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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
いい加減街から出よう?
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9-9 ソロ活動

 正面からのとびかかりを右に避けて短剣を振るう。倒れこんだウルフに追撃の蹴り。

 後ろからの気配を左へと転がりながら躱す。まだ着地しない、無防備な腹部に向けて【水魔術】の〝ウォータボール”を飛ばし、ノックバックで距離をとる。

 転がった勢いを利用して立ち上がる。刹那、周囲の感覚を失うが、ダメージから回復しないウルフはこっちに襲い掛かってはこない。うむ。腹を狙ったのが功を奏したな。

 ふらつきながらも近寄ってくるウルフに牽制の毒薬。さすがに瓶は避けられたんだが、できた隙に〝ウォータボール”を再度叩き込むと、相手は力なく倒れた。


 ……よしっ!

 起き上がらずに光と消えるのを確認して警戒を解く。ふぅ。無傷のウルフ3匹の群れはきついな。寄せてくるところを遠距離魔法で削れなかったら押し負けていた。

 手負いのペア、ペア、手負いの3匹って順番で、段階踏んで何度か練習したからなんとかなったけど、ソロだったらマジきついわ。レベルもスキルも、PSだって初期とは比べ物にならないくらい上がってるのにこれだもの。

 こいつを幾度となく繰り返せる、それどころかもっといても大丈夫な攻略組ってのは、本当にバケモンだわ。今の俺よりも低いレベルからやってたって聞くと、耳を疑うことしかできない。

 そんな奴らが集まってもなかなか倒せなかったフィールドボスってどうよ?と思うけど、今はその当時よりもちょっと弱体化しているんだよなぁ……どっちにせよ、普通に俺じゃあ敵にもならんけど。


「だいぶ良くなったじゃない。これなら、普通にパーティーメンバーとしてでも攻略できるわよ」

「さすがに、それは、求めて、ないよ」

「まずは呼吸を整えるである。ソロでやるならこれくらいはできないと厳しいであるが、ギーストのメインは生産である。今のレベルなら十二分すぎるほどの成果である」

「薬なら、攻撃とかしながらも回復できるのが良いですね。攻撃力には欠けますが、継戦能力は高い。ソロ向きです」

「必死になって考えたからな。戦い方」


 何とか息が整った。つーか、すごいな。息が切れるのすら再現してるのかよ。

 自分が考えた、合った戦い方を褒められるのは正直嬉しい。けどなぁ。ソロって言ったって、今の状況はただのおんぶにだっこだし。


「調子に乗って3匹までやったけど、ボス相手にはそこまでは必要ないわよね」

「マジか……ってそうだよね。そんなことを言われてた」

「あ、リリー。良いわよせん滅しちゃって」


 後から後から寄ってくるウルフを上手にいなし、数を調整していたのは、『戦乙女』リリーと『廃神』ジーン。さらっとやってる感じだけど、俺じゃあ無理。つーか、敵対したら触ることすらできないと思う。

 だって、ミラが声をかけたら、次々襲い掛かってはいなされていたウルフが、光となって消えてくんだもの。その時の剣の動きさえ見えへんで。ま、ジーンはさらに別格。怖気づいたウルフの群れに飛び込んだ動き自体が見えませんでした。身体が消えたかと思ったら、ちょっと先のウルフさん達が消えました。まる。

 ゲームだからって納得できる動きじゃないが、レベルが上がるにつれて集中した際の対応力というか、反応というか、認識というかが向上するそうな。そうじゃないと、上がった能力に自分が追い付けなくて死亡しかねないとか。つーか、やばいよな、それ。


「じゃ、ドロップ整理したらボスのところに行こうか」

「〝錬金”で処理しながら行くから、毛皮系を袋にまとめてもらえると助かる」

「直前に広場があるわよ。そこでしたら?」

「移動時間がもったいなくって。さっき魔力薬も飲んだし、どうせボス戦で使わないから、消費しながら行くよ」

「では、お願いします」

「あ、これ。代わりの袋ね」


 結構な量の詰まった袋を持ってきたリリーとジーンに、手持ちの空き大袋を渡す。実はこれ、お手製です。なんとか完成したのだ。……質は悪いが、市販のよりも一つ多く入る。インベントリ内で使う分にはそれで十分。

 牙とかはどうしようかな?なんか使えるスキルアーツはあるかな?【錬金】のスキルアーツは手元が光るくらいで動きながら使える点が良いよな。他の生産系も似た感じで使えるみたいだし、そこんところは技術に比べて良いよな。作ってる感は少ないけど。

 ん?あー、【薬剤】で〝粉砕”を覚えてるな。色んなものを擂り潰したからか。でもこれ、技術だから移動しながらは使いづらく……あ、一回やれば【錬金】で覚えるかも。やってみるか。

 インベントリにある簡易薬剤セットから乳鉢と牙を一本取りだしながら、皆に声をかける。


「あ、ごめん。出発はちと待って。一個だけ試したい。すぐ済むから」

「……別にいいけど、何するの?」

「牙を粉にしたらもっと持てるかと思って」

「……こぼれるんじゃない?」

「あ、この空き瓶に入れるから」


 さすがゲーム。飲んだ空き瓶は中に水滴がなくきれいなのだ。ここに牙粉を一時避難させられれば、かなり場所が空く。余裕は作りたい。

 一本の牙を粉砕するのは、技術アーツを使うと30秒もかからない。実際にやるならもっとかかるんだろうけど……あ、ステータスが上がってるから簡単なのかな?

 で、一本だと空き瓶の1割ってところか。思ったよりも入るなぁ。でも、牙の数を考えると、こっちの市販大袋にも入れないとダメかな?自作のと違って質が高いからこぼれる心配も少ないし。あ、やっぱり【錬金】のスキルアーツ〝簡易錬金”に粉砕が出てる。

 うーん。今までも結構、薬草とか細かくはしてきたんだけど……もしかしたら、粉砕単体でやったからかなぁ。一個一個の作業じゃなくて、一連の作業が技術アーツになるのかも。

 ま、検証はほかの人に任せて、俺は俺にできる作業をするか。


 道具をかたずけ、ボスのいる場所へと向かいながら、牙を粉にする単純作業を行いましたとさ。おしまい。

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