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高3Labo  作者: 松田イルカ
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第一話「始まりの教室」

 人畜無害な奴だなーってつくづく思うよ。


基本的に真面目だが成績は中の下、あんまりやらないスポーツは中の下、視力はほどほどに悪いからメガネ。そんで何事にも色々と続かない性格。な?世間的に見てこんなに普通な高校生って何処にいんのよ?


高校で部活なんかやるわけないしさ、もちろん彼女だって居ないから(あ、別にブサイクってわけじゃないぞ。絶対ないぞ)割と常時欲求不満?そんで家に帰ってもゲームかテレビしかやることは無いから


誰かに「マツって休日とか何してんの?」って聞かれたら十中八九必ずこう答えるんだ「え、寝てるよ」って。な?世間の10代後半世代って大体こんな感じだろ?


まあ、中にはさ、中村クンみたいなラジコンオタクが混ざってたり、安田クンみたいなナヨナヨ星人が混ざってたり、そういう例外はあるけどさ。まあ、大体こんな感じだろ?


ーーーーーーー 


 四時間目の古典の授業はヤバい。何がヤバいって、眠い!一体何故こんなに眠くなるのだろう。あの青山って新任の教師の洒落にならないぐらい下手でつまらない授業のせいだろうか。たぶんそうだ。


喋るのが遅っせー割にはリズミカルに授業しやがるもんだからそれこそ子守唄だぜ。チクショー青山め、洋服の青山にでも行ってもう一回大学の入学式からやり直してきやがれドアホ!


あれ?今もしかして俺ギャグった?ギャグったよな?やべー面白くなってきたぞ。授業中に一人でニヤニヤしてる俺は気づいてしまった。冷たい冷たい目線に。そう、緑川の視線だ……


完全に終わった。俺は今現在を持って完全に終了した。俺はアイツを知っている。新しくこのクラスに入って二番目ぐらいにマークしてた奴だからな。知らないわけが無い。


このクラスが決まって、まず俺が一番最初にマークしたのは、その名も「目つきがサーベルタイガー谷雄大」そして次がアイツ「恋いこがれるキングコング緑川」だからな。サーベルタイガーはひとまず置いとくとして、


この緑川、どういう奴かと言うと、まず、とにかくよく喋る。そして何よりその声がウッセー。世界中の金を一挙に鳴らしまくっても、おそらくアイツの話し声をかき消すことは出来ないと俺は踏んでいる。


俺はコイツを「いずれ関西のおばちゃん界を背負って立つ女」と位置づけて神格化して崇めている。つまり「触らぬ神に祟りなし」ということである。しかしたった今、俺はこの神に手を触れてしまった。


「松田って奴居るじゃん、アイツ、授業中にニヤニヤしてた」


そんな声が聞こえてきそうだ。アイツにネタを握られたら最後、その噂は限りなく誇張され、瞬く間にクラスを駆け巡る。そのスピードは恐ろしく早い。例えるなら「流れ星」もしくは「新型ウィルス」のどっちかだ。むろん「流れ星」なんて可愛らしい呼び名をくれてやる理由も無いわけだから、


俺はこの現象をとりあえず「ウィルス」と命名していた。そしてあろうことか、とうとう俺がそのウィルスになってしまった。なんてこった。頭が文字通り頭が真っ白だ、どうにも出来ないこの状況に俺は、一瞬だけこんな退屈な授業を永遠続ける青山に怒りの矛先を向けようとした。


しかし、さすがの俺にも良心という奴が心の何処かに残っていたのか、それはお門違いだと思い直し頭を整理することにした。そして問題を解決に導く答えは見つからないまま、俺の思考は完全に停止した。


 


ーーーーーーーーーーーー




 「キーンコーンカーンコーン」思考停止状態から間もなく冬眠状態に入っていた俺は鐘の音で目をさました。さあ、ここからが勝負だ。にっくきキングコングめ、さあどう出る。俺は逃げも隠れもしねーぞ!


ひとりでに妄想と挑発を繰り返しながら、俺は何ともない顔で机上に村上春樹「1Q84」というの文庫本を出し、(もちろん、文字なんて読んじゃいない。目線は常に緑川だ)決して悟られないように相手の出方ををうかがった。


すると、いつもなら教室で大音量スピーカーみたいに喋りまくる緑川は、友達のカナちゃんとユウキちゃんを連れて足早に教室を出て行ってしまった。まさか…そうか、トイレか、なるほどな。なにせトイレは女が他人の悪口を言う絶交の場だもんな。


ほら、ドラマでさ、OL達がトイレで悪口行ってて、本人個室で聞いちゃってますよーっみたいな、よくある奴だ。このやろー、この期に及んでOLドラマのまねごとなんざ始めやがってコノ猿が…


_______


 緑川事件の後、予想通り俺はクラスの女どもから陰険な眼差しで嫌悪されることになるのだが、それがまさかあんな展開になるとは、コノ頃の俺はまだ思ってもみなかった。


             続く


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