表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/65

第五十一歩 恐怖

 まさか学園国家で1番成績がいいマイラが目立つためにライトの元に来たとは思わなかったが、言われてみれば納得である。

 マイラは国で1番の優等生である前に厨二病という目立ちたがり屋の極地に達しているのだから。


「魔王に注目してるって言ってもお前が危険視するほどのものなのか?」

「ここの中でも星占術に長けたものが注目してるんです」

「なんだ? あいつの生まれ持った星が凄いとかそういうことか?」

「星占術は星を使って占うもの。骨やらなんやらを道具にする占いよりも、大きな運命の流れを測ることが出来る。その彼らが、魔王が操っている太陽によって大きな運命の流れが乱れてるって言うんです」


 星の配置を見ることで占う星占術、その星の配置にレンの太陽が割り込んできたということだ。


「私だって太陽と同じ原理のものは作れます。でもその存在はあくまで魔法であって、星ではないんです」

「でも、あいつの太陽は星として存在している」


 怖いもの無しに見えたマイラだが


「怖いんですよ」

「あの魔法が怖いのか?」

「あの魔法に私が興味を持つことが怖いんですよ」


 それは強者として、さらなる強者を相手にした時の恐怖。

 自分のプライドが小さく見え、相手に憧れを抱いてしまう、そんな恐怖。


「もちろん私にだって師はいますよ。でもそのどれもが私に越えられると思わせる程度の師でした」


 言う通り、越えてみせた。


「昔の偉人だって越えていける自信があったんですよ」


 初めから強いのではなく、徐々に強くなっていったものは、自分が負けていても、いずれ超えると、考えることが出来る。


「でも、あれは別格。越える越えないという問題じゃなく、それが何なのかすら分からないほど大きい」

「それと殺すことが繋がらないんだが」

「簡単なことですよ。越えられない壁は、大勢で叩いてぶっ壊せばいい」

「そんなことでお前のプライドは満足するのか?」


 そこで見せた笑顔は今までの不敵な笑みでなく、悲しそうな、弱い1人の人間の諦めの笑顔。


「プライドや誇りなんてものを考えられないくらい私の中でヤバいやつまで成長してるんですよ」


 これも、ひとつの被害者の形だろう。

 少し恐怖の感じ方が違う気がするが、人間を軽い気持ちで殺せる魔王が同じ世界にいるなんてこと、怖いに決まってる。


「分かった、一緒に行こう」

「はぁ、やっと私を連れていく気になりましたか」


 一瞬で弱みをプライドと自信で覆い隠す。


「あんな魔王より、ずっと強いよ、お前は」

「それで、なんとなくぶらぶらしてた感が強いんですが、何してたんですか?」

「ここには調べ物しに来たんだが、それがあっさり見つかりすぎて何すればいいか分からねぇ状況だよ」

「なんですか、その行き当たりばったりは」


 ここら辺が作戦立てまくりのレンとは違うところである。

 というかヒーローなんてものは、悲鳴に向かって突っ走ってるだけなので、基本的に目的などなく、ぶらぶらすることしかない。


「何もすることがないなら、ルーザン獣王国に行きませんか?」

「ルーザンっていうと」

「帝国、グレン魔導国を挟んだ反対側ね。行くとしたら数日間は馬車に乗りっぱなしよ」


 帝国は、アリスの属している国、グレン魔導国といえば、レンの国だ。紅蓮魔導国とは、正しくクレナイ レンの導きによる国だろう。

 そして当たり前だが、普通なら国2つを跨ぐ旅なんて、1ヶ月くらいかかることもある旅である。普通なら


「めんどくさいことはせずに、テレポートでちゃっちゃと終わらせましょう」

「テレポート? 遠いけど大丈夫なの?」

「私は種族的に使えませんが、鍛冶は鍛冶屋ですよ」


 そう言って、すいすいと人混みを避けながら進んで言ってしまう。


「種族的にってなんだ?」

「鬼系統は、近距離での魔法の扱いに長けている代わりに、遠距離での操作が苦手なのよ」


 どこから鬼が出てきたのかわからないが、とりあえず理解したことにして、見失わないうちに、追いかける。


「あれ? もう追いついてきたんですか?」

「走って追いかけたんだから当たり前だろ。何しようとしてたんだ?」

「書類に色々書き込んでたんですよ」


 マイラがピラピラ見せてくるそれは、外出許可証だ。


「言ってみれば寮付きの学校のようなものですからね。外に出るには色々と面倒事があるんですよ」

「私たちに着いてくる気なら先に書いてても良かったのに」

「取りに行く途中であったんですよ」


 そんな話をしながらも書き込んでいき、受付のお姉さんに手渡す。


「さて、これで大丈夫ですね」

「それじゃ、次はテレポートを使える人の所に向かうのか?」

「テレポート使えるんだからあっちから来てくれますよ」


 という言葉の通り、ほんの数秒でヨボヨボのじいさんが現れる。


「もっと若いのかと思ってたわ。こんなおじいちゃんだなんて」

「ジジイだろうが、すげえやつは凄いよ」


 耳が遠くなっているのか、マイラが耳の近くで爺さんに状況を説明して、転移の魔法を発動してもらう。


「そういえばテレポートの魔法ってどういう仕組みなんだ?」

「まず魔法陣の中に転移させたいものをしまって、その魔法陣を飛ばすんですよ。そのため普通なら2アクションなんですが」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ