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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
いい加減街から出よう?
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9-8 戦い

 はい。あっさりと終わりました。

 ミラが前線の二人に声をかけてわざわざ回してくれたウルフ。他からの乱入がないように見守ってくれていたんだが、それすら必要ないくらい短時間で倒せた。いや、とびかかってくるのが判ったから、タイミングを合わせて短剣を振るっただけなんだけど。

 クリティカルになったのか、澄んだ音がして、空中で一瞬硬直した後に光となって消えていくウルフ。幻想的だけど、とても見栄えがいいけど、戦闘初心者の俺には似合わんと思う。


「どうだった?」

「……あっけなかった。レベルが上がって強くなったのはわかってたけど、実感した」

「最初のうちは、結構簡単にレベルが上がるし、もともとが弱いから成長度合いがすごく感じるのよね。レベル20を超えると、装備を変えた方が影響あるけど」

「レベルが低いほど装備の重要性が増すと思うである」

「そう思うなら、きちんとした装備にしなさいよ。初期装備に毛が生えたレベルじゃないの、それ」

「クロはスキル系の成長にお金をつぎ込んでますからねぇ」

「まだこれを超えるローブはないのである」

「魔法使いっぽさ全開の怪しげローブなんて、もっと生産レベルが上がらないと出ないんじゃない?」

「いや。ネタ装備はすぐに出てきますよ。趣味ってものが一番のモチベーションですから」


 クロは、しゃべり方だけでなく、服装もロールプレイか。ま、それは大抵そうかも。その職業らしい服装のプレイヤーばかりだし。装備の制限はなかった気がするけど、ステータス的に合わない装備は不利になるだけだし、ファンタジーのイメージに合わないのはやっぱり人が買わないだろうな。現代的な装備を作るスキルもないけど。

 もうちょっと進めば手作りコス系の商品も増えるんだろうから、それ待ちのプレイヤーも多そうだ。


「もうちょっとやっとく?もう少しそれれば、この辺だと群れに会えるし」

「ボス戦だと、どんな感じ?」

「そうね。基本はパーティー人数の倍、ウルフがいるわ。経過時間とダメージで追加ね」

「ボスの遠吠えを邪魔できれば増えないんですけどね」

「それじゃもったいないでしょ。あ、ウルフの数がパーティーの半分になっても遠吠えで追加されるわね。いつも2匹と戦うって思っていれば問題ないわ」

「……同時に2匹はまだきついな」

「パーティープレイだから心配ないである。あの二人がほとんどさらっていくである」

「あら、回復と魔法でタゲられるじゃない」

「頼りにしてますよ、ミラ」


 やっぱり、敵AIは、回復と後衛の魔法でヘイトが向くようになってるんだな。そうじゃないと、遠距離回復があれば倒し放題だもんな。

 ……ボス戦かぁ。いくら守ってもらえるからって、対複数の訓練はしておいた方が良いよな。というか、せっかくだから、この機会に練習しないと。死に戻ることもないし、バックアップも万全だし。ウルフ自体はもうすでにそこまで怖くない。複数と戦うと想像しても、そこまで切迫した危機感を覚えない。自分が強くなったのもあるし、守られているって知っているからだろう。【短剣】も自分のレベルも上昇し、【回避】も覚え、回復アイテムも豊富。そう考えると、単体には負けることはない。実際、さっきから瞬殺である。これなら、3、いや2匹なら大丈夫。3匹になると、死角からのとびかかりが怖い。だから、この機会に順番に数を増やして経験できれば最高だ。だが、相手にクリティカルが出たらと考えると。

 慎重に、またウジウジと一人で考え込んでいた俺に対して、ミラがなぜだかわかったように口を開いた。


「いやよね。死ぬのも、殺すのも。今日見てるとギーストもかなり慣れてきてるけど、やっぱり合わないでしょ。私の友達にもいたわ。辞めた子もいるし、街中のお使いばっかりの子もいたわ。今なら生産ばっかりね。

 そういったプレーも良いのかもしれないけれど、できればこの世界をどっぷりと楽しんでほしいわね。私としたら」

「珍しいである。ミラがそこまで言うのは」

「まあね。だって寂しいじゃない。自分の好きなものを嫌って離れていく人を見るのは。たかがゲームではあるけど。

 でも、無理強いはしないわ。こんな感じに護衛を雇うのは住民だっておんなじよ。そういった点では、どっぷり浸かっているのかもね、ギーストも」

「ゲームだってわかってるし、死に戻りも経験してるからそこまでの忌避感はないんだよな。でも、なんていうのかな。ウルフが襲ってきて、あの、死ぬかもしれないって感じ。

 あれが、ねぇ」

「慣れるしかないである」

「それなら、無双できるだけ強くなればいいんじゃない?」

「リアルさの悪い面が出てるんですね。トラウマにならないような処理がされているはずですが」

「あれは、現実とのリンクの話である。ゲーム内の強い感情は、現実ではぼんやりとした記憶になるようにしてあると公式には書かれているである」

「VR初期に言われていた、万能感による事故とかを防ぐ処理よね。あのおかげで、ゲームだからととやかく言う人が減ったって聞くわ。でも、それなら」

「……現実ではぼんやりする分、こちらに戻るとより強い感情として認識してしまうのかもしれませんね」

「……あーまー。心配してくれるのは助かる。ありがとう。

 でもまあ、問題なさそうだから、2匹に増やしてもらえる?ほら、あっちも」


 俺が指し示した先には、こちらを気にした風にチラチラと伺いながらも、暇そうに、本当に暇そうに、襲い掛かってくるウルフの群れを片手間にせん滅する二人の背中があった。

 こちらが話し込んで足が止まっていたので、わざわざ声が届かない位置で迎撃してくれていたようだ。

 慌てて二人に合図をするミラ。

 まず最初ってことで、適度に痛めつけた2匹のウルフを俺のところへと誘い込んでくれる。


 良い友人に恵まれた。そう感じながらも、改めて寄ってくるウルフに集中する。ぼんやりしながら敵をせん滅できる技量は俺にないからな。

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