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第五十二歩 テレポート

「そういえばテレポートの魔法ってどういう仕組みなんだ?」

「まず魔法陣の中に転移させたいものをしまって、その魔法陣を飛ばすんですよ。そのため普通なら2アクションなんですが」


 爺さんが杖のようなもので地面を叩くと青い魔法陣が現れる。

 そして杖を振るとライトたちを入れてもいないのに飛んでいく。


「は?」

「こんなふうに1アクションなんですよ」


 そのまま魔法陣は通り過ぎざまにライトたちを取り込んで、飛んでいく。

 そして、ほんの数秒後。国2つ分くらい超えた魔法陣が突然消滅し、ライトたちが放り出される。

 超高空で


「で、なんでなんだ!」

「何怒ってるんですか」

「いや、怒るだろ! アリスなんて気絶したぞ!」

「うるさいですねぇ」


 まあ、転移魔法は、転移後の状態が分からないので、壁や地面にめり込まないようにある程度上空を目標とするのである。

 ついでに言えば直線しか飛ばせないので、ほんの数度の違いがとても大きく出る。


「つか、こんな上空に突然転移させて気圧どうこうとか大丈夫なのか?」

「それが大丈夫じゃないからアリスさんは気絶したんだと思いますよ」


 軽々しく言ってのけるマイラの体は、よく見れば淡く光っている。どうせ気圧調整の魔法だろう。


「私的にはあなたがこの状況で生身で平気なことに驚きなのですが」

「まあ、ボムフィリアと一緒にいたからな。とりあえず爆発させるあいつの近くにいて、高山病とかの耐性がねぇやつはいねぇよ」


 落下しているというのに随分と余裕そうなライトだが、その手は爆速でパラシュートを装備している。マイラはどうせ魔法でなんとかするので余裕綽々である。


「よし、出来た。後はアリスを掴んで、マイラは……」


 アリスはこのままだと確実に死ぬので掴んだが、10点満点の着地をしそうなマイラを掴むかどうかすごく悩む。

 だがヒーローさんは優しいのか、足を使ってしっかりと固定してやる。

 バサッ

 という音ともにパラシュートが開く。


「うぎゃぁぁぁぁああああ」

「うるさいな。どうしたんだ、マイラ?」

「あ、あなたがそんな掴み方するからお腹がべこって凹んだじゃないですか」


 パラシュートを開いた時の衝撃は、上手く分散するが、それはパラシュートを装備しているものだけだ。アリスはライトによって衝撃が加わりにくいように固定されていたが、足だけで掴まれていたマイラにとってはたまったもんじゃない。


「あなた最低ですね」

「どうせ光ってるあいだは衝撃を受けないってやつなんだろ?」

「簡易的なもので、風魔法かなんかで衝撃を弱めないと死にますよ! というか私だって女の子なんですからお姫様抱っことかでもいいんじゃないですか?」


 足で掴まれていることが、鳥に連れ去られているような気分になってきたマイラが文句を言う。ただ、既にライトの腕は、アリスを支えることと、パラシュートを操ることに使われているので、お姫様抱っこには2本ほど足りない。ついでにライトはアオイみたいに腕を生やしたりは出来ない。


「残念、諦めろ」

「むぅー」


 諦めろと言われても、やればできる子の極地である天才に諦めるという選択肢はない。

 即座に超短距離転移魔法でアリスと自分の位置を入れ替え、ライトにお姫様抱っこを強制する。

 アリスは魔法で浮かしておく。


「お前、この状況じゃパラシュートが操れねぇだろ」

「私が操りますよ」


 そのまま3人は1つの集落の前に着陸する。


「さて、全くどこか分からないが、まずは首都に向かわねぇとな」

「何言ってるんですか? ここが首都ですよ?」


 家が数軒しかない小さな集落を首都と言い退けるマイラ。


「おや? 鬼人族のお嬢さん。迷子ですかな?」

「よく、私相手にそんな言葉を使えますね。鬼人族が迷子になると思いますか?」

「人族なんかと一緒にいて、体内時計が狂ったのではないかと心配になりましてな」


 突然長らしき爺さんが話しかけてくる。

 いや、このごろジジイ増えてきたね。あー、そういえばダンタリオンとか女神とか、アオイとかは1万年以上前から生きてるんだっけ?


「それでこの爺さんは何もんなんだ?」

「この国の王ですね。と言っても王って呼んでるのは他国だけで、この国では長老呼びですが」

「こんな所に住んでる爺さんがか?」


 驚きはするが、なるほど。確かによく見なくてもボロい一軒家がいくつかと、畑に、数匹の動物たちがいる。


「いや、やっぱりただの田舎だな」

「これだけで十分。これ以上を望むのは強欲というものですぞ」

「ふーん、わかんね」


 無欲、ではなく、今の状況を良しとする妥協。

 だが、平凡な日々こそ幸せであり、欲を求めることに幸せを見いだせないのも事実。


「亜人には初めて会うわね」

「亜人?」

「意思疎通ができる動物のこと。ついでに魔人は魔力を持っている動物の中で意思疎通ができる種族の事ね」

「それだったら人間も入るんじゃねぇか?」

「人間が作った分類法に人間の分類方法は書いてないのよ」


 まあ、獣王国の皆さんは魔力がないので亜人扱いされてるわけだ。


「ただ、魔力がなくても身体能力が化け物だから」

「その彼らに身体操作の方法を教えてもらおうって話ですよ」


 だが、獣王が否定的な表情を見せる。


「人族に身体操作の方法を教えろとは、不思議な話ですな。鬼人族のお嬢さんならまだしも、人族には操作するほどの身体がないのでは無いですか?」

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