表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
アタックナンバーワン?
118/236

8-10 周回と集会

 ボスのドロップアイテムは、ゴブリンの骨と錆びた剣。正直、俺の持っているレシピでは使い道がない。ただ、ウルフキラーと同じように、ゴブリンキラーがあるんじゃないかと思っている。そう考えると、一緒に参加した幻獣旅団だけじゃなく、他のチームからも貰えるのはすごく嬉しい。

 後でアロのところに持って行こう。

 いや、自分で挑戦するべきか。


「そういえば、ポイントってどこで見りゃいいんだ?」

「クリア時に出てたろ。まあ、それを見逃したなら、メニュー開けばお知らせに届いてるよ」

「あっこれかな?えーっと、132ポイント?これって」

「低いな」

「だね。もっと行くかと思ったよ」

「いや。戦闘に全く参加せず、採取系もうちら。唯一生産でこれだ。結構アイテムは持ち込んだよな?検証次第では、生産職を連れて入るのがトレンドになるかもな」


 点数が低いと思ったけど、そういや、かなりアイテムを持ち込んだよな。初めてのダンジョンアタックだから不安だったし。まあ、杞憂だったけど。

 でも、持ち運べる生産道具類を所持してるプレイヤーが現状どれだけいるかな?ん?もしかして、道具がいらない【錬金】の時代クルー!!!


「ちょっと高いけど、生産ギルドで売ってる簡易キットで十分間に合うだろ。今のスキルレベルなら」

「回復系を作れれば強いよな。材料なら嵩張らないし、中で手に入ればポイントにもなる」

「入れるなら、皮を処理できる【皮革】か【裁縫】持ちでしょ」

「レシピがあれば【錬金】最強説だけど……」


 そこでこっちを見ないでください。確かに、薬草類と違って皮系は大量に出回ると旨みがない。必需品じゃないから安くなるはずだ。それを経験値とポイントに変換できるなら、いくら失敗でゴミになろうが十分な成果になる。

 成果にはなるけど、現状だとそれができるのが俺だけなんだよな。でも、ほら。君らには教えたでしょ?ネットにでも書けば一発で増えるよ。……その後、資金と失敗で心が折れるプレイヤーが増産されそうだけど。


「ないものねだりしても仕方ないだろ。俺は検証班に状況を伝えてくる。

 その間に、アイテム処分しといてくれ」

「あいあいさー」

「って言っても、ギーストに数確認して渡すだけだけど」

「本当にいいの?こんなに」

「……後、2・3回は潜らないとダメかな。検証に付き合ってもらう分をレベルアップ手伝いと相殺してもそんなもんか」

「……情報って高いんだね」

「出回ったらお終いだから、その前の情報は必然的に高くなるんだよ。需要があればさらに跳ね上がる」

「いらない人には不要だから、なんか値段に合ってない気がするけど、全体で考えるとそうなる訳だ。素直に貰っておきなって。

 あ、あそこのテントでなら、街に運んでくれるかもよ。運搬屋がかかわってるお店だから。俺らはあっちの冒険者ギルドがやってるテントで買い物してるから」

「ありがとう。そうするよ」


 見覚えのある馬車が止まったテント。前回回復薬とか運んでくれた人達ならいいな。もしそうなら、俺の事覚えているかな?そうなりゃ、運が良ければ、荷物を運んでもらえるかも。

 そう期待して行ったら、ものの見事にそのお店でした。前回のこともあり、冒険者ギルドと協力して物品と人の運搬をしているとか。いやぁ、商売に関する鼻がよく効くこと。今回は住民には大きく宣伝されてなかったのに。向こうも俺のことを覚えていてくれたので、荷運びは無問題。家まで運んでくれるとのこと。やっぱ持つべきものは繋がりだね。

 これで気兼ねせずに周回できる。さっきの冒険からすると、特にアイテム類は必要に感じない。念のために回復薬や魔力薬を用意してもいいけど……そっちは数個で、それよりも、薬草と魔力草に瓶を用意すれば良いかな。あまり草系はダンジョン内で手に入らないみたいだから持ち込まないとダメなのがネックだけど。

 うーん。陽炎迷宮のときは結構納品されてたのに、何が違うんだろ。……まあいいや。両薬はある程度置いていくか。

 つらつらと考えながら、皆が待つテントへ。冒険者ギルドで集まったメンツで1つテントを用意してある。俺と違って荷物を置ける場所を持つプレイヤーばかりじゃないから、価値があるけど持ち込むのはちょっとってアイテムをまとめてるんだ。お互いさまとして休憩中のチームが管理している。

 今は……グローリーハンズか。魔法系スキル持ちが多めだからMP回復待ちが厳しそうだな。


「おぅ。初めてのダンジョンはどうだったい」

「前回のイベントでインスタントダンジョンに潜ったから」

「なら大して変わらんだろ。あれは難易度とかの評判がいまいちだったから今回は絞ってこうしたんじゃねぇかと言われてるだけあって、あんときの洞窟と地下迷宮によく似てらぁ」

「前はちょっと入っただけだから、違いとかわからないけどね。でも、なかなかに勉強になったよ。パーティー組んだことがなかったから」

「……そうか。組みたくなったらいつでも言ってくれ」


 なんだろう、その憐れんだ眼は。それに、口調も素になってるのか?

 別に俺はボッチじゃないぞ。ただ、ソロプレイが楽しかっただけだから。


「次は俺らと行くか?そろそろ休憩も終わりと思ってたんで」

「いや、それはまた後でで良いかい?まだ検証の途中らしいから。数回このまま中での行動を変えて結果を調べるんだって」

「そうなると、組むのはリアルで飯食った後か。ま、せっかくのイベントだ。誰かしら居らぁ。

 メッセージを送りゃいいか」

「他のチームも周回中?」

「そうだな。俺らもさっき戻ってきたばっかだ。おうそうだ。そこに積んであるんが、おめぇの取り分だ。……どうする?」

「……どうしようか」


 思わず、そう言ってしまった。前回イベントの小山よりはだいぶ小さいけど、それなりに積まれている。しかも、ほぼすべてがドロップアイテム、つまり、毛皮だの牙だのだから異様な雰囲気だ。

 まあ、まとめて運んでもらうくらいしか選択肢がないんだけど、それも面倒だな。

 えーっと、手持ちに初心者魔力薬ってどれだけあったっけっと。あ、そこそこあるな。MPも今は全快だし。錬金祭りをするか。

 装備には難があるけど、まあいいや。まだ手に入る毛皮類は使い切っちゃおう。



 ケイブウルフの毛皮は、残念ながら通常のウルフの毛皮と大差ない。ちょっとだけ質が良く、毛が長……【裁縫】では使い勝手がいいのかな?でも、そっちのレシピは知らないから、全部鞣すしかないかな。バットの翼膜もこれでいけたはず。

 牙の類は、種類毎に大袋へ入れてもらおう。骨とかも同じにして。スライム系のは……回復薬とかをゼリーにしようか。あ、ヒカリゴケは光玉にできるな。

 さくさくと素材をアイテムとゴミに変えながら、順々に小山を整理する。うーん。みんなもっと使う人のこと考えて置いてくれればいいのに。あ、そうか。板かなんかで分類を書かないと、【鑑定】持ってなきゃ無理か。じゃあ、こうしてこうで……。


「何やってんだ?」

「あ、居たんだ」

「そりゃ居らぁね。で、もしかしてそりゃ分類か?書きゃぁ確かにわかりやすい。こんな時はMP消費考えりゃあいちいち“鑑定”なんてしてらんねぇし」

「普通はどうしてるの?ギルドの納品とかあるでしょ」

「倒した時にインベントリ確認すりゃ十分だ。目的のもんが決まってりゃそれで良い。こんなときだと、まとめてカウンターだな。ちゃんと査定して買ってくれる。依頼よりは安いが、手間がかからんし。

 【鑑定】持ってりゃ、そん時使う。街中ならMP気にせんでいいだろ」

「合理的っていえば合理的だけど、利益は少なくなるよね」

「その分、戦えばいい。経験値も手に入るから、一石二鳥だろうが」

「……そう考えると、戦闘系の方が生産よりも楽そうだね」

「そりゃ、どこのゲームでも同じだろう。大抵は、生産系は稼げる、戦闘系は強くなる。んな区分けだ。

 生産でも経験値が入るだけ良いんじゃねえの?おっ戻ってきたぞ」


 どやどやと幻獣旅団の面々だけじゃなく、護り手、アイアンメイデン、流れる風と、さっきのメンツが一堂に揃う……って、みんな入ろうとするなよ。どう見たって、無理だろ。リーダー格以外は荷物を置きに来たのか。それならわかる。

 どんどんと積まれるアイテム達。あーもー。リアルならうれしいよ。俺のもたらした情報でこんだけ利益があるなら。でも、ゲームで、しかも最初期。作業ゲーがしたいわけじゃないんだが。これを使い切るにはどれだけかかるかな?

 ……いや。いらないわけじゃないけどさ。ありがたく使うけどさ。

 そんなことを考えながらも手を止めるわけにはいかない。そんな俺に、横から声がかかった。


「よくやるわね。そんなにスキルを使ってて大丈夫なのが不思議よ。

 さっきから飲んでるのは魔力薬じゃないわね?」

「クールタイムだっけ?あれがあるから、魔力薬と初心者魔力薬を使い分けてる。まだレベルが8だから、みんなよりも効果はあるし。

 それよりも、何あの量」

「言ったじゃない。ドロップアイテム2、3回分って」

「……一人の分だと思ってたよ」

「聞いた内容の一部はメンバーにも教えたもの。その分の支払いはきちんとするわよ」

「貰った分の利益があれば良いんだけど」

「十分あったわよ。なんだかんだうるさい人がいるから掲示板にもある程度の情報を上げたけど、検証として事前に技術とか確認したわ。スキル枠が少ないから困っていたけど、これである程度なんとかなるじゃない?

 そんな状況に一足早く成れたんだから、アドバンテージが十分すぎるわよ」


 その結果がこれ、とドロップアイテムの山を示された。つまりは、技術の習得やら何やらをこの短時間でしたらしい。んで、それを活用してダンジョンアタックが早く終わったんだか、アイテムがいっぱいなんだかわからんが、本人達は大満足と。……さすがは攻略組と言うべきかね。とても真似できそうもない。

 ミナは黙った俺が納得したと判断したのか、会話を切り上げるとチームメンバーとともにまたダンジョンへと潜っていった。アイアンメイデンと休憩が終わったグローリーハンズも。今度の休憩は護り手らしい。

 そろそろ幻獣旅団も戻ってくるだろう。そうしたら、また俺らも潜る。今度は俺も少しは戦いながら。


 検証って大変だね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ