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新しい君と  作者: たく
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倒れてしまった美月は、未だに目を閉じたままだった。


僕たちは、秋月さんの家にお邪魔していた。


……結局あの後、女は目的を果たしたのか僕たちの前から姿を消した。


そして、僕たち三人だけが取り残された。


すぐに美月を病院に連れて行ったが、大人がいないことや事情を説明しても理解してくれなかったことが重なり、結局取り合ってくれなかった。


……だが、美月が目覚めない限りまともに診察が出来ないというのも事実だった。


結果的に行き場を失ってしまった僕たちは、こうして現在に至った。


ちなみに、服を破り裂かれてしまった紺野さんは、麗奈さんの服を借りることで応急処置をしていた。


いずれは遺品の整理をしようと考えていたらしいが、どうしても手が付けられなかったらしい。


しかし、皮肉にもそのおかげで紺野さんは服を着ることが出来た。


……僕たちは、秋月さんに助けられてばかりだった。


「秋月さん。本当に、何度も押しかけてしまって申し訳ありません」


「服もありがとうございます。おかげさまで助かりました」


僕たち二人は、口々に感謝の言葉を述べた。


「別にいいのよ。それに、私の方こそありがとう」


「えっ……?」


「……麗奈がいなくなってから、私は本当に寂しかった。……でも、こうしてあなたたちが来てくれたおかげでまた自分に子供ができたような気持ちになれた。それも、美月ちゃんのお友達だって言うから余計に嬉しくて……」


「秋月さん……」


「ま、まあ、私の話はいいわよね!……それより、一体何があったの?」


そう言われ、僕は正直に話すべきか悩んだ。


しかし、それを話さない限り今の状況を説明出来ないし、何より麗奈さんや秋月さんにも関係があることだったので、話すことにした。


「……いじめの犯人に会ったんです」


「本当に……?」


「本当です。秋月さんが仰っていた特徴とも一致していましたし、間違いないと思います」


「そう……」


「それで、そいつは美月の記憶についても知っていたんです」


「そうだったの……まさか、美月ちゃんの記憶にも関係していたなんて思わなかったわ……」


「僕たちも突然のことで何が何だかよく分からなかったんです。でも、そうこうしてる内に美月の記憶について話し始めて……」


僕は、しどろもどろになっていた。


そんな僕を見た秋月さんは、その先は言わなくても分かる。というように合図を出してくれた。


「……大変だったわね。とりあえず、今日はゆっくりしてくといいわ」


「ありがとうございます」


何度目か分からないお礼を、僕たちは再び告げた。




話が落ち着いたところで、僕たちの後ろから突然物音がした。


「……秋山君!美月さんが、目を覚ますかもしれません!」


「ほんとに!?」


僕たちは、美月を囲うようにして様子を見ていた。


きっと、傍から見ると生まれたての赤ちゃんを家族で見守っているように見えていたかもしれない。


「う……ぅん……」


美月は何かにうなされているようだった。


だが、今まで何も反応がなかったことを考えると、目覚めが近付いていることは確かだった。


「美月さんっ……!」


紺野さんは美月の左手を握っていた。


……そして、僕たちが心配に見守る中ついに美月は目を覚ました。


「美月さん!大丈夫ですか!?痛いところとか無いですか!?」


「紺野さん、少し落ち着いて。目覚めたばかりでびっくりしちゃうから……」


「……ごめんなさい。つい……」


美月のことになると周りが見えなくなってしまう紺野さんを、僕は少しずつ見慣れ始めていた。


体を起こした美月は、眠そうに目をこすりながら言葉を発した。


「……あれ、ここは?私たち、どうなったの……?」


「ここは秋月さんの家だよ。……美月は突然倒れたんだよ。それで、僕がここまで運んできた」


「そう……だったんだね」


何か様子がおかしい気がした。


倒れる前はあんなに取り乱していたのに、今は何事もなかったかのような顔をしている。


まるで、さっきまでのことを忘れているようだった。


「……美月。さっきのこと、覚えるよね……?」


「覚えてるよ。学校に入ろうとしたら、突然絡まれたやつでしょ?」


美月はちゃんと覚えていた。


だとしたら、何故こんなに落ち着いているのだろうか……?


「紅葉ちゃん、大丈夫だった?怪我とか無い?」


「私は大丈夫ですよ!……ちょっと辛い思いはしましたけど、美月さんに比べたら大したことないです!」


「そっか、本当に良かった……」


自分を心配するよりも先に、美月は僕たちの心配をしてくれていた。




僕たちは、彼女が何か言ってくれるのを待っていた。


僕は、記憶のことを直接聞くのが怖かった。


残ることを提案したのは僕なのに、こんなんじゃ示しが付かない。


弱気になっていた自分をなんとか奮い立たせた。


それからしばらくした後、美月は決心したように話し始めた。


「……おばさん。私、話さなくちゃいけないことがあるんです」


「何かしら?」


「……麗奈ちゃんが亡くなった原因は私にありました。……私が、彼女を死なせてしまいました。……本当にごめんなさい」


……うそでしょ?


そう言いたかったはずなのに、意思に反して声を出すことができなかった。


信じられなかった。


……いや、信じたくなかった。


「どういうことなの……?」


秋月さんはあまりにも突然のカミングアウトに戸惑っていた。


もちろん、それは秋月さんだけじゃない。


僕も紺野さんも理解が追いついてなかった。


そして、そんな僕たちを置いてくように美月は真実を淡々と語り始めた。




話を聞き終えた秋月さんは、美月を優しく抱きしめていた。


彼女の目には涙が浮かんでいて、それを隠そうとはせずただただお礼を言っていた。


「美月ちゃん。麗奈は、あなたのことを本当に頼りにしていたのよ。だから、あの子はあなたを絶対に恨んでなんかいないわ。私が保証する。……最期まであの子と一緒にいてくれてありがとう。本当に辛かったわね……」


「……おばさん、ありがとう」


僕の隣で一緒に話を聞いていた紺野さんは、必死に涙を拭っていた。


……でも、当の本人は打って変わって冷静だった。


目覚めてからの美月はやはり様子がおかしい。


今の彼女は感情があまりにも凪いでいている。


まるで何か腹を括ってるかのような、そんな落ち着き具合だった。


常に明るくて元気な姿とのギャップに、僕の不安はみるみる大きくなっていった。


そして、その不安が的中してしまったかのように、美月は突然こう切り出した。


「充君、紅葉ちゃん。二人に話があるの」


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