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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
大冒険?
146/236

10-2 移動

「なんか、集落って感じだな」

「こういった外部向けの施設とかはここに纏まってるんですよ。効率が良いですから」

「あの端の大きいのが生産ギルドである。その向こうは畑やらの街の土地であるから立ち入り禁止である」

「依頼でも受ければ別よ。それでも寄り道なんてできないけど」

「面白いですよね。馬車の数」


 不思議そうな顔で見まわしていたのがわかったのか、何も言わないのにリリーが同意してくれた。

 そう。宿や店、冒険者ギルドなどがある区域に近づくと、どこからともなく街道に馬車が走るようになったのだ。今ではひっきりなしである。

 一本道のはずなので、全部アークから来てると思うんだけど、ここに来るまでは影も見なかったのに。


「最初に来た時にはほとんど馬車なんてなかったんですよ。交易の邪魔になっていたフィールドボスを倒したから馬車の往来が復活したってことみたいです」

「道を馬車がいないのはそうしないとボスを倒していないプレイヤーに戦わせるタイミングがないからでしょうね」

「そこはゲームっぽいわよね」

「ハイウルフリーダーが街の冒険者に倒されなかった理由などはそれなりに納得できたんですけどね」

「確か……こっちに来る商人は、道中が安全だからランク5の冒険者を雇うのが一般的で、ウルフの群れならともかく、ハイウルフリーダーだと単体でもランク10ないと厳しいんですっけ?」

「だから、交易が滞っていたのである。領主は大量の祝福の冒険者流入問題や迷宮に注力していてそこまで手が回らなかったとのことである」

「で、『名無し』が攻略したと」

「一度倒されると、弱体化したボスになるようですね。今は、ハイウルフがボスですから。

 おかげで、ランク5の護衛を付けた行商人たちがセックまで足を延ばせるようになった訳ですね」

「へぇ~。良かったねぇ」

「まあ別にどっちでも構わんのだがの」


 急に横から声がかかった。街の住民らしい、おじさん。畑仕事の帰りではなさそうだけど、動きやすい服装だ。右手に持っているのは指示棒?家畜を放牧に行ったのかも。


「ここは商人やらは良く来るが、見てわかる通り牧畜と畑を中心とした田舎町だ。魔力水のおかげで生産ギルドが盛況だが、たかが知れとる」

「失礼ですが、ここの方ですか」

「こん村から出たこたないな。別に用もなし。うちのじさまのさらに前からそんな感じだ。

 肉もとれるし、小麦もある。水はうまいし気候も穏やか。砂糖やらが入ってこんのは困るっちゃぁ困るが、1節くらいならなんとでもなるもんだ」

「良いところですね」


 シロがにこやかに辺りを見回しながら言う。長閑な、ヨーロッパの田舎町風。行ったことはないけど、そんな感じ。刺激は少ないかもしれないけど、過ごしやすいのは確かかも。

 そんなセリフになぜか苦笑いの村人。


「とは言っても、商人が来なけりゃ作ったものが無駄になるからな。昔と違って人の往来がなけりゃ不自由だわな。

 だから、祝福の冒険者とやらには感謝してるんだよ。冒険者、様々だ」

「欲しい商品があるから商人が来るんですよ。お互い様でしょう」

「つーても、生産ギルドだって作っとるもんは大した種類はないがな。回復薬と魔力薬は売れ筋だが、そんなもんだ」

「何言ってるんですか。薬剤だけじゃなく、農業、料理、皮革や細工とかも盛んじゃないですか」

「農業っつーても牧畜だし、料理は干し肉、皮革と細工は牧畜やっとりゃ当然だろう。

 ま、褒められるのは嬉しいが」


 本当、よくある田舎町って感じだな。風景もそうだけど、人が。はにかむように笑うおじさんを見てそう思う。自分のところのPRは苦手だが、褒められればうれしい。……じいちゃんを思い出すなぁ。

 そんな雑談兼情報収集をしていたら、気が付けば集落の中心地が目の前。


「おう。着いちまったな。わりぃな付き合ってもらって。

 そこの大きいのが、手前から冒険者ギルド、商業ギルド、生産ギルドだ。帰りの護衛依頼はほとんどねぇが、雑用ならいくらでもある。やってくれると助かるな」

「いやぁ、こちらこそ、色々話を聞けて良かったです。勉強になりました。

 ちょくちょくこちらにも来るので、今後ともよろしくお願いします」

「おう。

 まあ、俺は世話してることが多いから会うこた少なかろうが、親切な冒険者は大歓迎だ。

 じゃあまたな」

「はい。お世話になりました」


 いやぁ良い感じだな。冒険とは言わんが、旅している感がすごい。ずっとアークにいたらこれは経験できなかったな。別に他の街に行かなくても十分に楽しいと思っていたけど、新しい世界に足を踏み入れるのは思ってたよりも楽しいな。

 よし。自分のペースを守りつつ、世界を旅してまわろう。でもまずは、ここ、セックだ。どんな面白いものがあるかな?

 そう考えながら、冒険者ギルドへと足を踏み入れる。なにせ、護衛依頼の完了報告をしないとね。俺は依頼者側だけど。

 入って右手がカウンター。左手の壁には依頼が貼られている。ちょっと見てみると、ウルフなど家畜の天敵討伐が目立つ。護衛は……ちょっと見当たらない。

 カウンターに向かったシロに呼ばれたので、いったん切り上げてそちらへと向かう。

 手続きは簡単だった。ただ受付の人にただ話しかけるだけで、自動的に進んでいく。


「はい。これで『名無し』の皆様の護衛依頼は完了です。こちらが報酬ですね。

 ギースト様の依頼料はすでにいただいておりますから問題ありません。帰りについてはどうされますか?追加で依頼も出せますが」

「あーっとどうしようか?考えてなかった」

「別に良いのである。どうせセックでふらふらする予定であろう?」

「あーまーそうだな。すぐ帰るって選択肢はないな」

「我らにこだわる理由もないである。というか、知人を広げる方がギースト殿のためである」


 クロに小言もらっちゃった。ま、確かに世間を広げた方が面白いだろう。プレイヤー以外に護衛を依頼してもいいかもな。

 こっちでもやりたいことがたくさんだ。生産ギルドも見たいし、何よりも牧畜風景が見たい。あ、ここの生産ギルドにしかない本もあるんだよな。


「連絡いただければ、都合のつくメンバーで護衛しても良いですし」

「定期馬車もあるわよ。一度くらい乗っても良いんじゃない?

 ソロで帰っても、今のギーストなら問題ないでしょうし」

「ん~じゃあ、そうしようか」

「では、依頼を出されるときにはお声掛けください」

「はい。ではまた」


 簡単な報告だけで終わってしまった。ま、アークに比べればこじんまりとした冒険者ギルドだから、ぱっと見、興味を引くものはないし。依頼とか面白いのもあるのかもしれないけど、それはまた時間のある時に。


「次は生産ギルドかな?」

「それも良いであるが、そろそろ時間である」

「あ、そっか。もういい時間だな」

「そうですね。では、ここでいったん解散しますか」

「そうする?じゃ、私は練習がてら狩りに行ってくるわ」

「護衛要ります?」

「出番なくて暇よ。それなら、一緒に弓やってみない?遠距離もできると幅が広がるわよ」

「幅を広げる……良いですね。

 ギーストは生産ギルドでしたっけ?じゃあ、私もご一緒して良いですか?」

「シロも生産に手を出すであるか?」

「クロも【言語】を活用してるじゃないですか。これでリリーが【弓】をやるなら、私も何か一つ、手を出しても良いかなと」

「新しいことに挑戦?冒険者らしくて良いじゃない。

 そうよ、せっかくだもの、現実ではできないことをやってみた方が良いわよ。シロは上手にまとまっちゃってるから気になってたの」

「戦いは性に合わないので消去法ですが」

「良いんじゃない?楽しいことが見つけられれば」

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