予約
未来の全てを予約したい。未来の全てを予約したい。未来の全てを予約したい。そんな人間だ。
「すみません。予約したいんですけど」
「いつになさいますか?」
「8月の27日とかは、大丈夫ですか?」
「半年後ですけど、予約はできますよ」
「では、お願いします」
「どのような予約でしょうか。歯石取りですか?」
「いえ。夏に、チョコレートアイスを大量に食べすぎる予定なので、虫歯になった時のために」
「はい。お、お待ちしております」
「遅かったね。どこ行ってたの?」
「お墓を予約してきたの」
「えっ、まだ若いのに?」
「就活と終活に、年齢なんて関係ないでしょ」
「今は就職活動と、終息活動を一緒にやってるの?」
「そうそう」
「それは、自由だよね。うん、やっていいよ」
「あと、子供の名前予約していい?」
「僕に?」
「うん」
「もう決めるってことだよね」
「うん、そうだけど」
「いいよ。僕は赤ちゃんの顔を見てから、決めたいけどね」
「そっか」
「まだ、付き合って1週間だからね」
「でも、予約したくて。ユララちゃんって名前にしたくて」
「オッケー。いい名前だね」
「ありがとう」
「心配性というか、未来に執着するタイプだね」
「うん」
「今日はどこ行ってたの?」
「占いと神社。あと、成人式の着付けの予約をしてきた」
「成人式、行かないって言ってたのに?」
「違うよ。娘のだよ」
「もう、女の子が生まれる気持ちでいるんだね」
「そうだよ」
「結婚はしたいけど、結婚はまだ、色々落ち着かないとね」
「まだ出会って1週間だけどさ、未来を見ていたいんだもん」
「お金は掛かるし、僕は貧乏な方だからね」
「焦ってはないよ。未来を予約しておきたいだけだから」
「そうか」
「そうだよ」
「それで、神社には何しに行っていたの?」
「占い師に、お金持ちになりたいって相談したら、『来世でね』って言われて。神社で神様に、来世で玉の輿に乗ることを予約してきたの」
「ああ、また予約か。すごいね」