11-12 整理
【言語】や【絵】はスキルだからか結構上がっていた。特に【言語】はそれまでの6から倍増の12になったこともあり、読める文字が増え、資料の分析・分類が早くなった。つまり、作業効率が大幅上昇だ。【絵】は書かなくても、見るだけでわずかとはいえ経験が手に入るようだ。そうじゃなけりゃ、書いてもいないのにレベルが上がるはずがない。
うーん。これなら、【言語】付きの装備は売らずにとっておいて、ここをまた使わせてもらおう。【絵】の方も売っているようなら集めても良いな。うん。今回の騒動が終わったら、写本作成を目標にしてみようか。最終的には自作図鑑だな。
「もうちょっと机が大きいと良いんだがな。棚から出せる量に限度が……」
ぼやきながら、棚から一冊取り出す。机に運ぶまでの間に軽く眺めはじめ、机の前で終わりまで読み、分類に従って積んでいく。一冊が薄く、読める文字も少ないからできることだ。分けられるのは大まかでしかないが、これを繰り返すことで書庫整理とするしかない現状である。
まあ、それでも、この、無造作に突っ込まれた資料の墓場よりはよっぽどましである。
リアルで1時間、こちらで3刻費やして書庫の半分まで終わらせたら、風呂に入ろう。こうやってこまめにしているのは、集中力の低下を防ぐほかにも、スキルレベル上昇があればラッキーくらいの思惑があるんだが……どうなっているかは後でのお楽しみ。正直、確認している時間も惜しい。感覚で上がっているのはわかるけどね。
予定だと就寝前は30分ほどしかできないから、どんなに早くても明日の夕方だろうな、終わるの。明日の朝では再チェックまでは行きつかないだろうが、仕方ない。
うーん。意識が散漫になってきた。予定より早いけどログアウトして風呂に入ってくるか。気分転換だ。
さてさて。またまた【言語】のレベルが上がった。でも、【絵】の方はさっぱりだった。たぶん、見るだけだと得られる経験値はそこまで多くないってことなんだろう。この先のレベルアップには、描くことが重要になるはずだ。冒険者らしくマッピングでもしてみるか?それとも、商品リストを図にして、レストランのメニューっぽく……って俺の実力じゃ現実味がないな。でも、将来的にはそんなことを試してもいいかもね。
なんでスキルレベルの確認なんてしているのかって?時間ないのに?
お風呂に入って考えた。作業効率の大幅アップ策があるからさ。
きっかけは、本を読むのは仕方ないが、自分を含め、移動する・させる時間がもったいないって思ったことだ。どんな仕事であれ、移動時間ってのは馬鹿にならない。家庭内だって家事動線がどうとかって特集が組まれるくらいなんだから。
そこで考えたのが、インベントリを利用する方法だ。そもそも、生産作業の効率化のために以前インベントリ経由の出し入れを使っていた。座ったまま薬草を手元に持ってきたり、初心者回復薬を箱に詰めたりだ。その応用として、棚の本を手元に取り、分類分けした本を揃えて棚に並べる。本を運ぶ手間がなくなり、作業時間のほとんどを読む時間にできた。スキルレベル上昇による読書スピードの向上なんて目じゃないほどだ。
風呂前のダイブを早めに切り上げはしたものの、就寝前に確保できたリアル作業時間は1時間に満たない。しかしその短時間で、残っていた部屋半分の資料をすべて処理しても少々余ったくらいだ。
ふむ。後は並べなおさないとダメだな。作業箇所ごとに分類されてしまっている。
毎回机の上をきれいにする都合上、作業したものは必ず棚に分類して棚に並べた。つまり、最初の棚、今やった部屋の半分、その前にやった残りの棚、それぞれにおいて、分類されて並んでいる。それぞれで整理されているだけで、部屋全体で分類整理されていないのだ。これじゃ、探すのに時間がかかるし、そもそも分類されているとは認識されまい。
……よし!まだ時間はあるからやっちゃおう。
まずは、最初の棚から全部本をインベントリに引っこ抜いて、机に並べます。時間があれば、これにも全部再度目を通したいな。絶対に【言語】レベル上がるだろ。でも、がまん。
次は、各棚からモンスターの生態に関する本を全部インベントリに引っこ抜いて。入れてみたら最初の本棚がほぼ埋まったな。うん。空いているところは残しておくか。分野ごとに棚を分けよう。
次は、素材に関するもの。その中でも、モンスター素材、草木、鉱石って分けられそうな本はできるだけまとめておく。ここが、思いのほか数が多い。複数の本棚を埋めてもおつりがくる。内容的にかぶりがたくさんあり、一冊の本での網羅性も低いのが原因だな。模写するなら、抜粋して自分なりの図鑑を作り上げた方が良いな、絶対。
さらに、スキル関係。と言うよりも、技術関係かな?中心は生産についてだけど。わかる限りで、種類別に分けておく。こいつは、あとで絶対に見に来よう。絶対だ。なぜなら、今困っている回復薬の造り方っぽいのが解説付きで載っていた。肝心のところが読めないが、解読できれば間違いなく成功するはずだ。よし決めた!アークに戻ったら、できるだけ早くに時間を作って図書館に行こう。んで、【言語】のレベルを上げて再挑戦だ。……おっと、本題を忘れるところだった。
そして、今度は地理関係。これは数が少ないが折りたたまれていたりして場所をとるものだ。数は少ないが、ここでも一棚埋まる。
歴史伝承関係も忘れちゃいけない。王道的に考えれば、古代文明の遺跡や伝説の魔獣について調べる機会もあるだろう。……ま、その場合は、もっと大きな街の図書館だろうが。
最後は雑多な報告書など。多分これは写しなんだろうな。普通は報告書をこんなところにはおかないだろうし。
これで、部屋の棚にてんでバラバラに配置されていた本を整理し、書庫として活用できるようになったな。
……報告は明日の朝にしようか。いや、寝ている間にアークに移動できるのが最善だ。シェールを探しついでに終了報告をしよう。いないようなら、朝のダイブに予定を合わせてもらえるように手配しよう。
ゲーム的に考えれば、崩壊は花金である明日の夜か、土曜の朝。ぎりぎりだけど時間はある。