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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
アタックナンバーワン?
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8-17 うだうだ

 鞣したバットの翼膜。ケイブウルフとは違って裏側に脂肪がついたりしていないので処理しやすいはず。その中でも大きめの一枚を入念に柔らかく揉む。……実際に蝙蝠の羽部分からこんな感じに革として使えるかは知らん。あのサイズの蝙蝠なんてそうそう見ないだろうし、そもそもゲームだからなぁこれ。時々忘れそうになるから、ことあるごとに自分に言い聞かせてるけど。

 で、だ。財布としても、水袋としても、そこそこの大きさで丸形。なので、風呂敷みたいに一度包む形にしてみる。ちょっと端を整えればできそうだな……あ、革紐を通すために入り口のところを巻いて縫わないと。で、ここのところをちょっと切って、と。うん。これくらいの余裕がないと紐が入らないな。

 あ、縫うときに細い糸を通しておけばいいのか。端っこを革紐と結んでから引っ張れば。よし!通った。柔らかい方が使いやすいだろうからもう一度揉んで、と。うーん。この革の臭いがなぁ。水を入れると付くよなぁ。昔の人とかはどうしてたのかな。動物の胃とかも聞いたことあるけど、そっちも同じだろうから遠慮したいな。ヒョウタンとかないのかな?

 ふぅ。よし。これでOK。まずは一つ完成だ。


 バットの翼膜に飽きたら、ケイブウルフの毛皮から毛を抜いて糸にする。残った皮を“簡易錬金”で簡易なめし。できた革から丁寧に残った脂肪や肉などをそげ落として良く揉む。バットの翼膜よりも二回りは大きいのでそこそこのサイズの袋になりそうだ。

 うーん。でも、これを使っても中くらいのサイズなんだよな。2、3枚を縫い合わせるか。インベントリに入れるための袋なら、それでも問題ないだろうし。えーっと、重ねて縫い合わせるのは評判悪かったから……裏返して重ねたところを縫って、裏表ひっくり返せばっと。よし。縫い目が内側に来てるから、見た目はちゃんとした袋になってるぞ。縫い方自体も、行って戻ってを繰り返すように縫ったから、丈夫に縫えているはず。何縫いっていうかなんて覚えてないけど、小学校の頃の家庭科がすこぶる役に立った。学校の勉強ってのも、生きていく上では必要なのかもな。


 完成した袋は、サイズ的には持っている大袋とあまり変わらないが、こっちのほうが幾分小さい。縫い代の分だけ想像よりも革を取られているってことだろう。

 ケイブウルフの毛皮二枚でこの大きさになるってことは、よく使われている大袋サイズだと……牛レベルのでかさが必要かなぁ。セックに行けばいるんだっけ?あそこは酪農もやってるって話だし。楽しみだなぁ。

 こうやって一通り作ってみると、本当、手作業ってすごいよな。これだってかなり簡略化とかされてるんだろうし。現実で作ることがどれだけ大変なのかと思ってしまう。向こうではほとんど完成させられなかったし、試したのも昔だからなぁ。

 そんなことを考えながら、失敗してダメにした革を作業机の横に積む。まだまだ試行錯誤だから、失敗も多い。変に切って歪になったもの、毛を抜くときや縫うときに穴が開いたもの、揉み方を間違えてぼろぼろにしたもの。大きく分けるとその3山が、それぞれ完成品の袋以上に山になっている。

 作りも作ったり、失敗しも失敗したりというところか。【裁縫】や【皮革】、器用力UPの全身装備をしてこれだもの。低レベル、もしくは無レベルの恐ろしさよ。よくもまあ、【薬剤】がなんとかなったもんだ。

 おっ。外を見るとすでに薄暗くなっている。結構いい時間だ。現実でも、そろそろ朝食の時間だろう。そう思ったとたん、ここではないどこかで腹が鳴る音がした。

 よし。現実で飯にしようか。



 今日の朝食は、健康を考えてヨーグルトにサラダ。主食は野菜の炊き込みご飯。買ってきた根菜類に下味をつけて炊飯器にご協力いただいた一品である。うーん。やっぱり炊き込みご飯の元とかの方が手軽で旨いなぁ。出汁をもっと効かせるべきか。

 ここのところ週末はゲーム三昧。楽しいが、筋力低下が気になるお年頃である。そこで、今まで自転車で行っていたスーパーに今日は歩いて行ってみようと思っている。

 それ以外にも、料理中にちょっと踵を浮かせたり、食事の際には姿勢よく座ったりと工夫している。まあ、やらないよりはマシってだけだが。ゲームと同じく、日々の積み重ねが大事だと思わんかね、明智君。


 てなわけで、食事をしながらちょっとばかり考えごと。もちろん、今やっているVR、『冒険者達』についてだ。

 昔っからテレビや新聞でお偉いさんがゲームが悪影響とか、仮想と現実の区別がとか色々と言ってるわけで。それに対し、俺は何をばかなことをとずっと思っていた。妄想と現実と区別がつかなくなる人は以前からいたわけで。 そんなもんは、本人次第だと考えていた。

 まあ、当然だよな。ゲームに限らないから。テレビドラマにハマってとか重度の映画ファンでとかあったもの。ゲームだから悪いわけじゃない。

 しかしなぁ。このVRは本当にすごい。さすがに現実と間違うほどとは言えないが、汚れなどを再現していない分、現実よりはるかにきれいだ。これなら、現実をあてはめたくなる気もわかる。現に、『冒険者達』はある程度、現実ルールを入れ込んでいる、正確には、向こう独自のルールもあるから、あっちはあっちで一個の世界を作り上げている。

 そのうち、こっちが嘘で、あっちが本当と勘違いするやつが出るし、死ぬレベルでやり続ける人間も現れるだろうなぁ……だからバイタルチェックとかあるのか。メーカーもそこんとこは考えてるのか。

 でも、今まで以上にゲーム中は体を動かさないから、筋力の低下がマジで深刻だ。そこそこ長時間のダイブが基本になるから、体のこわばりも……あれ?そっちは気になったことなかったな。凝ってもないし、痛みもない。じゃあ、今のところ運動能力の低下だけか、問題は。

 対策も、こまめに体を動かすくらいしかないなぁ。まとまった時間を取って運動するのは……ゲームをやりたくなって無理だしな。

 まあ、家の中のことをやっときますか。


 部屋の掃除やら片づけは、土曜の空き時間であらかた済ませてあったので、すぐにやることがなくなった。作り置きのおかず関係も、昨晩やっちゃったし。でも室内でドタバタ運動したいとも、そもそも暑いのに積極的に汗をかきたいとは思わない。まだ7月に入ったばかりのはずなんだが。

 仕方ないので、メールやらなにやらのチェック。『冒険者達』に関しては調べない。そう自分に言い聞かす。

 ほとんどのことがちょっと検索すれば見つかるもんだから、詰まるとすぐに見たくなる。でも、見るとゲームがつまらなくなると感じる。だから、今は見ないようにしている。ちょっとした自分ルールだが、それはそれで面白いと思っている……のだが。

 ほかのプレイヤーとの考え方のギャップが気になってきた。面倒くさがって公式サイトやQ&Aをきちんと見ていなかったのもあれだし。そもそもMMOもそんなに経験がないから、ゲーム内のみでしか通じない常識に疎いんだよな。でも、ネットで最新情報を調べて、効率化して何が楽しいのやら。そう感じる自分は、決して攻略には向かないんだろうな。情報共有って言っても、提供する分には構わないけど、自動で情報を貰うのはネット検索と何の違いがと思ってしまうし。

 ……来てるメールは、特にないか。

 そうなると、本格的にやることがない。うーん。前の趣味は何だったかなと思うくらいだ。

 何もせずにうだうだしてると、思考も悪い方向にしかいかない。いったんリセットしよう。

 落ち着いて冷静に考えれば、俺は迷惑行為をしているわけでもないし、ほかのプレイヤーや向こうの住民と対立しているわけでもない。ただちょっと違う行動をしているだけだ。なので、現状の行動を別に大きく変える必要性もないわけで。

 なんか新しいことがあったら、問題のない範囲でグリフやクロ達に情報提供をして、情報の秘匿・独占に気を付ける。その代わり、近状を聞いて素材を買い取る。そんなところか。

 気を取り直して何かやること、あっそうだ。確か、歩いて15分くらいのところに図書館があったはず。革細工やデザインに関する本でも借りてくるか。縫物も良いな。



 図書館では入門シリーズとしてあった、縫物、DIYの本を。そして、革ファッションと野草、サバイバルに関する本を借りた。本はそこそこ重く、思いがけない良い運動になったな。そのまま買い物に出かけたのもよかった。

 しかし失敗したな。日中にしては街中にあまり人がいない気がしたが、まだ店が開く前だったとは。公共施設はちょっと早くOPENするから助かったけど、そうじゃなければ暑い最中、外で待つ羽目になったぞ。

 ただでさえ、頭の中がウダってるのに、さらに茹だってしまったら取り返しがつかない。

 まずはシャワーを浴びてすっきりしよう。そうしたらダイブの時間だ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] うーん?スキルじゃない技術としての生産は手順・工程等がほぼ現実基準になってるって認識で合ってるんですよね? ちょっと革細工と革の処理がチグハグで世界観から浮いてる。 「簡易なめし」と謳…
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