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第四十一歩 勇者の最後

「なるほどお前が魔王だというのを再確認したよ」

「まぁ、聞きたいことも聞けたし、そろそろ死のうか」


 レンが持つ刀からいくつもの太陽が生まれる。

 しかし、勇者も同じ神話の住人となっている。


「応えよ、聖剣」


 黒き剣が形を変え、龍の顔を形作る。


「さて、遊びはなしで行くぞ」


 レンが太陽たちを時間差で勇者に向ける。

 左右に大きく動き、避けながらレンに近づこうとするがいくつか避けきれない太陽が迫ってくる。


「喰らえ、聖剣」


 勇者が剣を振るたびに龍が口を開き、近づいた太陽を喰らう。


「なんだ、そんなことも出来たのか」


 少し驚くレン。勇者の攻撃をレンが弾き、レンの攻撃を勇者が喰らう。

 予測という名の未来予知を完全に発揮し、避けた場所に攻撃を加えるレン。

 それに対してレンと同じだけのステータスと、今まで積み重ねてきた経験を元に、見てから避ける勇者。

 どちらも化け物で、普通の人間が立ち入れる戦場ではない。

 だが、突然勇者の動きが止まる。


「あ、ああ」


 その目は、教練場の外に向けられ、ずっと向こうの人物を捉える。


「そうか」


 そこには楽しそうに笑う女性がいた、隣に拳銃を腰にぶら下げた軍人を連れて。


「姫様にも心の底から頼れる希望があったんだな……」


 そんな隙をレンが見逃すはずがない。即座に近づいて勇者の胸に刀を突き立て、爆音とともに地面に押し付ける。


「全てを捨ててまで来たここでまだ心残りがあったのか?」

「いや、今なくなったよ。こんなクソみたいな世界でも幸せというものを見つけた」


 憑き物が取れたような勇者の姿を見てレンがすこし黙る。


「それはお前の幸せか?」

「魔王にはいつまでたっても分からない幸せ、かな?」


 最後の最後、死ぬ時になってようやく勇者の顔に笑みが現れる。


「私の意志を受け継いでくれる人を見つけた」

「そいつの特徴を伝えてくれたら伝言くらいはしてやるが」


 勇者がゆっくりと首を横に振る。


「伝言なんかなくても私と同じ気持ちを抱いてくれるはず」


 人間を超えたステータスによって上乗せされた生命力が、刀が刺さった傷から徐々に漏れていく。


「あの方の騎士に魔王が殺されるのを地獄で待ってるよ」


 高ステータス同士の戦いで相手の攻撃をモロに食らうのはそれだけで致命傷となる。

 死を目前にして笑顔を見せた勇者は剣の柄を再度握り直す。


「ただ、魔王に無様に殺されはしない」


 仲間から奪った魔力を、自分が持っていた魔力を、レンの太陽を喰って出来た魔力を、そして残り少ない自分の魂を炉にくべる。

 膨大なエネルギーに指向性だけを与えて解放する。

 莫大な熱線がレンが立っていた場所を高速で駆け抜け、天空まで伸びていく。

 勇者の腕が消滅し、熱戦が天空へ消えていく。

 数十秒ほど残った勇者の生命。


「せめて、やったか、くらいは言わせて欲しかったな」

「言ったら言ったでフラグ立ってたから意味ないと思うけどな」


 勇者の後ろから、無傷で現れるレン。


「瞬間移動か?」

「そう、他にもいくつか緊急回避用に仕込んでるやつがある。準備の勝利だよ」


 化け物め、とだけ言い残して勇者の生命が尽きる。

 レンが緑の髪の少女と同じく、勇者だったものを燃やす。


「さて、力仕事は終わり、書類仕事に戻れるな」


 が、トラブルは1つあると30以上降ってくるらしい。


「あ、終わったんですね」

「楽しかったとは聞けねぇな。殺したんだろ?」

『でも楽しめた見たいなのよ』


 ここまではいつもどうりだ。ダンタリオンが魔王城からここまで来ているのはちょっとおかしいが、まあ、ある程度はいつもどうりだ。

 問題なのは


『勇者かっこよかったのに殺しちゃったのー? それは酷いと思うのー』


 何やら間延びした声が聞こえる。

 その反響音を聞いてレンが、疑問を持つ。


「口調変えたのか?」

『ふざけたのことはあまり言わない方がいいのよ』

『あなたの前にいるのにどうしてそんな結論になるのー?』

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