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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
大冒険?
148/236

10-4 酪農

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 さっきまでの仲間に見守られながら受けた依頼は、放牧の手伝い。報酬は安いが、その分拘束時間の指定がないので自分の都合で良いらしい。お試しにはもってこいだ。

 見回りや薬作成、採取とかの冒険者らしい依頼はアークでもできる。……見回りは無理か。でも、似た感じの依頼はあるだろう。でも、牧畜系の依頼なんてここでしか受けられないから。


「なんかほっとしますね。相変わらずのプレーで」

「なんだかんだで戦闘経験は積んだけど、戦いはやっぱり性に合わないから」

「そういう意味ではないんですけどね。まあ、頑張ってください」


 シロが微妙な笑顔で見送ってくれた。

 ちょっと引っかかるけどまあいいか。別に深く考えながらゲームする質じゃない。楽しければそれでいいと思う。

 先を争って強くなることには興味がないけど、コンプリート系には目がない。もう少しプレイヤーが増えればそんな人もたくさん出てくるだろうな。

 んなことをつらつらと考えながら、指定された家の近くへと。

 いや、ほんと周りに何もない。見渡す限りの草原……いや、遠くに柵らしきものが見えるから牧草地か。うーん。あの建物は家畜小屋か?それとも、ここと同じようだから家なのか?つーか、これ本当に家?バカでかいけど。


「うん、見学だがね?

 ……おお、君はさっきの」

「あれ?さっきぶりです」

「おお。そうだの。さっきぶりだ」


 人のよさそうな笑顔を浮かべて挨拶を返してくれる。セックで最初に会った住人のおっちゃんだ。成り行きで街中まで護衛……と言うよりも話し相手をした。そういえば、牧畜やってるって言ってたな。


「もしかして、この依頼は」

「おう。俺の依頼だな。いやありがたい。

 最近、嫁さんが足を痛めてな。一人じゃ手が行き届かんで困ってたんだわ。そっちも都合があるのは理解しとるから、少しでも手伝ってくれると助かる」

「……時間は不規則になると思いますが、当分こちらで過ごすつもりなのでできる限り手伝いますよ」

「ははっ。無理せんとも良い。小遣い程度しか出せんで。

 ま、飯だけは自慢できるが。うちの嫁さんの料理は天下一品だで」

「それは楽しみです」


 簡易の製作道具があるから、素材さえあればここでもモノ作りは問題ない。素材は生産ギルドで普通に販売していたし。もしかしたら、普通の回復薬を作ることもできるかもしれん。レシピが売ってなくても、依頼をこなせば教えてもらえるかもだし。

 ここでの手伝いは隙間時間になっちゃうだろうけど。

 そんな俺に対しても、住民のおっちゃんことタルテさんは丁寧に教えてくれる。まずは、小屋の掃除から……ってでかいな。


「うちでは育ち切る前に売るから小屋も小さかろ。他ん家に比べりゃ作業は楽なもんだ。

 成獣を育てるには手が足らんで」

「これで……小さいのか。大きくても目線の高さかと」

「そりゃ、子供だってウルフを蹴散らすんだ。そんな小さいわきゃないだろ。

 頭の良い奴らだから世話は楽なんだが、きちんと育てるにゃ手が抜けん」


 こっちの牛はマジででかいんだな。そういや、シロがそんなこと言ってた気がするけど、子牛が俺よりでかいとは思わなかったぞ。

 自分たちで放牧地に行けるほど頭が良いってのも初耳だ。それなら世話なんて必要なかろうに。


「夜食べる餌と寝床の準備はしてやらんと。それと、ケアだな」

「ケア?毛づくろいとか?」

「そうだ。あいつらはきれい好きだで。野生種ともなれば、いつもきれいな湖で水浴びしとる。それに、夜食べる餌でミルクの量が決まり、手入れで質が決まるとも言われるで。手は抜けんな。

 昼間は放牧、夜は餌を食べたら順にミルクを採る。そうせんとよく眠れんのだ。成獣前だから量は知れたもんだが、味は一級品だ」

「へー」


 微妙に現実の牛と似てるんだかどうなんだかわからない設定が、また微妙。酪農の知識がある人ならわかるんだろうけど……たぶん、リアルとは違うんだろうな。

 なんでこんな設定にしているのかはわからない。イベントとかクエストとかを考えてるんだろうと推測はできるけど、正直楽しければいいんじゃないかなってのが感想。つまり、楽しく酪農体験だ。

 その後も、寝床にある麦わらなどの交換や掃除、餌の準備も教えてもらった。時間が余ったので、柵の見回り兼、手直しも少しだけお手伝い。


「それにしても広いですね」

「だから、こうやって空いた時間に順に巡るんだわ。一度に済まそうなんて無理無理。専門家にお願いでもせん限りはな。

 それにしても手際がええの」

「まあ、簡単な修理くらいは」


 なにせ、木工技術を習得してるからね。低レベルとはいえ、何も持っていないよりも数段上のはず。自前の道具も持ってきてよかった。

 それにしても、柵も壊れているってよりも腐り始めの修理ばかりだ。特に野生動物に壊されることもないってことか。


「言ったかもしれんが、この辺りのなら一対一でも子牛でも負けんよ。何せあのサイズだ。ウルフなんかは群れはするが、こっちもはぐれでもせん限り群れとるで。やつらも馬鹿じゃない。無駄な侵入なんてやらんよ。

 山の上ん方から厄介なのが降りてくるか、暴走でもない限り柵が壊されることは稀でな」

「じゃあなんで」

「これがないと、うちのが餌を求めてどこまでも行ってしまうからな。よその敷地の草を食ったら困るだろ?境界線がわりだな。

 ま、うちらにとってはウルフだって脅威なんは確かだから、それを防ぐ意味もあるが」

「そうなんですね」


 てっきり、この辺りの住人にはウルフ程度は雑魚かと思いました。ほら、町周辺のモンスターが、先に進むと強くなるじゃん。そこに生きる人はそれでも生きていけるほど強いでしょ?コッコとウサギがメインのアーク周辺に比べると、ウルフが基本のこっちは一段強いんじゃないかなってのが素直な感想だから。

 てな雑談?情報収集?をしていたら、薄暗くなってきた。特に予定があるわけじゃないけど、そろそろ一度ログアウトしないと。名残惜しいなぁ。

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