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ミコ・サルウェ  作者: 皆月夕祈
冬花の奇跡、群狼の旅人(上)
81/123

起章 狼の寓話

 大変長らくお待たせしてしまいました。

 皆月夕祈です。

 本来は、完全に完成してから、公開する予定では御座いましたが、少々私生活が立て込んだ事で、一年以上、期間が開いてしまいました。

 現在気付いたら、およそ半分程書いたあたりで既に、分量的には1章や2章と同程度の文章量になっておりました。

 目算の甘さが出ております。

 流石にこれ以上、期間を開けるのもどうなのか、という事もありまして、今回は上巻という事で公開するという判断を下しました。 

 1ヵ月ほどで、投稿し終わる試算で御座います。

 それまで、どうかよろしくお願いいたします。

 これは、ヘリクレイドの森の話だ。

 ヘリクレイドの森は、森とは名ばかりの大樹海で、小さきは凶悪な毒を持った軍隊アリから、大きは果てまで届く地竜まで、人の絶望なら何でも存在する、深淵に最も近い森であった。


 ここには、ほんの数年前、そこには、大狼がいた。

 体長20mを超える母狼だ。

 この狼の銀毛は、彼女に対する全ての悪意を退け、その牙はどんな物でも貫く。

 その爪は世界を切り裂き、強靭な足はひとっ跳びで大海を越える。

 彼女は、そんな伝説をもっていた。

 

 母狼は、5匹の子供を産み落とした。

 5匹のうち、4匹は母と同じ、狼の体毛に強い爪、牙を授かった。


 ただし、残りの一匹は残念な事に、母の姿には似ても似つかない。

 体毛は中途半端に頭の一部にだけ、爪は丸く、歯も平かった。

 だというのに、せめてもの、逃げるための足も遅いのだ。


 故に母狼は、彼を諦めた。

 

 この地は過酷なヘリクレイド、身を守る事の出来ぬ者は、次の瞬間には、他の者の糧になる定めの地。

 母狼は、出来損ないの彼を、自らの巣穴より放り出した。

 

 哀れな出来損ない。

 しかし、母が諦めても、彼を見捨てない者達が居た。

 

 彼の同胞はらから達だ。

 

 

 弟の肌が柔いのならば、俺が弟の体毛となろう。

 この子の爪が丸いなら、私が彼の爪となります。

 兄の牙が平たいなら、代わりに僕が噛み穿とう。

 兄さんの足が弱いなら、代わりにアタシが乗せて走ればいいわ。


 彼の傍には常に、4匹が寄り添った。

 5匹は母の元を離れ、森の中で懸命に生きていくのだ。



 後に、一人の傭兵が、この森を訪れる。

 そして、彼等はその傭兵について、この森から旅立っていったという。

 

                        吟遊詩人カッツェの歌曲より




本日は、これを合わせて5話投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一年ぶりの更新……お疲れさまです!
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