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ミコ・サルウェ  作者: 皆月夕祈
春暁の騎士、庇護の戦女 
31/123

ep3

 薄暗い神殿の中に一人、顔立ちの鋭い男が、中央の台座を前にして跪き、祈りをささげている。

 

 その台座には、無貌無形の存在を、無理やり象ったのだろうか?

 グロテスクな、かろうじて四肢の様な、人の形をした様な、曖昧な姿をした像が祭られていた。

 

 男の着る衣装は、薄桃でヒラヒラとし、日本人ならば袴を連想するような出で立ちである。

 あまり、この世界で見られる姿ではない。

 

 

------たったったった。

 男と同じ服を着た、別の男が早足で現れた。

 此方は、先ほどの男よりも幾分、柔和な顔立ちをしている。

 

「カバス、スカリオンが潰されたようだ。」

 事実に比べると、やや過剰な言い方。

 男の声は、さばけていたが、そこには確かに焦りの念が籠められていた。

 

「ふん。スカリオン? ああ、あの東の気狂いどもか? 我々は天使様を信仰するとか言ってたが、天使様は守ってくれなかったのかよ?」

 

 カバスと呼ばれた男は、一つ鼻で笑うと、顔を歪め、嘲笑の笑みを深めた。

 

深更しんこうが戻った。」


「!? まて、ヴォイド、何故だ!? 早すぎる。まだ『色のない獣』は起きんぞ!」

 

 途端に、カバスは焦った表情を浮かべ、自らがヴォイドと呼んだ男へ詰め寄った。


「白日の姫の仕業だ。……獣はおろか、我々は巫女すら手に入れていない。それどころか、あの大陸に対する影響力も皆無……。」


「くそ! スカリオンのせいだろうが!」

 近くに置いてあった水差しを、カバスは苛立たし気に蹴りつけた。

 

------カーン、バシャーン。

 

 床に水が、静かに、炎が広大な原野を燃え広がるかの如く広がっていく。

 

 

 それが、とある者の仕業を思い起こさせ、カバスもヴォイドも、眉を顰め、その広がる水を睨みつけた。

 

 しばらく、沈黙が、場を支配した。


 先に、口火を切ったのはヴォイドだった。


「何にせよ。我々は動き出さねばならなくなった。私はやることをやる。……終わらぬ日を求めて。」

 そういって、ヴォイドは来た時と同じように、早足で去っていった。

 

 カバスはギラリと、その鋭い目で、ヴォイドの後姿を見やると、同じように

 

「終わらぬ日を求めて。」と告げた。

  



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