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新しい君と  作者: たく
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ザンコクな世界

スクリーンから流れる映像は、一人の少女の物語だった。


そして、この物語にはまだ続きがあった。


それは私一人を置き去りにして、無慈悲に進んでいく。




「お母さん。私、友達を助けられなかった……」


「一体、何があったの……?」


「麗奈ちゃんが、私の目の前で死んじゃったの……」


「えっ……?」


「死なせないって、言ったのに……」


「美月、落ち着いて?お母さん、状況がよく分からないわ。もう少し詳しく教えてくれないかしら」


「……うん」


私は、今に至る経緯を話した。


途中で泣きそうになったり、言葉が途切れそうになったが、なんとか最後まで話すことが出来た。


そして、お母さんは私を庇うようにこう言った。


「それは美月が悪いの?」


「……私のせいだよ。最終的に麗奈ちゃんを追い詰めたのは私だもの」


「でも、元々の原因は違うじゃない。それに、美月は麗奈ちゃんを助けようとしたんでしょう?」


「それは、そうかもしれない……でも、私がそもそも麗奈ちゃんと関係を持たなければ命を絶つことはなかったのかもしれない……」


そう言いながら、私は過去を思い返していた。




私と麗奈ちゃんは、元々友達ではなかった。


彼女と知り合ったきっかけは、いじめられている所を助けたことだった。


助けるといっても、正面からいじめを止めたわけではない。


それが出来なかった私は、彼女が一人になった時を見計らって会いに行っていた。


そして、彼女の側に寄り添った。


要は、いじめを止めることはできないが、自分にできる方法で彼女を守ろうとしたのだ。


いじめを止められなかった理由は単純だった。


……怖かったのだ。


目立った動きをして、自分までいじめのターゲットにされるのは怖い。


ただそれだけだった。


私はずるかった。


そして、そんな私に罰を与えるかのようにその時はやって来た。


「お前、最近秋月と仲良さそうだよなぁ?」


「えっ……そ、そんなこと、ないよ……?」


「しらを切るつもりか?」


そう言って、麗奈ちゃんをいじめていた女は私の耳元で囁いてきた。


「てめぇが、あいつとコソコソ何かやってるのは知ってんだよ」


「……」


「だんまりかよ。まあ、せいぜい楽しみにしとけよ」


そう言い残して、女は離れていった。


……そして、翌日から私たちは二人まとめていじめられることになった。


……恐れていたことが現実になってしまった。


私は、この状況をどうにかする方法を色々と考えた。


麗奈ちゃんから離れること、先生にいじめを密告すること、仕返しすること。


行動を起こしさえすれば何かが変わると思ってた。


……しかし、結局はどれも実行されなかった。


いや、“出来なかった”のだ。


そもそも、最初からそれが出来ればいじめられることなど無いのだ。


逆に、そんなことすら出来ないからいじめられてしまうのだと、私は悟った。


……結局、私たちにできたのは耐え忍ぶだけだった。


お互いの傷をお互いで癒す。


それが私と麗奈ちゃんの関係。


傷の舐め合いだと思われても別によかった。


そんなことよりも、私はただ仲間が欲しかった。


……私は、麗奈ちゃんの存在に救われていた。




「私がちゃんと行動してれば、こんなことには……!」


「美月……」


その時、電話のベルが鳴り響いた。


お母さんは、私の方を一瞥してから電話に出た。


「はい、はい。……えっ。そんな……」


電話で会話している声は、何かに恐怖するかのように怯えていた。


そして、お母さんは静かに受話器を落とした。


「……どうしたの?」


「……お父さんの容態が急変したって」


「えっ……」


そんな、そんなことって……


信じられない、信じたくない。


そんな気持ちに押されかのように、私たちは家を飛び出した。




病院へ着いた私たちは、絶望するしかなかった。


「篠原さん。お父様は、もう……」


「そんな、あなた……」


父は既に亡くなっていた。


私たちは間に合わなかった。


……この世界は、恐ろしいほど残酷だった。


どうして私の周りから大切な人たちをこんなにも簡単に奪っていくのだろう。


そんなことを考えていると、彼女の言葉がふと頭をよぎった。


『この世界に神様なんていないんだよ』


あの言葉は、本当だった。


私は、彼女になんて酷いことを言っていたんだろう……


無下に希望を持たせることがこんなにも罪深いことだなんて……


麗奈ちゃんの気持ちが、今になって痛いほど理解できた。


……やっぱり、彼女を死に追いやったのは私なんだ


その言葉が現実味を帯びた瞬間、変な笑いが込み上げてきてしまった。


……私は壊れ始めていた。

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