11-6 書庫
書庫の中は、宝の山だった。特にうれしかったのがモンスター図鑑……らしきもの。近隣のモンスターについて書かれていたんだが、なんと挿絵付き。うーん。これ欲しいなぁ。システム的に図鑑があると良いんだけど聞いたことないし、マジックアイテム的なものでもあるといいんだが。
自作しても良いんだが、問題点がいくつかある。
まずは羊皮紙だとコンパクトにはできないってことだ。紙に比べれば明らかに分厚いからな。まあ、綴じるか袋に入れるかでインベントリに収納すれば1マスで済みそうだけど。
書き写すには【言語】の恩恵があるし、スキルレベルが上がれば“模写”が覚えられるとのことだから問題は少ないが、絵がなぁ。うーん。【絵】ってスキルもあるのか。こっちも覚えてレベル上げれば、最終的に何とかなりそうだな。よし覚えてしまおう。
そうなると問題は、内容だな。他の冒険者から聞いた話や体験したこと、推測などが自動で書かれるんなら最高だけど、全部自分でとなると、めちゃくちゃ手間だぞ。初期スキルにはなかったから、あって派生か進化だろう。希望としては、【言語】と【絵】のレベルを上げていくと、【図鑑作成】のスキルが派生に表示される。そうなれば御の字だな。……でも、そうなると図鑑とかはそれなりに進んでからの特別要素扱いか?
……まあ、そうだよな。ネットが使えるプレイヤーにとってすら、まとまった情報ってのは価値が高い。こっちなら、めちゃくちゃ高価じゃないかな?手書きならなおさら。
「よし。まずは読めるだけ読んで、【言語】のレベル上げだな。レシピの一つでも解読できればうれしいな。
モンスターの情報だろ?こっちは植物、武器をまとめたものに、えーっと、メモ?料理のレシピ案かな?
本当に、雑多でまとまってないな。これなら、隣の資料庫の方がよっぽど」
「資料庫は、依頼の際に調べたいと思う利用者のための資料だけがしまってありますから。資料の数は多いですが、ほとんどは同じものですよ?3種類をそれぞれ10冊以上用意してあります。一度に大勢が調べられるようにですね。
ダメになっても良いように模写した物ですし、必要とされる情報など決まってますから管理が楽なんですよね」
「そういえば、こっちと違ってすっきりした部屋でしたね」
ちょうど書類をまとめるとかで受付の人が親切にも案内してくれたのだが、一般書庫はきれいになっている割にはダメだった。具体的には、資料分類がされていないのだ。何か調べるにしても片っ端から見ていかないと見つけられない。本当に重要なものは重要書庫にしまい、それ以外を端から棚に並べましたって感じ。時代設定を考えるに、ここの資料が理解できるレベルの人間を雇って整理するだけの意味はないのだろう。
ちなみに、一般書庫と資料庫は隣り合っているが、重要書庫はギルドマスターの部屋の奥にあって、常に施錠されているとのこと。まあ、当然だろう。
……今の俺じゃ全部は読めないが、今後【言語】のレベル上げをすることを考えると分類別にまとめておきたい。毎回毎回端から見ていくのはちょっと遠慮したいなあ。やっていいか聞いてみるか。
「ちなみに、ここって整理しても問題ありませんか?料理とかのスキル関係、モンスター関係、歴史関係とかで大まかに分けるくらいですが」
「そうしていただければ助かりますが、依頼としては出せませんよ?」
「ああ、もちろん。自分の都合でまとまっていると助かるってだけなので、その辺りは気にしないでください。
そうですね、整理のためにあの辺りの机を借りられれば」
「そちらの机はご自由にお使いください。もともと閲覧用ですから、全てを埋めなければ問題ありません。……まあ、利用者で半分も埋まることはないのでお気になさらず」
「じゃあそっちの棚から順番にさせていただきます。あ、一気には終わりませんから何回か足を運びますが」
「お帰りの際は、資料を出しっぱなしにはしないでくださいね。持ち帰りも不可です。奥へと続く扉は閉まっていますが、そこはまだギースト様は入れませんからお気になさらず。
それでも良ければお願いします」
ピコーン
『クエスト:一般書庫の整理をしよう』
おっ。なんか急にクエストって表示されたぞ。驚くなぁ。そういえば、ギルドで受ける依頼以外にもこんな感じでクエストがあったんだよな。
特に報酬はなさそうだけど、まあ、使いやすくなるってのがそもそも報酬みたいなもんだからな。それと、ギルドからの心証は良くなりそうだし。
まずは、机の上を良く拭いて、で、えーっとぉ、こっちの比較的空きがある棚の物を全部出すか。大まかに分類して、棚の段ごとに分野で分けよう。
紙が厚いから、思ったよりも数が少ないはず。
……はい。甘かった。
確かに数は少なかった。現実の本に比べると、一冊の本が、5倍ぐらい厚く、内容も乏しい。確か、現代の羊皮紙だとここまで紙との厚み差はなかったと思うんだけど。ま、まあ、発展の余地があるってことで。
それは良いんだが――いや、良くはないが、脇に置いておいて――運ぶにあたって冊数は問題にならず、考えるべきは重さと嵩だったんだ。そうだよね。厚みがあればそれなりに重いよね。
こんなことなら、体力や筋力のステータスを上げておくべきだったかと反省したりした。10もある本棚の一つを運んだだけで、心持ち腰と腕が痛いです。こんなことまで再現しなくても良くない?
今日のログイン時間にはまだまだ余裕がある。連続ログインだって問題なし。
だが、数が数なので、一旦軽く目を通してっと。
「これは薬草に関する説明……だな。読めない後半に加工方法が載ってればその時は薬剤関連に移そう。こっちは皮革だな。この道具には見覚えがある。
うーん。スキルの効果なのかな、これ」
挿絵を見ているだけで意味があるかもって考えて、念のために【絵】スキルを覚えたのだ。枠も余ってたし。ただ、描かないと意味がない可能性を考えてなかったので、今になってちと後悔している。
一応、一回も描かずにいることでレベルアップするなら、見るだけでも経験値が入るって証左になるな。
「これはメモ見たいだけど……全く読めないな。後回し枠だ。
こっちは……依頼書?受付さんに聞く枠を新設だな。これは宝の地図か?……って依頼書の一部かも」
見たらやばいのはないはずなんだが……。