百鬼 その賢者も人形
「ーーー様、村の北で畑が荒らされました。」
「ーーー様、山の方で火が上がってます。」
「ーーー様、隣の村から客人です。」
「ーーー様。」「ーーー様。」「ーーー様。」
賢い人間というのは誰からも必要とされる。
それは水やらと同等の価値があり、
それは娯楽よりも価値がある。
しかし、
儂自身、
その事実に大きな疑問を抱く。
確かに賢い人間がいれば、
村は発展し、
市は栄える。
厄災が起きれば、
火消しが手際よく進む。
だが、
この事実は余りにも浅い。
浅く薄い。
村は時間があれば発展する。
市は人が通れば栄える。
厄災も経験を積めば良いものだ。
賢い人間は、
集団があってこそ役がつく。
それはつまり、
賢ければ賢いほどに、
自身が愚かに思える。
それを考えれば考えるほどに
儂自身はいなければいいのではと、
疑問が、
不安が、
そこにはあってしまう。
儂は村に慕われているのではなく、
儂が村に飼われている。
そんな犬者である。