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才色兼備な変態さんシリーズ

才色兼備な変態さんと新年会

作者: 矢枝真稀

 新年最初の投稿です。

 1月に入り、2度目の日曜日の昼前のことである。正月の三が日を平穏無事に過ごした俺(相沢由希)にとって、今年は何事もなく穏やかな年になるだろうなと思った矢先に届いた一通の葉書はがき……。

 差出人の名前は【綾館美雪】。俺の彼女の名が記されていた時点で、今年の穏やかな日は終わりを迎えたのだと悟った―――


「拝啓 親愛なるわが夫、相沢由希様―――」


 リビングにてテーブルに放っておいた葉書を音読し始めたのは、我が家にて色々と【最強】の暴君である妹の相沢凛。

 ってか、一行目から俺の立場が脚色されている……


「――つきましては、第2週目の日曜日に、我が家にて新年会を執り行いますので、昼ごろに迎えに行きます」


 新年会って……しかも参加・不参加の有無すら問われてない一方的な強制参加らしい。加えて迎えに来るって……ん?


「な、なぁ凛?」

「何」

「今日って日曜だよな……?」

「第二日曜日」

「…………」


 うおぃ!まさかの当日かよ!!しかも何!?もう正午まで30分もねぇしっ!!


ピーンポーン!がちゃっ!!


「ユキユキユキいぃーっ!!」

「チャイムと行動が矛盾してる!!」


 颯爽と現れた俺の彼女、綾館美雪はいつもこんな感じで我が家にやってくる。ツリ目で細身、一見すればクールビューティなこの彼女は、口を開けば下ネタ三昧のかしましい一つ年上の先輩でもある。もっとも、下ネタを口にするのは俺の前でだけ……らしいが。

 いや、そんなことより―――


「つか早い!葉書を知ったのは今だしなんの準備も出来てねぇし参加するつもりもねぇし参加するとしてもその新年会とやらに着ていくもの(衣服)もねぇしいやそれより着物!???」

「まぁ落ち着けユキ。まず新年会の葉書だが、郵便受けに朝5時ごろに私が直接投函し、新年会に準備は何の必要もない。参加についてはこの可愛らしく気立ての良い私のことだから返事なんて【YES】しかないだろうし、着物姿なのは、この格好で迫れば「ユキもきっと欲情しますわ!」という姉さまの―――」

「もういい!ストォーーップ!!」


 俺の矢継ぎ早の質問は、彼女の自分勝手な妄想+彼女の姉であるリリナさんの余計な入れ知恵という答えになって返ってきた。

 妄想もここまでくれば何かしらの賞を獲れるんじゃないかと思うが、これ以上口を開くと彼女(呼称は美雪さん)が下ネタを行動に移しかねないので強制終了させていただくとしよう。


 たくさんツッコミ所のある会話と葉書の内容は、まぁ少しの間だけ置いておくとして、先ずは真っ先に伝えておかなければいけないことがある。


「美雪さん、改めまして、明けましておめでとうございます。高校では一緒に居られる時間も少なくなってきたけど、今年も……これからもよろしく!」


 年末・正月は美雪さんも色々と忙しかったらしく、デートすらろくに出来なかった。最後に会ったのはクリスマスの12月25日だったから、かれこれ3週間ほど、会っていなかった。新年の挨拶はメールのやり取りだけで、電話越しに会話をすることもなかったから、こうして会話をすること自体が、ずいぶんと久しく感じられた。

 だから新年の挨拶を踏まえたうえで、俺は今年も、そしてこれからもよろしくと口にする。


 こんな美雪さんだから付き合う前と今も、俺は振り回されっぱなし。それでも付き合い始めて3ヶ月……未だに突拍子のない内容や行動に頭を抱えることが多い日もあるけど―――


「……うむ!今年も……そしてこれからもよろしくな、ユキ。 私は過去も現在も、そして未来も……相沢由希を愛し続けるぞっ!!」


 裏のない、ただ真っ直ぐに俺を見つめ続ける瞳を、裏切る気なんてさらさら無い。だからこれまでも、これからも、頭を抱える日々なんてのは、楽しかった思い出の一つに変わっていくのだろうと思う。

 それくらい、俺は綾館美雪という人物に“惚れている”のだから。


「……バカップル」


 傍観者と化した凛がボソっと一言。なら彼氏くらい作れよ……なんて口に出そうものなら、包丁の1本や2本くらい飛んできそうなので、心の中にしまっておいた。







 惚れた弱み……なんてのは、自分には関係のない言葉なんだろうな。なんて思っていた付き合う以前の俺よ……いざその立場になったらその言葉の意味を悟ることになるぞ。

 というわけで、俺は身支度もそこそこに綾館家(もはやお屋敷)へ。


 実質3度目の訪問となる綾館家は、同じような建物が立ち並ぶ住宅街の中で一際異彩を放つ純和風様式の日本家屋で、我が家の敷地の4倍ほどの広さを有する、よく時代劇や大河ドラマの撮影に使われているような、文字通り【お屋敷】である。

 いやはや、何度来ても建物を見ただけで圧倒されてしまう(来たのはまだ3度目だが)。

 そんな豪壮な門をくぐり、美雪さんは「私はこっちだから」と別行動になり部屋へと案内される途中、これまた見事な日本庭園が。一切の落ち葉無く、手入れも見事に行き届いた庭に目を奪われていると「こちらでございます」と俺を促す声……。なんというか、まぁ―――


「は、はひっ!」


 黒いスーツにオールバックの髪型。表情(というか視線)を隠すようなサングラスからは、額から左目の斜め下までザックリと傷が……。

 いや、そりゃ声も上擦るでしょ!だって、だってこれってかこの人、完全に【そっち系】の人じゃん!?


「あ、相沢様!い、如何なされましたんでっ!?」

「な、なんでもないんですぅ!!」

「何を怯えているんですかっ!?し、刺客とか!??」


 い、言えない……!俺が怯えている理由が「貴方の顔が怖い!」なんて口が裂けても言えない!!しかも【刺客】って何??!だれか助けてぇっ!!!!


「あら、如何なさいましたかユキ?」

「っ!?り、リリナさぁーーん!!」


 覚えのある声、明らかに日本家屋には異様な光景にしか感じられない場違いな白いフリル付きのメイド服姿の女性に安堵を覚える俺。

 俺の背後に居た(いつから?)のは、綾館家にて家事一切を取り仕切る侍従メイド長にして、血縁関係こそないものの美雪さんの“お姉さん”である綾館リリナさん。


「あらあらどうしたのですか?顔が青ざめてますよ……って、ああ!」

「お嬢さま、い、一体、相沢さまはどうなされたので!?」

「ふふ、緒雛おびなさん、気づかないのですか?」

「も、申し訳ありません!あっしにはサッパリ……」

「いつも言っているではありませんか。貴方の“顔が怖い”のですよ」


 理由はドンピシャだけど、どストレート(直球)過ぎるよリリナさぁぁぁんっ!!!!


「そ、そうだったんですか!」と愕然とする緒雛さんという黒服の人に、俺は「いや、その……」と否定の言葉が出てこない。


「これは申し訳ありやせん!この罪は死んでお詫びをっ!!」

「い、いや死ぬなんて大げさな!俺もなんかすみません……ってどっから出したのその小太刀!!??」


 もう【その筋の映画】でしか見たことの無い小太刀(ヤッパとかドスっていうんだっけ?)を取り出した緒雛さんは今にも腹にブッスリと突き刺しそうな格好である。


「やめなさい緒雛!晴れの新年早々に流血沙汰とは言語道断!その罪は行動によってすすぎなさい!!」


 まさに“一喝”。そりゃいつものおっとりで優しく相手を諭すような物言いとは真逆な口調のリリナさんに、俺も緒雛さんも気圧される。

 「すいやせん!以後、気お付けやす!!」と深々と頭を下げる緒雛さんだけど……リリナさん、論点はそこじゃないよね?せめて顔のことは否定してあげてよ!!


 それから程なくして、リリナさんは再び俺を部屋に案内するようにと緒雛さんに言いつけ、「私は準備があるので」と行ってしまった。

 再び俺と緒雛さんの二人きりになり、気まずい雰囲気になるかと思ったのだが、緒雛さんの「すいやせん、自分の顔が前々から怖がられているとは思っていたんですが……」と口を開いたので、そこから会話が少しづつできるようになった。

 まず緒雛さんだが、れっきとした一般人で以前は市役所勤めのお役人さんだったようで、戸籍や婚姻・離婚届けの窓口で働いていたそうな(あの顔で結婚おめでとうございますって言われるとマジで怖いだろうが)。その他、サングラスをしている理由は日差しに弱いらしく、顔に斜めに入った傷跡は、酔って帰宅した際、飼っている愛猫に抱きついたら引っ掻かれたんだとか。見た目はものすごく強面だが以外にお茶目な人のようで、最後に出てきた小太刀に関しては「自分、極道物に憧れてまして、あれは通販で売っていた“極道3点セット”を購入して以来、こういった場面に使えたらなぁと用意していやした」とのこと。

 おいおい、そんな理由に俺を巻き込んでくれるな……。







 まぁそんなわけで、緒雛さんの人柄というのもなんとなく理解した俺は、用意された“部屋”へと案内された。


「こちらでございます」


 八畳分はあろうかという部屋は、はっきりいって実家の俺の部屋よりも広い。しかも部屋の先には襖で仕切ってあるため、これを開放すりゃ一体どれだけ広いんだろうか?とりあえず勧められるがままに用意された席に座り、後から来たメイドさん(やっぱりメイド服だった)からお茶とお菓子を頂き、一服。とはいえ、こうしてゆっくりと美雪さんの家にお邪魔をしたのは初めてであり、まして呼び出した当人(美雪さん)の姿も無ければ、我が家とはまるで違う様式の部屋に俺だけだから、落ち着きなんてあったもんじゃない。

 えもいわれぬ緊張感にさいなまれること30分、5分おきに「お茶のお代わりは如何ですか?」という言葉に甘えること4杯。ようやく「お待たせしました」との声が掛かり、やってきたのはリリナさんである。


「では相沢由希さま、お着替えのお手伝いをさせていただきますわ」


 俺の着ている服装は、お年玉をはたいて買った一張羅の合皮製の茶色いジャケットにインナーは黒くて薄手のセーター。下はわりかしお気に入りの細身のジーンズだが、やっぱりこの服装じゃだめみたいだ。

 いや、そんなことよりも先に―――


「リリナさん、ごめん!先にお手洗いに行かせて!」


 お茶でだぼだぼになった腹をまずどうにかしないと!







 とまぁ案内されたトイレで用を済ませ、着替えをすることになったわけだが。


「えぇ……っと……」


 部屋に戻ってみると、奥襖が開放され、中にはリリナさんを含めて3人ほどのメイドさんが待機。そしてどれもこれも値が張りそうな衣装がずらりと揃っている。つか、ほとんどが着物である。


「衣装チェンジとか―――」

「だめです」


 無理だった。つか即否定だった!しかしまぁ着物なんて滅多に着るもんじゃないし、七五三以来じゃないか?しかも着方なんてわかんねぇ……


「大丈夫ですわ。そのために、私たちが居るのですから!では先ずこの色は以下かでしょうか?」

「え、ちょっ!?いきなり?ってか服は自分で脱げるから!!」

「遠慮は要りませんわ!さあさあっ!!」

「お願い人の話を聞いてぇっ!!!!」


 というわけで、俺は強制的に脱衣させられ、このお手伝いという名の真性Sの女性に下着姿を見られる羽目に……。ま、まだ美雪さんにすら見せたこと無いのに……(いや、知らないうちに見られている可能性は否定出来んが)。







 と、リアル着せ替え人形になること1時間(着物は着脱に時間がかかる)……。何十着と試着した中で、一番無難な濃紺の着物をセレクトし、決定。

 その後、ようやくメイドさんたちの魔手から解放され、やってきました大広間!の前。中では一様にざわざわと色々な会話が入り混じって聞き取り辛いが先客はすでに居る模様だった。


「失礼致します、相沢由希さまご到着にございます!」


 いや、もう1時間以上も前に来てましたけど!というツッコミはこの際口にはしないでおくとして、うやうやしく一礼したリリナさん(いつの間にか着物姿)が、襖越しに声をかける。するとざわついていた広間内は水を打ったようにシーンと静まり、中から「入ってもらいなさい」と、まだ若い男の声が返ってきた。


「失礼致します。相沢様、中へ」


 静かに襖が開かれた先には、まるで日本の城の中なんじゃないかと思わんばかりの広間。中には大勢の先客が、皆一様に俺の方へと視線を向ける。

 正直に言うと、萎縮せんばかりに緊張しまくっていた。そりゃもう注目されるのは好きではないから。以前、美雪さんに告白した時も体育祭という学内の一大イベントで、周囲から色々と注目を浴びせられたことがあるが、それは大半が学校の生徒や関係者だったということもあり納得できる。

 しかしながら、俺に目を向けている人間に顔見知りなど一人も居ない。その過半数が俺よりもはるかに年配であり、全くの知らない人。その緊張感は、告白した時の比ではなかった。


 ただし、俺が萎縮せずに堂々と(というわけでもなく)平常心を保っていられたのは、ひとえにそんな見覚えの無い先客の仲から、よく見知った人物を発見できたからだろう。

 屈託の無い笑みを浮かべるその人物は、着物の片袖を振りながら俺を手招いた。


「由希、こっちだ!」


 綾館美雪が、その大勢の先客たちの前で俺を呼ぶ。その時初めて、美雪さんが俺を愛称ユキではなく名前で呼んだ。




⇒⇒⇒




 「こっちだ!ここに座れ!」と美雪さんに案内されながら、俺に視線を向ける人たちに言葉ではなく一礼をしていく。とりあえずは会話よりも先に行動に移すことが先決だと思ったから。

 だから俺の行動に向こう(知らない人たち)も、一礼を返していくのみ。通り過ぎた後で何を言われているかは知らんが。

 そんなことを繰り返しながら案内された席は……って、ええっ??


「み、美雪さん、ここって上座じゃないですか!」

「む?当たり前だ」

「そうそう!未来の婿殿が下座では話しにならんからな!!」


 わっはははは!!!!と豪快に声を出して笑う人物は、俺の親父よりもはるかに若そうな男の人だ。美雪さんのお兄さんか?でも、お兄さんが居るって聞いたことないし。

 それにしても、かっこいいな……。


「美雪やリリナから話は聞いているよ!よく来てくれたね」

「は、はぁ……」

「私の父だ」

「あぁ、お父さ……お父さん!?お兄さんじゃなくてっ!???」


 いや、そりゃ驚くよ!だってまだ30歳にも入ってなさそうなくらいに若いし、白髪なんて一本も無いし!!


「いやぁ嬉しいねぇ!まだまだ兄妹で通用しそうだ!!」

「父は48歳だが、見た目同様に精神も幼稚で適わん」

「そりゃ非道い!パパは悲しいと死んじゃうんだぞ!!」

「お父様、美雪、相沢様も皆様も呆然としておられますわよ」


 ナイス助け舟だリリナさん!つか、この即興漫才(?)を止める術を、俺はこんな大勢の前では披露できなかったよ。

 ……ん?というより、この親子のやり取りって、俺と美雪さんの普段のやり取りとまんま同じじゃないか!?


「んん、ごほん!失礼した。改めて自己紹介しよう。私は綾館宗一郎あやたてそういちろう。美雪とリリナの父だ」

「あ、えっと、美雪さんとお付き合いさせていただいている相沢由希です」


 口にするだけでも恥ずかしいが、普通こういうのを口にする時って「娘さんを僕にください!」って、確か彼女の実家に挨拶に行く時に言う台詞じゃなかったか?

 ……なんてふと思った矢先、美雪さんのお父さんは、ぐわっ!と目を見開き、急に立ち上がった。


「聞いたか皆!この青年こそが、我が娘の未来の婿殿だっ!!」

「あ、あの、お父さん……?」

「“お義父さん”だとっ!……なんという良い響きだ……」


 いや、言葉の捉え方が間違ってる!つかなんで泣く!!??


「父さまは“お義父さん”と呼ばれるのが夢だったのだ!」


 安っぽい夢!ってか美雪さんまで泣かないで!!いや、泣く意味がわかんないから!!


 その後、美雪さんに半ば強引に連れられ、一人一人の先客の方々にご挨拶。なんでも綾館家は、毎年1月の第2週目の日曜に新年を迎える風習があるとかで、集まっていたのは綾館家の親戚一同だった。美雪さんの両祖父母は早くに他界しているらしく、一番年長にあたる親族の人たちも、美雪さんたちの大叔父・大叔母を除けば、そこまで高齢ではない。それにしても、大変なのはここからだった。

 いつの間にか俺の立場は“未来の婿”から“婿殿”へと変わっており、やれ「式はいつにするのか?」だの「子供は何人くらいほしいのか?」だの、完全に俺や美雪さんの学生という立場をすっ飛ばした質問ばかりが集中。やっとこさ解放されたと思いきや、今度は美雪さんのお父さんから


「さぁ“パパ”と呼んでみよう!せーのっ!」

「パーパー……って呼ぶか!!」

「婿殿はまだまだ羞恥心というものを捨てきれていないようだな」

「お父さんは羞恥心を拾ってきたほうがいいと思います!」

「“お義父さん”……なんどそう呼ばれることを夢見ていたか……」


 ダメだ……この人は100%美雪さんのお父さんだ。都合のよい言葉の捉え方といい、普段の美雪さんのように妄想の世界に浸っていらっしゃる……。


「父さま、戯れもほどほどにしてください!」

「いいじゃないか!私は嬉しいんだ、ようやくこの家で肩身の狭い男の仲間が出来るんだから!!」


 今日は美雪さんが真面目に見える!ってか、美雪さんのお父さん……完全に今の言葉は本音ですよね。


「まったく……すまないなユキ」

「あ、いえ!俺も楽しませていただいてますから!!」

「そうか……そう言ってもらえると、私も幾分か心が和む……」


 本当に、今日の美雪さんは真面目だ。後から聞いた話だが、今日の新年会の葉書を作成し、俺を綾館家に招こうと画策した人物は、美雪さんではなく美雪さんのお父さんだったらしい。それで早朝の5時に、わざわざ美雪さんを我が家まで出向させ、手紙を投函したんだと。

 まんま、考えることが美雪さんと同じなんだよな……まぁ親子だから当然っちゃあ当然かもしれないけど。


「それにしても、やっぱり親子ですよね。なんか、性格がまるっきり同じだし」

「失礼な!私はここまで非道くはないぞ!!」

「それ、父親としては一番傷つくんだが……」


 うぅむ【同属嫌悪】ってやつだろうか。


「まったく……そういえばユキ、先ほど叔父さまに「子供は何人くらいほしい?」と聞かれたんだが」

「それを俺に聞いてどうするつもりなんですかね……」

「む?決まっているだろう!最近では“出来ちゃった婚”も流行っていることだし、今日あたりユキを押し倒してみようかと―――」


 やっぱ“親子”じゃねーかっ!!やっぱり美雪さんは美雪さんだった。


「ついに孫とご対面になる日も近づいたか……」

外野おとうさんは引っ込んでろっ!!」








 こうして、綾館家にての新年会は騒がしくも幕を下ろした。見送られる際、美雪さんのお父さんが「孫の顔は……」なんて言ってたのは、聞かなかったことにしておこう。

 それにしても、少しだけ疲れたな……





◆◇◆


「ん?」


 私の家とユキの家は、車を使えば10分程度とそう遠く離れているわけでもない。それでも、車に乗ってすぐに寝息を立て始めたユキの姿を見ていると、やはり緊張ゆえの疲れが出てしまったのだと感じた。

 まぁ仕方の無いことだ。父さまに「お前の彼氏を是非招待したい!」と言われた時には、さすがの私でも面食らった。しかもご丁寧に私の字を真似て葉書を用意しているという周到さだし。

 それでいて、まぁ多少強引ではあるが、ユキを我が家に招待したわけだが……やっぱり私をはじめとした親族の濃い性格に、ユキは面食らっていたわけだ(自覚あり)。

 それでも、萎縮などせずに親族の前を通り行くユキは、丁寧に一礼をしていった。皆、口々に「あのユキは礼儀正しいな」とユキを褒めていたのだが、まるで私がほめられているかのように、嬉しかった。

 やはり、私が惚れた男だ。出来れば、母さまにもユキの姿を見てほしかったなぁ……。


「悪いが、少しゆっくりと走ってくれないか?ユキが眠ってしまったようだ」


 運転手にそう促し、車はスピードを落とす。こう無防備な姿のユキを起こすのは忍びない……という建前。本音は、私の肩に頭を預けるユキの姿を、少しでも長く眺めていたかったというのが、私の本音。

 でも、これくらいは許される範囲だろう?だって私は、相沢由希の“恋人”なのだから―――

 新年明けましておめでとうございます。今年初投稿は、やはり「才色兼備な変態さん」の番外と前々から決めておりましたが、いかんせん「時間が無い!」ということと、たんなる怠けもあってか、ようやく投稿を迎えたのは正月も明けた3週間後となりました。

 そういうことで、最初のテーマを「お正月」から「新年会」という名目に変えて、執筆を久しぶりに再開。

 一応コメディというジャンルにしておりますが、これがはたしてコメディなのかどうかは、私自身も疑問に思っている次第です。


 あまり考えず、ただ書きたいことを書いたのでお目汚しになった可能性大ですが、なんとなく「くすり」と笑えていただけたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ぬぁー不覚ー!!! 才色兼備な変態さんシリーズの新作が出ていたのに気づかなかったとはー!!!……というかもう一ヶ月過ぎてますね。 さて改めまして、もう皆さん相変わらずのようで何よりですよ。そ…
[一言] こんにちは。 遅れましたが明けましておめでとうございます。 先輩のお父さんもとてもそっくりで、由希くんも婿になったら楽しそうだなぁーなんて考えてにやけてしまいました。 相変わらず想いをスト…
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