第1話 山田 明 - やまだ あかり
初めて書いた作品です。よろしくお願いしますm(_ _)m
今朝、娘の茜に手を上げた。頬を思いっきり引っぱたいた。茜は私に土下座をした。「救えなくてごめんなさい。」と。
茜は暫く自分の部屋にこもり、30分ほど経って出てきたかと思えば、何も言わず家を出て何処かに行ってしまった。
午前11時、しびれは取れたはずなのにまだ掌が痛い。
茜が私の事について苦心しているのも分かっている。だけどそれ以上に私は、世界が、憎い。
いや、私を見ない、私も子供たちも、誰一人として見ていない旦那がどうしようもなく憎い。
きっとあの人は盲目に自分の事を見ていないと死んでしまう人なのだ。最初から私の事なんて見てなかったんだ。
茜は昔から笑顔が絶えない子で、どことなく大人びた子でもあった。
一年前、茜は中学校に突然いかなくなった。理由を聞いても「なんでだろ? 」と答えるだけだった。
学校の先生に相談しても「分からない」と。どうして現実はこうも上手く行かないのだろう。頑なに学校に行かない娘に、私は先生と相談して、暫くは様子を見てみようということになった。
彼女は不登校になってから殆ど家にいる。彼女曰くずっと色んなことを考えているのだそう。考えているだけで進展のない茜に私は少しイラついていた。
「貴女は何をそんなに怖がっているんですか? 何が憎いんですか? 私は貴女のサンドバッグになるつもりはない、サンドバッグにはなれない」
今朝、いつものように旦那の愚痴を吐いてると、茜が突如そんなことを呟いた。
瞬間、言い知れぬ、どす黒いものがお腹の底から出てきた。気が付くと娘を思いっきりぶっていた。
「学校にも行かずずっと家にいる分際でそんな偉そうな口を聞くな!! 出来ないなら出て行け!!」
私の上げた怒鳴り声に、茜は頬を抑えながら冷めた目でこちらを見てくる。
そこからの確かな記憶はない。
感情のままに手を出して、何度も怒鳴って、娘に土下座させたこと。その時「救えなくてごめんなさい」と言われた事だけは覚えている。
それから茜は自分の部屋に行き、30分ほどすると玄関の音が聞こえた。
あんな事をしでかした身分で、とても追う気にはならなかった。
どうせすぐに帰ってくる。いつもそうだったのだから。
すうっと息を吸い込んで、ふぅーっと息を吐く。
すうっと息を吸い込んで、ふぅーっと息を吐く。
これを何度も繰り返していると、だんだんと吸った回数も吐いた回数も全てが分からなくなって、頭がぼやけてくる。
そのぼやけた頭にゆっくりと一つ、何でもいい、何か気になる事を浮かべる。
今日も浮かぶのはあの日の記憶。あの記憶を思い出す度、心の底から後悔する。
あの時、何もかもが憎く見えていたあの日、それでもあの子にかける言葉、あの子にしてしまった事、それらがどうしようもなく間違っていたのを私は知っている。
でも、それなら私はどうすればよかった? その問いの答えは今でもずっと分からないままだ。