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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
12章 持つべきものは友?
177/236

12-2 そんなのもあったよね

「おーい。昼めし一緒で良いか?」

「そこの定食屋に行こうと思ってたんだが、問題ないか?無性にあそこのチキン南蛮が食べたくなったんでな」

「近江屋か。じゃあ、今日はさば味噌定食だな」


 須佐見からの誘いに昼飯の予定を提示したところ、快諾されたので仲良く飯を食うことになった。まあ、ゲームの話をしたいんだろうな。

 案の定、席に座り注文するなり、現在の状況について情報交換することになった。攻略組でもトップクラスみたいだな。


「で、うちのクランは半分が東の森に入ってるんだ。敵はそこまで強くないみたいだけど、森の中での戦闘に苦労してるみたいだな。草原とは勝手が違う」

「見通しは悪そうだよな。あと、足元」

「そもそも葉擦れの音やらで獣が近づくのも聞こえないし、基本暗いから木漏れ日は眩しく感じるし、上からの攻撃だってあるからなぁ。

 川沿いにいるトカゲの方が見えている分楽だって言うやつがいるくらいだ」

「上。ねぇ。アーク周辺で言えば、蝙蝠がいる夜の草原を難しくした感じか。厳しいな。

 そこまでして会いたいのかね。先に進めば自然と会えるだろ?そもそも、プレイヤーにもいるじゃんか。素直に街道を行けば良いのに」

「エルフは憧れらしいぞ。

 それに、道は森を抜けて、向こうに見える山に続いているらしいんだ。道沿いには、まともな宿屋すらない小さな村しかないってんで、そっちに一縷の望みをかけたらしいんだがな」

「分の悪い賭けだ」


 アークの住人を見ていれば運営の考えはわかる。いわゆる“人”が大半だった。つまり、まだまだファンタジーな人種を出し惜しみしている。欲望を先に進ませる原動力にしたいのだろう。それなのに、近くの森にエルフの集落?会えるとしたら相当なレアイベントだろ。

 まあ、でもエルフスキーは根強いものがあるって聞いてるし、本人たちのスキルアップにはなっているようだから良いんだが。

 須佐見も彼らと同類なのかね。ちと驚き。


「まあその口ぶりだと、お前はそっちじゃないみたいだな」

「ああ。なにせ、新しいルートは東西どちらにも開けたからな。亜人種の街は遠いって噂だし、それよりもテツエンって商業都市らしいからな。どう考えたってそっちの方が良いだろ?」

「そうか?商業都市ってことは、人が多くて、店が多くて、つまりは日本における東京なわけだ。競争が激しくて大変だと思うんだが」

「その代わり、情報の量は桁が違うだろ?無我夢中だったβと違って、正規版は情報が肝になるって判断なわけだ。実際、情報屋はものすごい羽振りが良いみたいだぞ?」

「そりゃすごい」


 雰囲気を壊すからネットで情報収集はしていないが、ゲーム内の情報屋ってのには興味があるな。確か、クロ達との雑談でも聞いた気がする。

 一度寄ってみたいとは思うんだけど、正直、聞きたいことがない。攻略情報には興味がないし、モンスターやクエストの情報も特にいらないかな。レシピなんかは、図書館で調べたり、試行錯誤するのが楽しいわけで。ゲーム内の一般常識なら、セバンスに代表されるうちの使用人に聞いた方が早いし。

 そう考えていたら、須佐見は違う意見を持っているようだった。しきりに勧めてきた。


「宗谷はさ、ネットで調べるのは味気ないって言ってただろ?情報屋『オールドギース』はそんなプレイヤーの要望に応えてるぞ。雰囲気もばっちりだし。

 一度利用してみたらどうだ?」

「お前は何を言ってるんだ?話が見えないぞ?」

「だからさ。よくあるだろ?酒場に行ってカウンターでマスターに情報貰って金貨を支払うの。あれを真面目に再現しようとしてるんだよ。

 もちろん、普通の情報屋として、攻略情報の売り買いとかやってる店舗もあるんだけど、VRだからか、リアリティーを求めるプレイヤーも多いみたいでさ」

「……それはリアルなのか?」

「あっちの情報を得るのはあっちでのみってリアルを求めるプレイヤーがそれなりに多いんだ。攻略よりも異世界の楽しさを重視している層だな。今じゃ、攻略組よりもそっちが多くなりつつある。

 それを受けて、みんなが思い描く情報屋ってのをリアルに再現してるわけだ。もちろん、まともな奴らだぞ。情報の独占もしないし、情報の売り買いでしか利益を出そうとしてないから一番信用が置ける情報系クランだな」

「詳しいな」

「そりゃ、世話になってるからな。最近じゃ、門の先の情報が高く売れたな。

 買うことも多いが、トータルなら儲けさせてもらっているかな」

「お前らでも買うことがあるのか。須佐見は攻略メインだから買う情報なんてないだろ?」

「そりゃ、攻略情報なんて、売りに出てる情報の大半は知ってるさ。新しいモンスターやフィールド、ドロップアイテムの情報なんかはお手の物だ。最近はドロップ率だって計算してる。

 だてに攻略組は名乗ってないぜ」

「ドロップ率もか。やっぱり、戦ってる数が違うと持っている情報も違うな」


 ドロップアイテムをどんなモンスターがどれくらいの率で落とすか。こればっかりは、数をこなしてみないと情報として確度が低い。少なくとも、10体は倒さないと、通常ドロップとレアの区別はつかないだろう。

 現に、俺はウルフどころか、コッコのレアドロップすらわからない。以前の買取で数が少なかったからたぶん卵だとは思うんだけど、確証がない。なのに、おおよそだろうけれど、率が計算できるほどに獲得しているんだから討伐数は……数を比べる気にすらならないほどにたくさんだろう。


「戦闘パターンや攻略方法まで、ほとんどの情報が金になるから助かってる。

 回復薬から武器防具の更新。囲い込んだ生産系職人の支援も必要だから、稼ぎもでかいけど支払いも多くてなぁ」

「それにつけても金の欲しさよってか」

「世知辛いんだよねぇ。あっちもこっちも。

 まあ、ドロップ率の情報も確度が上がって買取価格がアップしたんでありがたいよ」

「へぇ……確度が上がったって、何かあったのか?」

「【解体】スキルのおかげさ」


 そう言った須佐見の表情は嘘ではなかった。でも、本当に?

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