第3話 山田 連一 - やまだ れんいち
『死んだら何がいけないのかな? 両親とも枯れ切った灰色、自分は弱いだなんて言いながら弱い子供を認めない』
『学校では凄惨な灰色、誰もが何かに追われてストレスで誰かをいじめる。まるで社会の縮図を見ているようだったよ』
『いじめる原因を作る現実とセットになった人間しかいじめはしない。言っちゃえば人間全員が悪いんだ。皆わかってるよ、そんな事』
『でもね、それじゃあ誰のせいにも出来ないでしょ? 誰にも当たれない。でもどうにかして誰かのせいにして八つ当たりしたくて、両親のせいにしたり、学校のせいにしたり、いじめで見ないようにしたりするんだ。それが溢れた現実もやっぱり灰色だよ』
これはあの日の留守番電話。
『そんな世界で生きるも死ぬも、自分で決めて何が悪いの?』
生きることを悟ったような問い。
この声を聞くたびに、ふざけるなという怒りとか、怒る自分に対する怒りとか、ごめんなさいという後悔とか、色んなものが混ざりに混ざって訳が分からなくなる。
「なんで……」
姉が言っている事は恐らく正しい。でも、俺は。
「俺は……」
理不尽な怒りだと言うことは分かってはいる。今更何言ってんだ、何もしなかった癖に。そう言われてしまえば何も言えない。
「死ねば終わるなんて理不尽だ」
『じゃあね、バイバイ』
その時の姉の声は微かに震えていた。
この留守電が入って数日後、姉は水死体となって発見された。
警察の人に案内された霊安室には、足の長いベッドに横たわる遺体があった。
確認のため、顔に乗せられたタオルをめくる。そこには、笑ったり泣いたり優しかったりしていた姉の顔があった。




