9-2 前の日
職場への往復は貴重な読書の時間。せっかく借りた本、しかもゲームに役立つかもしれない本だ。じっくり読もう。つらつらと読みながら、簡単にできそうなことには付箋をつける。
裁縫系は、基礎もよく覚えてなかったから勉強になるな。DIYは……実際にやってみないとなんともだな。読んでる限りじゃ簡単そうだけど、実際やるとなるとな。あ、簡単な仕上げの方法や削り方なんかは良いな。椅子や机の作り方も勉強になる。野草は、現実と同じ植物があればってだけかな。よく考えれば、当たり前だよな。どちらかといえば、サバイバルの本が面白い。まずは水の確保で、次は寝床か。食べれそうなものでも、万が一を考えてちょっとだけってのもわかる。まあ、それでも死ぬほどの毒物は普通にあるっぽいけど。キノコ系はアウトだな。
そして、お待ちかねの革ファッション。正直、内容はあれだな。技術的なのが書かれてないから、こんなものがあるんだレベル。手入れの仕方が勉強になるくらいか。あ、豆知識として革の歴史が載ってる。ほうほう。最初は鞣すときの液剤は唾液か。基本は洗って削って乾かして、か。現在の工程は液剤がないから無理だけど、適当にやってたのを昔ながらのやり方にしてみるのは、ちょっとやってみても良いかもな。でもまあ、それよりは【鍛冶】で木工用の道具を作ったほうが便利か。鉋は無理だとしても、のこぎりとかトンカチとか。仕上げ用の彫刻刀系もほしいけど、難しそうだな。実力が伴うまではアロにお願いしてみようか。
……調べものって、やっぱり本が良いよなぁ。確かにネットなら手軽だし簡単だけど、どうも味気ない。少数派かもしれないけれど、紙をめくってこそ調べてる気分になる。小さいけれど、守りたいこだわりだ。
月曜日は、帰宅そうそうにダイブすると、ゲーム内ではちょうどいい時間。リアルで1~2時間すると夜になるから夕飯と風呂。寝る前にちょっとだけ再ダイブ。ま、残業なしで帰ってきた場合だけど。
回復していたMPを消費するために〝簡易錬金”を繰り返す。素材を無駄にしないためにも薬草の類を中心に。皮は……どう見ても生皮じゃないよな、これ。かといって、処理してるっぽくはないし。手仕事で裏を削げば、残った肉や脂肪らしきものも取れるし、無理すれば穴が開く。洗っても見た目は変わらないけど、洗い方で品質が上下するからには意味はあるはず。
洗って削ってもう一回洗って干す。毛を抜いたのと抜かないバージョン両方でやってみる。抜いたほうはピーンって張って干せば、皮紙になった。はず。
……あれ?革鎧用の革と皮紙の違いってなんだろう?厚みかな?胸とか重要なところに厚いのを使って、可動部は薄めのやつか、紐とかで結べば良いか。……着てみると違和感しかないな。ごわごわしてるし、動きづらい。こりゃ、作り方を教わったほうが良いな。胸当てなんかなら作れると思ったんだけど。
軽く本を読んでみたくらいじゃわからんな。別にがっちり皮鞣しの説明書ってわけじゃなかったし。こりゃ、色々試してみたほうが良いな。
それにしても、鎧とかはかなり難易度が高いぞ。体を模した人形?でもないと、成形が難しそうだな。作れそうなのは革の盾とか、せいぜいが小手レベルか。ま、素人だから当然か。これがスキルなら、アーツで一発なんだろうけど。
そんなことを考えつつ生産をしていると、フレンドメールが。おっ、クロか。何々……セックへの護衛は問題ない、と。先日のお礼として護衛するから、俺からの謝礼はいらないって?まだボスを討伐していない俺と一緒だと強制的にボス戦になるんで、経験値もドロップもおいしいから……ってそんな訳にはいかんだろ。つっても、この調子じゃ受け取らないだろうし。その分、ポーション類を現物支給として渡すか。
日程は、明日、火曜の夜と。メンテナンス後だから街道も賑わうらしいけど、ボス戦になったら別空間だから問題ないと。そこに行くまではモンスターもでるけど、人が多いから逆に取り合いもあり得るそうだ。この周辺だとウルフの集団がせいぜいだから、経験値にみんな飢えてるらしい。それならウルフに拒否感がある俺でも問題なさそうだ。うーん。そろそろ次のマップが解放されないと、俺みたいなのんびり組や新規組が割を食うんじゃね?いくら現実っぽくするにしても、モンスターのポップや分布までリアルに近くしたら弱いやつが強くなるのは難しいぞ。
「旦那様。お客様です」
「ミル・クレープか?それなら入ってもらえ」
「彼女でしたら、一度顔を見せました。友人と草原の奥に行くそうです。張り切っていましたよ。戻ったら作業をしに来るとのこと。
いらっしゃったのはクロ殿です」
すごいな。まだ始めたばかりなのに、もう草原の奥に行くのか。群れのウルフが襲ってくる奥に行くのは、脱初心者の証だぞ。パーティー――いや彼女らは固定だからチームと呼ぶべきか――を組むってのは、ソロとは進み具合が全然違うんだな。だからと言って羨ましいとは思わんが。俺はやりたいようにやってるし。
それにしても何の用だろう。さっきフレンドメールくれたばかりなのに。