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第四十五歩 ヒーロー

「───ッ! 暗殺者?」

「そうだな。やってる事としてはそうなる」


 刀を取り出し、少女に向ける。


「帝国の青薔薇、エリザベス姫。帝国を落とすための最後のピースだ 」

「私を拷問して情報を得ようとでもするのかしら」

「それをやって意味があるのか?」

「全くの無駄ね、私は話す気なんてないわ」

「こちらも聞く気なんてない」


 レンが取りに来たのは情報ではなく命。


「何か言い残したいことはあるか?」

「私にだって護衛はいるのよ」

「それならさっき殺したよ」


 アオイが幾人かの男とともに上から滑空してくる。

 その男達はみんな眠らされていて、ぐったりとしている。


「さぁ、死ぬ準備は出来たかな?」


 刀の先を近づけた途端、突然逸れる。


「今のは銃声?」


 ヒーローはいつでも遅れてやってくる。

 物語の主人公が遅れてやってくる。


「いつものカフェにいねぇから、探しちまったぜ。まさかカフェの向かいの路地裏にいるなんてな」


 ライトは銃口を路地裏の方に向けながら歩いてくる。


「さて、なんで刃物を向けてるのか知らねぇが。それは女に向けるもんじゃねぇぜ。って、なんだ」


 路地裏前に辿り着き、既に怪しげな男がレン達の手によって倒されているのを見つける。


「なんだよ。いるなら言えよな。恥かいちまったじゃねぇか」


 照れ隠しにふざけてみる。

 だが、先程ちらっと見た刀はレンが時々使ってるものと同じもの、それを見逃してはいないライトは銃口を下げない。


「もう大丈夫だ、エリザベス。悪い奴らはレン達が倒してくれたんだろ?」


 ほんの少しの希望を言葉にのせる。

 だがエリザベスは、緊張したままで、レンは何も言わない。


「あそこに倒れているのは私の護衛。そこの男女が私を襲ってきた」



「敵よ」



 これ以上ないほど否定され、ライトが希望をかなぐり捨てる。


「エリザベスは、お前の障害になるような事をしてねぇはずだが?」

「確かにしてないな」


 向けているだけだった銃をしっかりと握り、正確に狙いをつける。


「でも彼女は帝国を味方につける最後のピースだ」

「何故彼女なのか聞いてもいいか?」


 エリザベスの正体を知らない、いや、知れなかったライト。

 レンの口から溢れ出たのは

 帝国の希望、帝国の姫、諜報員、そしてエリザベスの本名だった。


「その中に殺さなくてはいけない理由がねぇじゃねぇか」

「スパイだが?」

「諜報系は殺しても祖国に繋がらないようになってるから殺さずに利用するって言ってなかったか?」

「帝国は弱肉強食がモットーでね、トップに立ってるのが汚職も含めて優秀な人材ばかりで仲良くなれそうになかったんだよ」

「エリザベスともか?」

「彼女がこんな優しい子だとは思わなかったんだよ。これならエリザベスと繋がった方が早かったかもしれない」

「今から変えるのは無理なのか?」


 アオイが飽きてロールケーキを食べ始め、穏やかな空間ができているが、レンは非情で残酷な事実を突きつける。


「無理だな。一国の姫を殺す準備なんて途中で止めれるようなものじゃないんだ。次があればそうしてみるよ」


 刀を突きつけてもライトはその場をどかない。


「お前の正義は間違ってる」

「でもライトは遅かった」


 その言葉と同時に、ライトに液体がかかる。それは紅く、暖かい液体で、


「ごふっ…………ゴボッ」


 それはエリザベスの口から溢れ出ていた。


「なっ、エリザベス!」


 エリザベスに外傷はなく、完全に内側からの破壊であることが分かる。

 すなわち、毒だ。


「でも、毒に反応する指輪を持ってたんじゃねぇのか?」

「その指輪の効果ってなんだと思いますか?」


 アオイがエリザベスの右手、そこから指輪を抜き取り、自分の手に移す。


「それをかざして毒だったら光るっていうそんな指輪だ」

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