、利用客が怪しい。

 そこに、自分が加わると思うと、微妙な感じだ。街中で変じゃない格好してきた俺が逆に浮いているから恥ずかしい。酒場だからって砕けた感じの普段着をわざわざ用意してもらった俺がバカみたいじゃないか。


 気を取り直してドアをくぐると、冒険者ギルド併設の酒場ってイメージの空間が広がっていた。店内を見回すと、頑丈なテーブルを囲む様々な冒険者。カウンターの向こう側には、グラスを磨いているマスター。残念ながら、色とりどりの酒瓶が並んでいるようなことはなく、酒が入っているであろう樽が2つ置かれている。文化的にエールとワインだろうか。あの奥のドアは調理場へつながっているのかな?熱気がこもらないように高めになっている天井には、ところどころ傷がついている。酔ってけんか騒ぎがあったことをうかがわせる。

 これを自分で演出しているなら、まさにロールプレイだな。よく見れば古ぼけて見えるのは格好だけで、使われている木材は新しい。こうなると、外の薄汚れた感も作られたものだろう。力入っているな。


「……」

「果実水」


 カウンターの空きスペースに腰掛けるとマスターがこちらをチラ見したので、注文をしておく。ワインでも注文すべきかとも思ったけれど、情報を仕入れに来たんだからそこは我慢しよう。

 注文の仕方は須佐見に習っている。言葉と同時に金貨を2枚カウンターへ。これが情報購入の合図であり、基本料金。聞く内容によって、追加が必要となる。ちなみに、安い情報の場合は、他に聞きたいことがないか聞かれるそうな。

 なにその、成分の90%が信頼でできている感。絶対トラブルになりそう。俺なんかはそう思うが、問題なく成り立っているんだから、何らかの工夫があるんだろう。そういえば、違う情報屋なのかもしれないけれど、ある程度売れたら情報公開するグループもいるって話だ。そっちはそっちでせっかく買ったのにって問題になりそうだけどなってないみたいだし。情報屋に関するプレイヤー間のガイドラインみたいのがあるのかもな。

 まあ、俺に必要な情報は……何かあったっけ?

 スキルについては正直いらない。もう間もなく覚えられるであろう【畜産】のように、自力で習得するのが今は楽しい。それが、スキルか技術かは俺の中ではそんなに違わない。有益な組み合わせなんかも自分で探したいかな。どんなのがあるのかなんて、スキル取得画面のリストを見れば簡単にわかる。そこに掲載されていないようなのは、まだまだ情報として出てきていないだろう。

 モンスターに関することも、不要だ。ドロップアイテムも生息地情報も、戦い方や習性だって必要なら冒険者ギルドで教えてもらえるってことだし。倒し方なんて、今のところ知ってもしょうがない。たぶん、必要になるときには覚えてないからな。

 イベント的なクエストとかも、別にほしいとは思わない。自分の力で探したい……って言うと格好良いけれど、食指が動かないだけ。まずは初心者系薬を作りまくって作成数の星を揃えたい。初心者じゃない回復薬も作りたいから、そのためにもまたセックに行きたいし、今度こそ【畜産】を習得したい。ああ、図書館でレシピも調べたいな。写本を作れるように【絵】も覚えたことだし、私設図書館を作っても良いかも。そう考えると夢が広がるな。

 っとっと。またまた思考がとっちらかった。欲しい情報ねぇ。せっかくだから、レシピかな?さすがに中身は自分で調べたいけれど、全体像は知っておくべきかなって。


「レシピについて聞きたい」

「どこまで知っている?何を知りたい?」

「作り方のこと。知っている入手方法は図書館で本を読むか、教えてもらうか。こっちのレシピだと読むのに【言語】が必要。解読しても必ず成功するとは限らないってくらいかな。

 個別の中身は良い」

「この金額じゃ、中身までは教えられんさ。せいぜい、入手方法だな。

 で、正確には、レシピとは生産するときに必要になる作り方情報だな。素材や手順、注意点なども書かれていることが多い。スキルでも技術でも必要になるが、それぞれ性質が微妙に異なる」

「へぇ」

「レシピを見ただけで作れるようになるのはスキルだけだ。技術で作るには少々シビアだな。スキルだと品質は安定するが工夫の余地はない。アーツもあるから単純に作るならスキルが優秀だ。

 技術だと細かいところまで解読できなかったり、それを作るだけの腕がないと失敗もする。だが、創意工夫ができるから今までにない物や効果の高いものを作るなら技術だな。そして、習熟した行動が独自のアーツとなる。ここまでは良く知られた基本情報だ」


 ああ、やっぱり。スキルだと安定的に作れるけれど、高効果の物を作りたければやっぱり技術なんだな。そうなると、生産系はほとんど技術習得者ばかりになるんじゃないか?

 でも、失敗を考えると効率ではスキルか。アーツもあるし、高効果のレシピを手に入れて作れれば最高だな。開発は技術、大量生産はスキルって感じかな。……って技術でもアーツあったんだっけ?作るときに意識してみよう。

 基本情報の説明だけ聞いてもほほぅって思う時点で、ネット使わない派の不利と、情報獲得時のワクワクが実感できる。やっぱり、これだよこれ。この新しいことを知るワクワク感が、人間大事。


「レシピは自分で開発しても良いが、基本的なものは図書館やクエスト報酬として手に入るし、売っているものもある。誰か師について学ぶのも、クエスト報酬に分類されるな。そして、同じアイテムでも違った作り方をすれば違うレシピになる。

 自分で開発したレシピは他人に譲ることもできるぞ。作成数が500を超えるとレシピを書くことができるようになる。【言語】等を持っていなければ書かれた文字は日本語になるな。もちろん、口頭で伝えてるならこんな手間はいらないし、自力で書くならそんな制限はないぞ。

 あ、教えてもらったレシピについては、師に許可を得れば作成数が少なくても問題なく書ける」

「あの星は関係ないのか?作成レシピ一覧に必要素材と一緒に表示されてる」

「あれは作成数だな。10回成功させて星1つ、百、千、一万までは確認している」

「そうなると、5つ目は10万か」

「星も際限なく増やさないだろうから、99999辺りもあり得そうだがな。

 おっと話がズレたな。欲しいレシピがあれば言ってくれ。中には教えられる人もいるし、いくつかは紹介できる」


 紹介料はかかるようだが、ありがたいサービスだ。ここまでの情報では、まだ金貨2枚にはいかないようだ。ふむ。技術なら【薬剤】【料理】【皮革】【裁縫】【細工】【木工】【鍛冶】。【牧畜】は今後に期待かな?我ながら多いな。それに、【薬剤】を除けば、どれもレベルが高いとは言えない。スキルなら【錬金】……不遇扱いされたスキルだし、正直、他の生産系のレシピを活用するからなぁ。もっと進めば【錬金】でしか作れない物も出てくるんだろうけど。ホムンクルスとか。

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