11 消える感情
『2抜けは俺がもらう』
『いや、僕が!』
『いや、俺が!』
『いやいや俺が!』
『お前は1抜けしただろ……』
続けて♦︎10が世界の移動をする。
彼女は彼女でまた、想い人がいるのだ。その想い人は彼女が知らないところで消えてしまったのだが、彼女が知るはずもなく、彼女はいるはずもない想い人と会えることを期待して世界を渡った。
もちろん、渡った世界に想い人はいなかった。
『次行くぞ』
『以外と揃わないもんだね』
『そういえばjokerどこにある?』
『俺じゃないぞ』
『そりゃあんたは抜けたからな』
その次に世界を渡ったのは、♦︎J。
彼女が降り立った世界には、jokerと♣︎Jがいる世界だ。
♦︎Jは♣︎Jを見つけるとゆっくりとバレないように近づいていく。
もちろん確実に消えるための行動である。
このことに♣︎Jもjokerも気付いてはいない。
♦︎Jはこっそりと2人の死角から近づき……思い切り♣︎Jに抱きついた。
その瞬間に身体が溶け始める。消え始めている証拠だ。
「ねえ、消えるって意外と気持ちいいんだね」
「そんなことない……助けて……」
「もっと密着して、消えるペース上げたらどうなるのかな? もっと気持ちよくなるのかな」
「やだ……助け、て……ジョーカー……」
♦︎Jは相手が話を聞かないことを察すると、近くにいたjokerに助けを求める。
……が、jokerは何もせずに、ただ溶けていく様子を眺めていた。
いや、眺めることしかできなかったのだ。
己の片割れを重ねた人物が私以外の誰かと消えていくその様子は絶望的だったのだろう。
やがて♦︎Jと♣︎Jは溶け合い、汚物のような状態へと変化してしまった。
これによってjokerの精神は限界を超えてしまったようだ。
彼女は感情を捨ててしまった。
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Aの世界 0枚
Bの世界 4枚
♦︎A ♠︎5 ❤︎6 ♦︎10
Cの世界 3枚
❤︎8 ❤︎A joker
Dの世界 4枚
♣︎6 ♠︎8 ♠︎10 ❤︎5
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物語のヒント
世界が分けられたと同時に本能が植え付けられてたくさんの少女たちが消えていった。
少女たちはこのことを「始まりの時」と呼んでいる。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
次回もお楽しみに!