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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
世界は続くよどこまでも?
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11-13 帰宅

「予定では、戻られるのはもう少し先だったかと。特に、場所を用意していませんがよろしいですか?」

「荷台の皮の上ででも寝させてもらうさ。祝福の冒険者だから、一時的な場所さえあれば問題ないし」

「……そういえば、旦那様はそうでしたね。それでしたら、問題ありませんな」


 生産ギルドの受付で書庫整理の報告をしていたら、たまたまシェールが買い付けに来た。ちなみに、書庫の分類についても話したので、後日、わかるように表示するとのこと。俺が書けるなら書いてったんだけど、お手数をおかけします。

 買い付けの前に一度、乾燥薬草類を売り、ウルフやワイルドブル、グラスウルフの毛皮などの発注は済ませてあるとのこと。そうして冒険者ギルドへ薬を納品し、向こうでもある程度購入したうえで、こっちで残りを積み込みに来たところ、カウンターに俺がいたので話しかけたんだって。

 いやぁ運がよかった。

 作業結果の確認でちょっとカウンターから離れていたからすれ違ってもおかしくなかった。事実、最初に来た時には会わなかったし。だから、残った受付の人に、もし来たらって話をしておいたこともあって、無駄に時間を使わなくて済んだ。

 ちなみに、クエストの報酬は、依頼としてのお金――単純作業だけど、読んで分類って知的作業があるので、高くはないが低くもない、そこそこの額――の他、一般書庫への自由立ち入り。将来的には、重要書庫への立ち入りも視野に入ってきた。

 ……はい。素直に【言語】レベルを上げます。ついでに【絵】も。


 シェールが仕入れた商品を一部インベントリに収めることで寝るスペースを確保。これならもっとお金を持ってくるんだったと悔しがったが、それは仕方ないとあきらめてもらった。

 いっそ、今後は祝福の冒険者を乗せる場合には持ってもらった荷物によって料金割り引けば?と言ったら、これは新しい商売になりますよってにこやかにセックからの出発準備を再開した。うーん。もうすでにあると思うけどな。誰でも考え付く商売だもの。

 それはそうと、これでログアウト。睡眠の時間だ。明日の朝に再度ダイブするときにはアークの自宅かな?旅感は全くないが、これにて我が最初の旅路は終了だな……無事に帰れれば。







 そんなに何かあるわけがあるめぇ。物語の主人公じゃないんだ。

 特にセックで迷宮崩壊が始まったとの噂話も届かず、いつも通り無事にアークに着いたとさ。

 そうして、買ってきた毛皮を鞣し……ってミスった!鞣し技術を教えてもらってない!……はぁ。近々また行かないとか。引きこもって作業だけしていたいんだけどな。

 まあいい。それは崩壊騒動が終わった後だ。図書館やこっちのギルドで【言語】や【絵】のスキルを上げてからにしよう。まずは、崩壊への対応が先だ。


「てな訳で、今の状況なんだ」

「はあ。大変ですね。何かすることあります?」

「そうだなぁ。君の方は何をしてたんだい?」


 朝の出勤前、ダイブしてからずっと薬系の製作をしていた。そこそこのレベルに育った技能【薬剤】と【生産者の指】のおかげで、手作業はなかなかの効率を誇っている。そこに並行して、スキル【錬金】を使っているため、当家のメイドさん全員よりも下手したら製作できている。

 最初は無理かなとも思ったんだよ、同時使用。でも、よく考えたら、『魔法を使いながら剣を振る』ってこの手の話では当たり前じゃないかなって。なので、最初は目をつぶっていても作れるほどに習熟した初心者回復薬(中)を作りながら、失敗しても痛手が少ない肥料の作成を幾度となく試した。俺のMPは120を超えているし、座ったままだから回復速度が早い。さらに、装備は全身【錬金】付き。成功までは30細刻もかからなかった。

 おかげで、今じゃ一人2馬力状態。見る見るうちに、素材が減っていきます。

 作ったそばから、セックへと向かう馬車へ運ばれていく。うちの馬車だけでなく、乗合馬車を使った輸送もしているからな。移動する祝福の冒険者と交渉して、インベントリで運んでセックの冒険者ギルドに納品することで報酬を支払う仕組みだ。シェールに話してあったから、寝ている間にセバンスが調整し実行してくれていたらしい。こちらは採算度外視……ってほどじゃないが、利益は見ていない。経費でほぼ消えている。言うなれば、慈善事業だ。どうせ短期間だし、これによって得られるであろうセックでの評価の方がよっぽど価値がある。

 もちろん、うちの馬車の方は利益は出ているけれど、こっちで売っても向こうで売っても同じ値段だから、輸送費用の分、実質は損している。鉱石とかを運んだ方が利率は良いんだが、事態が事態だしな。向こうで仕入れてくる素材類で儲けが出ているからそれほど問題視していない。

 そろそろ作業所にある素材をほぼ使い切るってところでミル・クレープが登場。挨拶を交わした後で俺がいなかったことが話題の中心になったわけだ。


「私たちは最初は討伐依頼ばかりでしたね。少しでも早くレベルを上げて、先に進みたくて。でも、最近は街中の依頼もするようになったんですよ」

「へぇ。楽しんでるようだね」

「もちろんです。

 この間、セックに行くためのフィールドボスも倒したんですよ。ただ、消耗が激しくて一度帰ってきたんです。

 そうしたら、新しい街に行くための方法が知れ渡ったみたいで、プレイヤーがかなり少なくなってて。ほら、新しい街に行くために最近街中の依頼もみんなやってたじゃないですか。だから、急に受け手がいなくなってギルドも困ってたので」

「それは良いことだな。それじゃあ、ギルドランクも上がったんじゃないか?」

「へっへ~♪

 じ・つ・は。すでに西門の通行許可を貰ったんです。それも、生産ギルド、冒険者ギルドの両方ですよ!仲間の一人なんて、魔法ギルドからも貰ってるんですよ。すごくないですか?」

「そりゃすごい。頑張ったんだな」


 素直に驚いたし、すごいと思う。たしか、どっちもギルドランク15まで上げることが条件って言われている。たぶん、魔法ギルドでも同じだろう。それなりに、討伐やら採取やら、色々な依頼をこなしてこそ上がる。あ、そう言えば魔法ギルドの依頼って一風変わってるって聞くよな。今度行こうっと。

 それにしても、ミル・クレープたちは楽しそうだな。気が置けない仲間ってのも良いな。

 まあ、俺はソロの方があってるが。


「残っているのは、まだまだアークから出られないプレイヤーが大半ですね。たぶん、社会人とかでアクセス時間が少ないんだと思います。大変ですよね。

 ギルドランクを上げるために依頼をたくさん成功させないとですし」

「依頼を成功ねぇ……何とかなるかな?」

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