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第四十二歩 ノルン

『あなたの前にいるのにどうしてそんな結論になるのー?』


 ダンタリオンと同じく響く声で喋るその子はフリフリのドレスを着た少女。ただその胸には大きな懐中時計を下げていた。

 名はノルン。時を司る三姉妹の女神である。


「いや、どこが三姉妹なんだよ。どこをどう見ても一人しかいねぇじゃねぇか」

『鰤と同じで成長とともに名前が変わって三姉妹だなんて勘違いされたのよ』

「可哀想ですね」

『勝手に神の心を推し量るなんて傲慢かしら』


 と、ダンタリオンが言うが、このメンツで1番偉そうなのはダンタリオンである。


「というかダンタリオンと同じく声が響いてるのはオペラ歌手でもやってたからなのか?」

『うーんと、過去から未来までの全ての私がここにいるだけなのー』

「自分自身の中で反響してるのか」

『ついでに、力も反響するからこんなことも出来るのー』


 レンの腕を指でピンッと弾くだけで消し飛ぶ。


『全ての時間軸の力を集めればすごく強くなるのー。1を無限回足せば無限の力を出せるのー』


 無邪気に説明するノルン。しかしそれを聞く側は敵意を剥き出しにする。


「随分と好戦的じゃねぇか」


 ライトが銃口をノルンに向ける。再生したレンやアオイも臨戦態勢に入る。


『はぁ、相変わらず無邪気な顔で敵を作る子なのよ』


 ダンタリオンはさっさと戦場から退いて、優雅に紅茶を楽しむ。


『むー、みんなして楽しそうなのー。ノルンも参加するのー』


 またしてもノルンが無邪気に笑う。

 次になにかされる前にレン達が総攻撃を仕掛けるが


『はい、楽しかったのー』


 数瞬の後にアオイとライトは地面に倒れ、レンは壁まで吹き飛ばされていてめり込んでいる。


『完全に理解出来てないだろうから説明してやるのよ』

「そこのノルンが俺達の何百倍っていう速度で動いて俺たちを倒しただけだよ」

『むー、なんでレンが説明するのかしら』


 壁から這い出してきた、レンにダンタリオンが文句を言う。そんな間でもノルンは笑っている。

 つか、神様系ってみんな何かしら笑ってるね。

 そして倒されたあと、ついでに気絶してたライトとアオイは黒騎士によって魔王城まで運ばれて自室に寝かされる。

 ジェットコースター以上の速度で空を移動するので移動中に起きたとしてもまた寝るだけだろう。


『でもよく追いつけたのー。私を目で追えた人間は珍しいのー』

「英雄の中にはいっぱい居るんじゃないのか?」

『神話の連中はみんなして気を読めば~とか殺意がどうとか~って頭がおかしい考え方をしているのよ。純粋な肉体的スペックで対応できたのはレンが始めてかしら』

「なんだその達人選手権は」

「正確には英雄選手権なのよ」


 ただ、話を聞いている限り、ライトを越すような達人は出てきていない。


「なんで俺は見れて俺よりも動体視力の高いライトが見えなかったんだ?」

『レンとライトの目の種類が違ったのよ。ライトの方は高性能カメラのようなもので、レンの場合は』

「普通のカメラを通常の何倍も早い速度で動かしたってことか」

『そういうことなのよ』


 普通、早い物体からは少ししか受光できない。しかしノルンは時間の流れを変えて自分の中の時間の速度が周りの何倍にもなるようにしているだけである。そのためノルンからは普通よりも濃い密度の光が出て、ライトにとっては残像が見えるだけだったのだろう。普通のものを動かしても残像は残りにくいが眩しいものだと残りやすいのと同じである。


「ただ、俺は普通のビデオカメラを普通ではない速度で動かしていたから奇跡的に反応できたってことか」

『それと、そんなことが出来るならキャロルも見分けたはずなのよ』

「これ意外と大変なんだよな。脳の感覚機能を取り扱う部分を増やしてるんだよ。その代わりに他の計算とかアイデアとかの脳を止める。そのための準備に時間がかかるんだよな」

『なるほどなのよ。今回は女神姉妹のおかげで準備の時間が取れたって事かしら』

「いつか来る勇者のためにな」


 結果としてすぐに来たのでラッキーだったが、まあ、それも実力のうちだろう。


『角の娘に言われてここに来たのー。あなたが専門家だからって言われても訳が分からないのー』


 どうやら時女神はサリアに言われてきたらしいが


「なるほど、俺がやりたいことをよく分かってるらしいな」

『のー?』

「お前の能力は世界の時計、その自分の場所だけを自由に動かせるっていうので大丈夫か?」


 こくんと頷いて肯定の意を示す。


「なら、世界の時計そのものに干渉する方法も知っているんじゃないか?」

『それなら私も知っているのよ!』


 知識の面で頼られなかったダンタリオンが、怒ったように叫ぶ。


『自分の中にも世界時計の針があって、それを狂わせることで繋がっている世界時計も動かせるのよ』

「なら、ノルンも世界時計に干渉できるってことか?」

『世界時計の針は重すぎて動かないのー。だから世界時計から私の時計だけを外してるのー』


 時を司る女神ですら干渉できないほどの世界時計とは一体どれだけのエネルギーがあれば回せるのか。


「なんだ、簡単だな」


 だが、レンはそれを簡単と言ってのける。


「俺がやろうとしている事の数千分の1でいい。なんならアレが近くにいればできる程度のことだな」

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