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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
アタックナンバーワン?
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8-16 楽しき生産

 やはり、物を作るときにはテンションが上がる。一番上がるのは良いものができた時だけど、作るときのテンションは特別なものがある。

 さて取り出したるは一枚の皮。バットの翼膜を【錬金】を用いた“簡易なめし”にて鞣した物。本格的な鞣しには薬剤だかなんだかが必要なはず。こっちではどうなってるか知らんけど、そこんとこはもう少し技術が向上してからペトロに聞くつもりだ。現在は、加工済みのこいつらを使って、技術のレベル上げをするとしよう。


 適当な大きさに切っ、切っ、切って……って固いわ!こりゃ、かなり揉んで柔らかくしないと使えないな。念入りに揉んで、切ったやつを重ねて、縫い合わせていきまーす。

 痛!

 固いのは観念していたけど、かなり揉んでも縫うのも一苦労だとは。指に針が刺さるととても痛い。特に、こっちの針は太いから厳しい。なんて文句を言っても始まらない。地味にダメージを受けつつ……って、なんで受けるねん。街中だとノーダメじゃあ……自爆だから?生産行為だから?まあいいや。余ってる初心者回復薬を服用しつつ作りましょう。

 よーし、できました!

 小さく、ちょっと歪だけど、丸い形の小銭入れです。これなら、形を整えて切って縫うだけだし、練習にはもってこい。実用性だってあるだろう。……まあ、もうちょっと綺麗に作らないと、買う人はいないかもしれんが。

 いくつか作ると端材がそれなりの量になる。最初の切り出しがもっと上手になれば減るんだろうけど。うーん。もう少し配置を考えれば良いのかな?

 そんなことを考えていると、片付けの手伝いに来ていたサンが声をかけてきた。


「それはいったいなんですか、旦那様?」

「ん?

 ああ、端材だよ。もったいないから何かに使えればって考えてるんだ。まだ数が出るし。でも、必要な分切り取った残りだから形もあれだし、ちょっと思いつかなくてね。

 せっかく処理したんだからそのまま捨てるのは忍びなくて」

「あ、その位の大きさでしたらまだ使えますので、そちらにまとめていただければ。

 そうではなくて、そちらの、です」

「ん?ああこれ?

 かわいいだろ」

「はあ」


 サンの返事から、あまり理解できないって思いしか確認できかなった。ふむ。これなんか単純に丸タイプの小銭入れだが、革の色味が淡くグラデーションがかかっていて、仕上げも柔らかくしたし小さくかわいいと思うんだけど。

 もちろん、縫製はまだまだだし、つーか、ただ縫ってあるだけだから。革にワンポイントの絵柄でも入れられればと思ったけど、削るにしても縫うにしても難しいのであきらめました。あ、この端材で練習すればいいか。

 そんな説明をしたら、バッサリと切られました。


「小さすぎます。数枚なら問題なく入るでしょうが、それだけ分けておく必要はあまりありませんし。

 幼子のお小遣い入れには使えなくもないですが、それなら手に握らせた方が落とす心配もありませんし」

「そんなに小さいか?小銭なんて、10枚も入ればとりあえずは大丈夫だろ?」

「……大銅貨数枚なら簡単な買い物には良いですが、下手したらお釣りが入り切りませんよ」


 ……あっ。こっちは札で買い物じゃなかったんだ。硬貨しかねぇんだわ。だから、ちょっとした買い物以外だと結構な荷物になる。インベントリを使って保管してたから忘れてたよ。

 サンに財布を見せてもらったら、縛るタイプの革袋。しかも、端から抜けたら困るので一枚革を使ってる。紐も革紐だな。あんまり繊維質の素材ってないのかな?

 そうかぁ。これが普通ならこんなサイズのは使い勝手が悪すぎるよなぁ。これの使い道は……さっきの今じゃ、ちょっと思いつかないなぁ。


「あー、そうか。んじゃあ、あまり意味がないか」

「あ、いや、そんな。あ、ほら、小さくてばらけたら困るものを入れるのはどうでしょう?」

「……革を敷いた箱か、革袋が良いんじゃないかな?」

「魔石や貴石の類を分けてしまうにはちょうど良いのではありませんかな?家の者には一目でわかるように印を考えましょう」

「あ、おじいさま」

「サン。公私の区別はつけなさい。

 申し訳ございません、旦那様」

「まあ、気にするな。そこまで堅苦しいのもどうかと思うし。

 お客様の前で見えなければ構わないよ」

「承知いたしました。

 それはそれとして、お預かりしております物の中に水玉石がございます。そちらをお貸しいただければ、使わせていただきます」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど」

「生産を主とされますからには、できる限りご自分の作品を使われた方がよろしいかと。それもあり、旦那様自作の棚などを屋敷で使っております。

 質の良い入れ物ができましたら随時交換していくことで、自らの進み具合の自覚ともなります」


 こっちでは金持ちの分類だけど、実際は小市民だからなぁ。堅苦しいのも人を従えるのもちょっと趣味ではない。まあ、こちらでの活動に支障が出るとあれだから、最低限は許容するけど、盛大にはちょっとねぇ。肩っ苦しくてだめだ。

 それにしてもセバンスは上手いなぁ。ああ言われると、挑戦したくなる。絵柄はあまりにそのものだと泥棒さんにもわかっちゃうから、図形の組み合わせかな?そこら辺はメイとも相談かな。

 でもまずは、自分の腕を上げることか。端材やらさっきの小銭入れやらを使って、模様を掘ったり縫ったりの練習だ。あ、サンにいろんな革製品を持ってきてもらうか。それを参考に作ってみよう。

 当面の目標は金入れかね。革紐を通す部分が難しそうだけど、そこさえできれば大丈夫。内側の処理をきちんとすれば、水袋にもなるし。

 さて、やってみますか。

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