筒状の物 大気汚染とそれを取り締まる大臣の苦悩
急激に高度な発展を遂げたA国。それにともないこの国では、大気汚染が大きな社会問題となっている。
その対策を任された大臣は、なにか名案はないものかと頭を悩ませていた。
「工場の煙突から出る煙に自動車の排気ガス……これら大気汚染の原因を、一気に取り締まる良い方法はないものか」
新しい法律を作れば良いのだが、一度に複数の法を制定すると複雑になりなかなか社会に浸透しない。
それに取り締まる側も複雑に絡み合った法律を理解できず、判断に迷い摘発しづらくなる。
それではいくら新しい法を作っても効果は半減してしまう。
だが、さすが大臣を任せられるだけの人物。彼は一つの名案を思いついた。
「そうだ、煙突も自動車のマフラーも筒状。筒状の物から煙を出すことを禁止する法律を作ろう」
その法律はすぐに施行され、瞬く間にA国の大気汚染は改善されて行く。
取締官とともに視察に出かけた大臣は、工場の煙突からも自動車からも煙が出ていない事に満足するとタバコを取り出し火をつけた。
「ふー。これで一安心だな」
うんうんと満足げに頷く大臣。だが――ガチャリという音とともに、タバコを持つ彼の手に手錠がかけられる。
「おい、なにをする!?」
語気を強め大臣は取締官をにらむが、表情を変えずに彼は言う。
「例外は認められません。筒状の物から煙を出した現行犯で逮捕します」
そのとき大臣の手にある筒状の物は煙を立ち上らせていた。