12-1 そういやどうなった?
久々の再開となります。
いつも通り、章の最後まで毎日予約投稿。
内容も、いつも通り、のんべんだらりでございます。
「状況は落ち着いたかと。
新たなモンスターについても予想通りとのことで、特に混乱は生じていないようで」
「それはよかった。そこが一番心配だったんだ。被害は?」
「そちらについても、事前情報の通り、何もなかったとのこと。
新しくした柵に一筋の傷すら付かなかったとか。冒険者の怪我も薬で賄える程度だったそうです」
「それはよかった」
ほんと。それだけが心配だったんだ。
祝福付きのプレイヤーならまだしも、一般の冒険者に大きな被害があったら……回復は難しい。欠損どころか、大怪我ですら市販薬で治るか怪しい状況だ。人的被害をカバーするには数年かかる。死者が甦るのはゲームかおとぎ話の中だけだ。……まあ、ここはゲームなんだが。
気になっていた部分は無事解消。そうなると、気になるのはこっちへの影響かな。
新しく人を雇ったし、牧場を作ることにしたし、おかげでお金が足らなくなったし。現状の確認が必要だよな。
「それで、本題だけど、影響としてはどんな感じ?」
「はい。まず、許可をいただきましたので、シェールを馬丁として。メイドは3名、護衛等で4名雇い入れました。名前と特徴については、お手元のそちらをお読みください。
顔合わせはお話が済み次第とさせていただきます」
「これか。見ながらで良いかな?」
「もちろんでございます。報告事項はいつものように書面にもまとめますので。
メイドと護衛については、部屋に空きがありましたので住居等は当面問題ありません。業務の振り分けも済んでおります」
「まあ、足らない部分を雇い入れたんだからそりゃそうだよね。
牧場はどうなったの?」
「街道脇の村にて確保しました。現在は、手入れと拡張中ですね。馬は現在シェールの愛馬ブランだけですが、若い雌2頭、雄1頭の手配を行いました」
「馬だけ?」
「そこまで手を広げられませんので、追々ですね。拡張はそれを見越してとなります。
そして、倉庫に眠っておりました武具や装飾の一部を売却しております。そちらが一覧となります」
「……さすが。被っている在庫ばっかりだね。
一式揃っているのには手を付けなかったんだな。別に良いって言ったのに」
「ここアークは最近にぎやかになってまいりましたが、まだまだ商業都市テツエンなどとは比べ物になりません。お金持ちの数が少ないのです。
しかし、効果が低くとも、追加効果がある装備はそれなりの値段がします。いわゆる魔法武具ですから」
「つまりは、買える人が少ないってことか」
「はい。一式揃っているからこそ、購入者がおりません。それよりも、現在増えつつある祝福の冒険者に向けて販売した方が売れるかと」
その考えの正しさは、収支報告に明確に記されていた。ギルドに売るよりも倍以上の収入になっている。売れたのも、種類で言えば武器防具だけでなく、指輪などの装飾品も人気だったし、効果もてんでバラバラ。単品での購入者ばかりだったことが明確である。
一式セットだと、安いものでも万単位の値が付く。それを気軽に買える層は、それなりの装備を持っているので購入メリットも少ないのだろう。
【鷹の目】とか、【採掘】、【夜目】なんかはプラ2どころか、プラ3で統一されてるお勧めセットなんだけどな。
まあ、セット装備は、俺の収集欲に忠実な成果品でしかないし。生産系ならそれなりに要望もあるだろうがなぁ。……いや、完全装備で調合とかしたくないか。
追加効果優先で集めていて、トータルコーディネイトされていないのも問題だったかな。【長剣】がプラスされる革の盾とか、それよりも防御を何とかしろよって話だし。
「なんとか賄えたみたいだね。予定じゃどっかから借り入れとかしないとダメかと思ったんだけど」
「それは最後の手段です。自己資金で賄えるのが一番ですから。
今回は装備品の販売を直売所で行いまして。それもあって、店の客層が冒険者に染まってきました」
「今、金を持っているのは冒険者だからね。どうしても、そこをターゲットにしちゃうよね」
「おかげで、牧場などは一通りそろえることができました。牝馬2頭と牡馬1頭になりました。
しかし、できたのはそこまでです。さらなる牧場の拡張は、それこそ将来的にはとなりますね」
「セックへの行商は予想通りだね」
「はい。経費とトントンです。かろうじて、シェールの給与と馬の飼葉代でしょうか。
今更ですが、よろしかったのですか?」
赤字にはならない程度に採算度外視での運搬について、改めてセバンスが聞いてきた。こう、一覧にしてみると、景気が良いときは別にして、今の状況で道楽としてやるにはちとリスキーだったかも。
でも、おかげで得たものがある。セック住民からの好印象だ。回復薬作成に必須の魔力水は、近隣ではセックにあることしか知らない。しかも、魔力水は簡単に手に入る水ではない。採取量に制限があり、割り振られている大半は住民個人だ。一度に大量には手に入らないし、誰でも貰えるものじゃない。
だから、これからもちょくちょくセックには行くことになるし、印象を良くしておくに越したことはない。そう説明したら納得してくれた。
「まあ、人材を遊ばせておくよりはマシだしね」
「馬車がない分、運ぶのは大変でしたが」
「……ごめんなさい」
そっちは考えてませんでした。
それにしても、結果的に財産としては、金銭はほぼなくなり、日銭を稼ぎつつ支払いをこなす自転車操業的状態。ただし、黒字なので時間が経つにつれて余裕が出てくると。俺のコレクションも、余りが整理されたことで管理しやすくなり、手間が減った。雇用人数が増え、特筆すべきは自家所有の馬車と馬3頭。馬丁付き。飼うための牧場も入手。
個人的成果としては、セックに行ったのでスキル枠が1つ追加。って言っても元々全部は使ってないから良いんだが、余裕ができたのは確か。まあ、すぐに【絵】を取っちゃったんだが。それと、完成こそしなかったけれど、魔力水を使って回復薬の作成。手順とかは大丈夫っぽいので、次に行った時にはできると見込んでいる。向こうに伝手もできたし、印象も悪くないだろうし、まあ、成功と言える状態。あ、レベルもかなり上がってたな。
うん。初めての旅は大成功でした。