結ばれない空
ここはどこだろう?
私は自分がどこにいるのか分からなかった。
まるで宇宙空間にいるようだった。
全身の感覚は消え、無重力空間に一人漂い続けている。
そんな空間で、私は一人スクリーンを眺めていた。
その映像はモノクロで、音声も殆ど聞こえなかった。
ーー
「美月ちゃん、私と一緒に死んでくれない……?もう、疲れちゃったよ……」
「……そんなこと出来ないよ。今まで一緒に頑張ってきたじゃない。もう少しでクラスも変わるし、きっと大丈夫だよ。ね?」
「私、美月ちゃんみたいに強くない。どうして私たちだけがこんな思いしなくちゃいけないの……?」
「麗奈ちゃん……」
「神様なんて、この世界にいないんだよ……本当にいるなら、私たちを助けてくれるはずなのに……」
彼女の優しげな瞳からは大粒の涙が溢れ出し、地面にポツリポツリと模様をつけた。
「……辛いけど、死ぬのはダメだよ。生きてれば、きっといつか救われるよ……」
「そんな日来るわけないじゃんっ!」
「えっ……」
「希望を与えるみたいなこと言わないでよ……そんなこと言われても余計に辛いだけだよ……」
「……ごめんね」
私は、震える彼女を力強く抱きしめた。
……そうしないと、自分も壊れてしまいそうだった。
「美月ちゃん。私、やっぱりもう無理かも……」
「お願いだから、馬鹿なこと考えないで!」
「馬鹿なことってなに……?生きてるのが辛くて死のうとすることが馬鹿なことなの……?」
「死んじゃったら、何もかも終わっちゃうんだよ……?それに、私たちがここで負けたらあいつらの思うツボだよ。そんなことで死ぬなんて、絶対にダメだよ」
「そんなこと分かってる、分かってるよ……」
「麗奈ちゃん……」
「……でも、もう楽になりたい。こんな思いを抱えながら生きてくなんてできない……逃げることは、いけないことなのかな……?」
「私がずっと付いてるから。一緒に頑張ろうよ……」
「……でも、美月ちゃんは私と死んでくれないんでしょ?……それならせめて、私のこと殺してよ」
「麗奈ちゃん……?一体なにを……」
「美月ちゃんに殺されるなら、本望だよ」
「そんなこと出来るわけないじゃん!いい加減にしてよっ!私だって辛いんだよ……お願いだからこれ以上困らせないで……」
彼女を慰めるために感情を抑えていたが、ついに限界が来てしまった。
一度溢れ出した想いはどうやっても止められず、感情の波に流されるだけだった。
「……ごめん。私、美月ちゃんのこと困らせてたんだね」
「……」
「死にたいのに死ぬのが怖いなんてわがままだよね。その上、美月ちゃんに殺してなんてお願いしちゃうなんて。私、最低だな……」
「……麗奈ちゃん?」
「美月ちゃん、ごめんね。さようなら」
彼女は、静かに屋上から身を投げ出した。
嫌な予感がした私は、間一髪のところで彼女の手を掴む事ができた。
しかし、三分の一ほど身体を持っていかれてしまい、油断すると一緒に落ちてしまう状況だった。
「離してよっ!」
「麗奈ちゃんは、私が死なせない!」
「どうして、そこまでするの……?」
「……麗奈ちゃんが、大切な友達だからだよ。それ以上の理由がいる……?」
「じゃあ、この手を離してよ」
「えっ……?」
「私は、もう終わりにしたい……だから、本当に私のこと思ってるならこの手を離して……?」
「できないよ……」
「なんでよ。……本当は、私のこと大切だなんて思ってないんだね」
「そんなことない!変なこと言ってないでしっかりしてよ!」
「もう遅いよ」
「遅いなんてことないよ!……諦めなければ、必ず道は開けるから」
「そんな綺麗事聞きたくない!」
私たちの間に、静寂が訪れる。
お互いに一言も発さなかった。
いや、発せられなかったのだろう。
そして、その瞬間は突然やって来た。
「美月ちゃん!危ないっ!」
「えっ!?」
突然の出来事に、私は咄嗟に後ろを振り向いてしまった。
そして、それと同時に私の腕に衝撃が走った。
刺激に気付き、もう一度視線を戻した時には全てが手遅れだった。
身体を引っ張っていた重みは消え、私の腕は空を仰いだ。
「えっ……?」
私の元から離れていく彼女は、涙を流しつつも笑顔だった。
そして、最後にこう言った気がした。
ありがとう。そして、ごめんなさい
やがて、一人の少女だったものは、私の目の前で別の物体へと姿を変えた。
わけも分からないまま、私は逃げるようにその場を後にした。




