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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
アタックナンバーワン?
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8-5 ばれたか

 ちょっと冷たいミナの目線の先には、苦笑いのグリフと目をそらす『鉄壁』がいた。

 積極的に声をかけたのは『鉄壁』だが、グリフはそうした彼を止めなかった。その時点で考えていることがわかっていたのだろう。親しい友人たちを巻き込むことを。

 まあ、冷たい目をしたミナですら、口元はちょっと笑ってるんだから、トラブルってことじゃないんだろうけど。


「話を聞く限り生産職なのに、十分に楽しんでる。そんな話なら、皆と一緒に聞きたいじゃないか」

「……会話がちょっと聞こえて、な。内容からグリフが前に話してた生産希望者だってのはすぐにわかった。

 でも、見た目がちゃんとしてたろ?さんざん不遇だって言われる生産系なのに。こりゃ何かある。周りに聞こえたらまずいそう思った。

 同時に、話が聞ければ嬉しいと思ったし、どうせなら、お前らも一緒の方が良いと思ったんだよ」

「そう言われると、文句も言いにくいわね」


 ここにいるチームは大なり小なり、生産を諦めた経験がある。βで、事前情報で、自らの経験で。いずこかの地点で、生産よりも戦闘に光を見出し、そちらばかりを進めていた。現在の攻略組どころか、大半の冒険者が同じ状況ではあるが。そのため、このゲームはよくあるMMOよりも生産系プレイヤーがかなり少ない状況になっている。

 それでも、心残りがあったり、攻略トップは諦めてまったりライフを楽しんだりしたい層はかなりいて、それが現在の生産ギルド人気に拍車をかけている。第二陣も大半がそんな感じだ。


「まあ、こっちが提供できる情報だけじゃ釣り合わないって思ったのも大きな理由の一つなんだが」

「それが全てでしょっ!」


 ミナのつっこみはなかなかタイミングが良い。他の面々の雰囲気からしても、チームは分かれているけど、かなり親しい付き合いなのがわかる。

 で、だ。情報取引に関してなんだが、ちょっと雲行きが怪しいなぁ。俺にとっては、ネットで調べないことで大抵の情報が価値ある情報に変わっている。よくある小技やお得、攻略情報なんて、こっちで情報収集してもそうそう手に入るもんじゃないし。そう考えると、攻略まとめってすごいな。

 反して、俺が提供できる情報はたかが知れている。特に生産系プレイヤー、なかでも初心者プレイヤーが大幅に増えた現状、すぐに知られるような情報ばかりだろう。実際、さっきの話通りならそろそろ検証ってものばかりだったみたいだし。

 う~ん。これじゃあ、俺の方が満足に情報が得られるとは限らないよな。どうしようか。

 他の情報となると……えーと、追加効果付きの装備の作り方か?でもあれは俺が勝手に教えて良いもんじゃない。あ、生産系は一つの物を作り続けても経験が入らなくなっていくけど、魔法とかは少ないけど入ってきてたみたいだな。そうじゃないと、【薬剤】と【水魔術】の上昇具合が説明できないし。スキルには数の制限があるけど、技術はないっぽい。スキルに比べるとレベルが上がりづらいとか、つーか、今なら技術関係の情報はほとんどが高価値かも。技術を覚える条件的なのは、今思いつくのは……う~ん成功させることかな?少なくとも、【薬剤】も他の生産系も覚えたのは作った後だったし。【短剣】とかは、あれだな。上手に振れたから?それで成功か?


「こうなると、こっちが提供できる情報を吟味しないとだな」

「ええ、そうね。順に、今聞いた情報の対価にふさわしいと思う情報を出していく方式はどうかしら?

 全員が十分だと思ったら、そこまで」

「ギーストさんが欲しい情報とは限らないだろう?」

「そこはそれ。先に欲しいジャンルを聞いておけば良いでしょ。その情報がなかったらパス……は無理ね。他の情報で賄いましょう」

「本人はネットで情報を集めないって言ってたが」

「だからと言って、誰もが知ってるレベルの情報に高い値段はつけられないわよ。こんなことなら、情報屋を巻き込むんだった」

「巻き込めるほど親しい奴なんているのか?いつも一人だろ」

「あれはグループやろ。いつ行ってもおる」


 後の共通点は……指導者がいたな。いや。でも待てよ。【詠唱短縮】は気が付いたらか。共通点になりそうなのは思いつかないが、取得までの時間は、指導者有りが圧倒的に早かったな。ふむ。この情報も提供すれば、勝手に検証してくれそうだな。すでにわかってるなら、それもまた良し。

 他の情報となると、『名無し』が関わってくるようなもんばかりだな。何せ、俺自身は作って作ってばっかだったし。生産ギルド設立の裏話なんて聞きたい情報じゃないだろうし、そもそも言う必要もない。そうなると、残るのは【言語】のレベルが上がると食事処のメニューが読めるとかって小ネタと覚えているレシピ位だけど、レシピなんて大半は図書館にあるし、ウルフキラーのレシピは勝手に教えるのは、

「おーい」

「ん?あ?

 あ、ごめん。聞いてなかった」

「はぁまったく。ま、その集中力が結果を生んだんかね。

 でだ。まずは、さっきの情報に対する対価を、俺たちが情報で払う。順番に言うから。欲しい情報がなければ、二周回ったところで改めて言ってくれ」

「二周って」

「それだけの価値ある情報だってことさ」

「検証がどうとか確認がどうとかって言ってたけど、すぐに知られる程度の内容だろ?」

「まだ知られてない。それがすべてだ。

 検証が終わってないところに確定情報が出れば、膨大な時間と手間が減らせる。行くべき道が見えないところで方向性が示されるだけで全然違うんだぜ」


 そう言われると、そうだけどさ。無数の枝分かれがある検証作業に、正解の道が――そのうちの一つにすぎなくても――示されれば、かなりの節約になるのは理解できる。でも、第二陣がやってきた今、俺と同じように楽しむためにプレーする奴も結構出たはず。それなら、すぐに知られる程度の情報だと思うけど。

 高評価を貰うのは情報提供を考えると嬉しいけど、なんか釈然としない。……これじゃあ、俺がふつーじゃないみたいじゃないか。俺はただ、楽しんでるだけなのに。


「まだ出せる情報があれば、言ってくれ。……値段については、悪いけどこっちがつけるよ。君じゃあ、安すぎる値段になりそうだし」

「じゃあ、そうしてもらおうかな。こっちとしても助かる」


 値段付けなんてやりたくもない。相場なんて、引き籠って薬を作ってた俺にはわかりませーん。普通なら、ぼられるのを警戒するんかもしれんが、この状況ならそれもないだろうし。別に、値段が不満なら、この部屋から出たら他の冒険者に売ったって良いわけだし。正直、欲しい情報さえもらえるなら構わない。

 勝手に知り合いを巻き込んでくれたグリフと『鉄壁』には感謝したいね。

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